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世の中の変え方:宮崎謙介氏不倫報道辞任とNHKドラマ「あさが来た」で学ぶファーストペンギンになる方法

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
(写真:アフロ)

■不倫疑惑の宮崎謙介衆院議員が辞職

〜宮崎氏は妻の金子恵美自民党衆院議員が出産直前の1月30日から31日にかけて、自身の選挙区である京都市内のマンションに30代の女性タレントと宿泊したという。

宮崎氏は金子氏の出産に合わせて育児休業を取得すると表明。国会議員の育休制度化に向け、同僚議員らと活動していただけに、党内からも批判が噴出。

出典:不倫疑惑の宮崎謙介衆院議員が辞職を表明 「軽率な行動を深く反省」「いつか大きくなって帰ってくることができれば…」 産経新聞 2月12日

宮崎氏は、ご自身が国会議員初の育休を取るだけではなく、女性や子どもたちを守るための発言を積極的にしていました。

■先駆者として

宮崎氏は、男性の育休の先駆者になるはずでした。それなのに、社会心理学的に言ってもこのような言動不一致は、男性の育休を進めることへの大きなマイナスになります。

しかし、男性の育児参加や育休にただマイナスが生じるだけでは、あまりにも残念です。裏切られたと感じる人は大勢いるでしょう。それでも、今回男性の育休問題が注目され議論になったこと自体は、意味のあることだったと思います。

人間のものの考え方の癖として「過度な一般化」があります。目立つ事例が発生すると、いつでも、みんながそうだと感じやすくなります。

こんなことがあれば、「だから男は」「議員なんて人たちは」「育休取るような男は」と、否定的な見方をしがちです。

今回の出来事に怒りを感じている人は多いでしょう。その怒りを、個人に向けるだけではなく、社会改善への力としたいと思います。男性の育児参加は、多くの家庭問題解決の鍵になるからです。

■夫婦で共に子育てすることの意味

たとえば、夫や妻や子どものことを考えずに家庭外のことばかりに関心を向け始めると、妻は不安になり子育てに必要以上にのめり込みます。そして子育てだけが自分の生きがいのようになると、過保護過干渉な子育てになってしましまうわけです。

あるいは、手のかかる子どもが生まれた時に、特に男性の役割が大切です。言うことを聞かない、夜泣き、偏食など、手のかかる子どもがいます。母親の中には、一生懸命子育てするのですが、心のバランスを崩してしまうケースもあります。その結果、親子関係が悪くなると、子どもはますます不適応行動をとるようになります。

この時、夫が妻と共に子育てができれば母親も心の安定を取り戻し、夫と妻の協力のもとで子育てができると、手のかかる子どもは以外と素晴らしい大人に成長したりもします。

■同調行動と革新行動

一般に人は多数派に流されます(社会心理学的にいえば「同調行動」)。国会議員でも社員でも、男性みんなが育休などとっていない時には、自分もとらないのが楽です。

しかしごくまれに、人々は時に少数派や個人によって動かされます(社会心理学でいう「革新行動」)。彼らが先駆者としてみんなを引っ張るのです。ただし、「革新」が起きるためには、いくつかの条件が必要です。

1下心がないこと

王様さん反対と言っている人が、隣の国の王様からお金をもらっていることがバレれば、もうみんなはついてきません。

2意見を一貫して主張し続けること。

今日は反対と言い、明日は賛成と言う。これではみんなを説得できないでしょう。

3少数派の中でまとまっていること

ただでさえ少数派なのに、その中で仲間割れや派閥闘争が起きてしまえば、多数派を動かすことはできません。

4言動一致

そして、言動一致していることが求められます。

暴力反対を訴えている人が家族を殴っていたり、男女平等を語る男性が妻に家事一切を押し付けていたりすれば、人々は失望し、その意見を聞く人はいなくなります。

その先駆性が強いほど、先駆者には言動一致の高い倫理性が求められるでしょう。先駆者は後に続く人々を強烈に引っ張りますが、逆に突き落とすこともできるからです。

■「あさが来た」とファーストペンギン

NHKの朝の連続ドラマ「あさが来た」。主人公白岡あさのモデル広岡浅子は、明治を代表する女性実業家で、炭鉱事業、銀行創設、日本女子大設立などに大き足跡を残します。

ドラマの中でも、主人公は様々な古い伝統を打ち破り、新しいことを成し遂げます。そのドラマの中で、新しくできた銀行の社員たちが語っています。

「あの方は裏表がない。無さすぎるぐらいだ」と。

彼女は、下心がなく、一貫して主張し続け、言動一致していたのでしょう。その生き方が、社会を変えていきます。

ファーストペンギンとは、ドラマの中で語られる言葉ですが、現代のビジネスの世界でも言われます。他のペンギンたちが海に飛び込むのを躊躇している時、リスクを取り勇気を持って最初に飛び込むペンギン。それが、ファーストペンギンです。最初の一羽が飛び込めが、次々と他のペンギンも飛び込みます。

誰かが、ファーストペンギンになるのでしょう。私やあなたが、ファーストペンギンになることもあるでしょう。

■あなたがファーストペンギンになるとき

必ずしも社会全体を変えるような大きなことではなくても、自分の所属部署やボランティアグループや家族が変わらなければならないことはあるでしょう。あなたが、ファーストペンギンかもしれません。ただし、リスクはあります。多数派からの同調圧力は、とても強いものです。当然批判もされます。

「けれども、まだ他の人が気づいていないことをあなたが気づいたとしたら、それは神様があなたに示したと考えたいものです。反対されたからといって、すぐに諦めたり、ヤケを起こすことはもったいないことです。あなたには、きちんとみんなにわかってもらう責任があります。」(あなたがみんなを変える方法:家庭で職場で社会で何かに気づいてしまったあなたのために:立って歩くワニ:Yahoo!ニュース個人有料)

誰かが最初に行動しなければ、何も変わりません。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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