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鑑定留置とは何か:神戸小1女児殺害事件、鑑定留置へ

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

■神戸小1女児殺害事件、鑑定留置へ

神戸小1女児殺害事件、被疑者は鑑定留置へ

神戸市長田区の市立名倉小1年、生田美玲(いくたみれい)さん(6)が殺害された事件で、神戸地検は30日までに、無職君野康弘容疑者(47)=殺人容疑で再逮捕=の精神鑑定を実施する方針を固めた。捜査関係者への取材で分かった。31日にも神戸地裁に鑑定留置を請求する。

出典:国内 政治 社会 人 君野容疑者を鑑定留置へ 神戸・女児殺害事件 神戸新聞NEXT 10月30日

■精神鑑定とは

「鑑定」とは、専門家による判断、評価です。指紋鑑定、筆跡鑑定、DNA鑑定など様々ありますが、その1つが、「精神鑑定」です。精神鑑定は精神状態を調べるためにおこなわれます。

精神鑑定は、長い時間と費用が使えるのであれば、脳や体全体の検査、様々な心理テスト、面談等が、詳しくおこなわれます。

ただ、指紋鑑定やDNA鑑定に比べると、鑑定人による違いがでてしまうなど、精神鑑定の問題があるでしょう。

精神鑑定とは何か

■起訴前鑑定

精神鑑定は、起訴される前におこなわれる鑑定と、起訴された後に、裁判を受けながらおこなわれる鑑定があります。

鑑定留置は、起訴前鑑定の1つです。

刑事訴訟法第 222 条には、「検察官,検察事務官あるいは司法警察員は,被疑者の捜査に必要がある場合には鑑定を嘱託することができる」とあります。

事件報道で、「逮捕された容疑者は、わけの分からないことを言っている」などと報道されることがありますが、この容疑者(被疑者)を、起訴して裁判にかけて良いのかどうを判断するために、専門家に鑑定を依頼します。

司法精神鑑定の90パーセントが、起訴前鑑定です。

東京地方検察庁などには、起訴前鑑定のための部屋、精神診断室があり、委託された専門医が鑑定をおこなっています(『起訴前鑑定』)。

起訴して裁判を開始するかどうかは、もちろん鑑定医が決めるわけではありません。鑑定の結果を参考にしながら、起訴、不起訴を、検察官が決めます。

不起訴と決めた場合に、このまま家族に返せない、放置できないと検察官が判断すれば、都道府県知事に通報します。そうすると、ほとんどの場合治療が開始されます。必要があれば、本人が拒否しても、家族の同意による入院や措置入院(強制入院)になるでしょう。

多くの起訴前鑑定は、一回の診察でおこなわれる「簡易鑑定」です(簡易鑑定の方が、費用も時間もかかりませんから)。

そして1回では判断が難しいときときは、数ヶ月の長期にわたる「本鑑定」がおこなわれます。

■鑑定留置とは

起訴前鑑定の中の本鑑定(起訴前本鑑定)をおこなう方法が、鑑定留置です。

鑑定留置とは、法律上の身柄拘束処分のひとつで、容疑者(被疑者・被告人)が精神障害などで刑事責任能力を問えない可能性がある場合に、心身・身体を調べる(鑑定)ために、期間を定めて病院その他一定の施設で身柄を拘束(留置)することを意味する。

出典:弁護士ドットコム/ 裁判・紛争・手続きの中の 鑑定留置

精神鑑定を引き受ける鑑定医にとっては、拘置所など「他の施設」よりも自分の病院に被疑者がいてくれた方が、日常的に観察、診察ができて何かと便利なようです。

ただし、病院での鑑定留置には問題もあります。病院は、留置場や拘置所のように警備を厳しくできません。今年2014年6月にも、佐賀県で病院に鑑定留置中だった男性が逃げ出して、5時間後に身柄確保される事件が起きています。

簡易鑑定ですませれば鑑定留置の必要もないのですが、簡易鑑定は地域により担当鑑定医により診察方法や鑑定書に違いが大きいという問題があるようです(『精神鑑定とは何か:責任能力を超えて』高岡健 著 )。

佐世保女子高生殺害事件の少女も、医療機関での鑑定留置中です。

多くの関心を集めている重大事件であればこそ、多くの専門家による時間をかけた検討と厳正な裁判がおこなわれることを願っています。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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