化け物来襲行事は子どもがかわいそうな行事か:叱り方と子育ての心理学
不必要な恐怖心は良くありませんが、怖い存在を安心できる存在と共に体験することは、大切です。
■化け物来襲は「子どもかわいそう」? 時代の流れで消える伝統行事
この行事の取りやめは、少子化で子どもの数が減ったことが大きいようですが、子どものところに化け物がやってくる行事は、日本各地にあります。「鬼から電話」といったアプリもあります。
子どもを怖がらせるのは、悪いことなのでしょうか。
■子どもを襲う化け物の意味:子どもを怖がらせる意味
節分の豆まきのときにも、迫力のある鬼の登場で、泣き出す子もいます。「なまはげ」は、とても有名ですね。毎年、怖がって泣きじゃくりながらお母さんにしがみついている子どもの様子が報道されます。
子どもにとって、怖い存在、叱られる存在は、必要だと思います。私の知り合いは、近くの用水路で遊ぶとカッパにさらわれると聞かされていて、本気にしていたそうです。悪いことをしたり、ルールを破ったりすると怖い目にあうと感じることは必要だと思います。
サル山の子サルでも、ルールを破れば、怖いボスザルや大人のサルにとても怒られて、怖い目、痛い目にあいます。そうして、世の中のルールを覚えます。人間の社会も同じでしょう。怖い人の存在は必要です。
ただし、「怖い人」は同時に正しい人でなくてはなりません。ただ暴力を振るってくる怖い人に子どもがおびえるようなことは、もちろn避けなくてはんりません。
「悪い子はいないかー」とやってくる「なまはげ」は、正しくて怖い人の象徴でしょう。鬼は怖い存在ですが、自分自身の力でやっつけることができる存在です。
子どもを怖がらせることは、悪いことでしょうか。たしかに、必要もないのに怖がらせることはありません。でも、子どもたちは怖い話が好きだったりします。お化け、妖怪、怪獣、みんな好きですね。
子どもですから、中には本気で怖がる子もいるのですが、それでもやぱり、化け物は想像の世界やメルヘンの話です。子どもは、本気にする部分はあっても、どこかで理解もでいるできるでしょう。
■正しい化け物の使い方
怖い鬼や、化け物が現れると、子どもは悪いことはやめようと思います。同時に、大好きなお父さんお母さんが絶対に守ってくれます。恐怖と安心は、セットでなければなりません。お化け屋敷も、怪談話も同様です。
怖がって言うことを聞くからといって、どんどん使っても良いわけではありません。よく効く薬ほど副作用が強いと考えて用心し、使い方に気をつけなくてはいけません。
子どもがどの程度怖がっているのか、どんなフォローが必要なのかを理解していないと、鬼や化け物を上手に使えません。「なまはげ」行事は、ずっと続いてきた伝統行事です。多くの親が、自分自身も子どものころ怖い思いを体験しているでしょう。だから、なまはげの怖い体験をしても大丈夫だとわかっています。怖がらせ方の程度、そのとき取るべき親の態度もよくわかっています。
今回ニュースになった福井の行事では、訪問を断った親が悪いわけではないと思います。この行事は、少子化と受け入れ家庭の減少でいったん途絶えて、また復活しています。このことで、かつては十分に伝わっていた様々なことが、伝わらなくなってしまったのでしょう。
■かわいそうな子どもとは
怖い思いをすることが、かわいそうなのではありません。海が怖い子もいますし、ジャングルジムが怖い子もいます。しかられるのが怖い子もいます。たしかに、不必要に恐怖心を与えるのはよくありません。大きくなった後も、「化け物」の力によって悪いことをさせないわけにはいきません。
けれども、発達に応じて、怖い存在、困難な目標、守ってくれる存在などを体験していくことは、大切でしょう。そんな体験に乏しい子こそ、かわいそうな子だと思います。
抱きしめてくれる存在も、怖がらせてくれる存在も、勇気を与えてくれる存在も、それぞれが、子どもにとって大切な存在なのです。
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