神戸女児殺害事件:猟奇バラバラ殺人事件か、シンプルな事件か:犯罪と障害と私たち
■神戸女児殺害事件
「神戸女児不明事件容疑者逮捕第一報から考えられること」から引き続き、捜査と報道が続いています。
■容疑者男性:君野康弘容疑者(47)
警察発表によると、この男性は、知的障害者に発行される障害者手帳である「療育手帳」を持っています。一方、彼はアパートで一人暮らしをし、ネットを使いこなし、友人探しや婚活、FX(外国通貨の売買)を行っています。
日頃は、とてもおとなしい人だと近所の人は話しています。一方、酒が入ると、騒音や道で横になるのど、トラブルや奇行があったと言います。
■容疑者男性の知的レベルと責任能力
療育手帳が詐欺的に取得したのでなければ、彼は知的障害者です。ただし、障害の程度は軽いのでしょう。日常生活はできますし、家事もできます。ネットも使えます。ただし、抽象的な概念を使って難しい会話をすること等は難しかったのかもしれません。
インターネットを使うことも、FXも、知らない人から見れば、とても難しいことに感じるかもしれませんが、これらは難し物理学や経済学の知識を必要とするものではなく、使い方さえ理解すればできることでしょう。
また知的レベルが仮に低くても、生活していく中で社会性を身につけますから、日常生活上の会話や「黙秘します」という発言もできるのかもしれません。
彼は善悪の判断ももちろんできるでしょうから、責任能力は問題がないかと思います。取り調べ、公判に十分耐えることができるでしょう(情状酌量はできるでしょうが)。
■バラバラ事件(殺人と遺体切断、遺体遺棄):今考えられる可能性
バラバラ事件の多くは猟奇殺人的なものではなく、遺体処置のために運びやすく遺体を切断するものです。ただ今回は、切断した遺体をすぐ近くにまとめて遺棄していますから、切断自体が目的だった、遺体切断を楽しんだと考えられます。
しかし、障害がどの程度、今回の事件に影響を与えているかがわかりません。
可能性として2つ考えられます。
■殺人・遺体切断・近所への遺棄・診察券とタバコ
■猟奇事件として
彼が、殺人と遺体切断を楽しみたいという歪んだ空想を膨らませた結果、実行に移したとも考えられます。近所への遺棄も、自分の側に置きたかった、あるいは家族の元に帰したかったといった彼独自の考えからかもしれません。
診察券やタバコを遺体とともに袋に入れたのも、自分と少女が近くにいたいという思いからかもしれません。
■シンプルな動機の事件として
一方、障害がかなり影響を与えたシンプルな事件とも想像できます。彼は、被害者少女のことが好きで近づこうとしたが、少女に騒がれてどうしたら良いかわからず殺害してしまったとも考えられます。
彼は遺体の処置に困り、自宅にあったゴミ袋に入れようとしたが、入らない。そこで、袋に入る大きさにするために遺体を切断したというものです。遺体を細かく切断することはかなり労力がかかることですから、普通ならもっと大きな袋や箱を考えるでしょうが。
自宅のすぐそばに遺棄したことも、自動車で遠くに運ぶ力がなく、歩いていける近所で、できるだけ見つかりにくい場所として、人が入らない雑木林を選んだのかもしれません。
■黙秘の理由
現在警察の取調中ですが、受け答えはしっかりしており、雑談には応じるものの、事件の関連することは黙秘を続け、弁護士を要求すると主張しています。
これは、通常ならかなり知的レベルの高い人の行動でしょう。ただ、「黙秘します」も「弁護士を呼んでください」も、深い意味がわからないまま言っている可能性もあるでしょう。
現在の報道では、彼の知的障害の程度がよくわからりません。
黙秘しているのも、知的障害があるために上手く自分の気持ちを話すことができず、黙っているのかもしれません。あるいは、彼の独特の思想、世界観を簡単には人に話したくないと感じて、黙秘を続けているのかもしれません。
■アルコール問題
彼は、酔うと乱暴や奇行が見られたと報道されています。これは、普段のストレスが爆発したとも考えられますし、障害が影響しているとも考えられますし、またストレスや知的障害とは別の、アルコール依存症や異常酩酊(酒乱・複雑酩酊・病的酩酊)といった問題を抱えていたのかもしれません。
■容疑者男性と障害
彼が犯人だとすれば、とてつもなく悪い犯人です。しかしその一方で、彼は友達を求め、恋人や結婚相手を真剣に探して婚活していたのかもしれません。彼は知的障害を持っていましたが、障害は重くなく、一人で生きていかなければなりませんでした。
普段の生活では、「借りてきた猫のように」静かでした。彼は、一生懸命生きていこうとしていたのかもしれません。しかし、彼には社会的力はなく、親友も仕事仲間もできず恋愛もできず、孤立していったことが、今回の事件につながったのかもしれません。
■事件のこれからと私たち
被害者と遺族、関係者らの保護と支援、そして事件の解明が第一です。加害者には、その責任に応じた制裁が必要です。そして同じような事件を防がなければなりません。子どもを犯罪者から守らなければなりません。
様々な障害がからむ事件は起きてしまいます。しかし、そのために障害に対する偏見が強まることは、防犯につながりません。言うまでもなく、多くの知的障害や発達障害、パーソナリティ障害、様々な精神的障害を持つ人々は、犯罪など犯しません。より良い社会を作るためにも、孤立する人々を支援する必要があるのではないでしょうか。
補足:事件が起きた町の子どもにも、ケアが求められています。→