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【ソチ2014パラリンピック】「結果にこだわりたい」代表選手団結団式とメディア・視聴者の意識について

矢萩邦彦アルスコンビネーター/知窓学舎塾長/多摩大学大学院客員教授
「乗り越えた困難を糧に、ソチでの活躍を期待しています」と激励した安倍首相

2014年3月7日に開幕するソチパラリンピックの結団式・壮行会が2月5日ホテルニューオータニにて開かれました。今回のソチパラリンピックにはアルペンスキーに12名、クロスカントリースキー/バイアスロンに8名、計20名の選手が日本代表として出場します。会場には安倍晋三首相も激励に訪れ、パラリンピック4大会で15個の金メダルを獲得した水泳の成田真由美選手が語った「自分は失ったものは数えない。得たものだけ数えています」という言葉に感動したというエピソードを伝えました。

◆高まるメディア熱

約1000人の応援メッセージが書かれた大会バナー
約1000人の応援メッセージが書かれた大会バナー

2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催の決定で、にわかにパラリンピックも注目を集めています。ロンドンまでは競技の情報が入ってこない、あるいは結果のみのリザルト記事しか配信されない、と嘆くファンや関係者の声も多く、広めたくても伝える手段の少なさが問題となっていました。

そんな中「スカパーJSAT」は日本で初めて24時間パラリンピック専門チャンネルを開局することを決めています。こういった「観る・知ることが出来るメディア」をいかに有効に活用し、見る側の意識を育てていくかが2020東京への緊急課題でしょう。

◆自分事として観ることが出来るか

「日本だけでなく世界中に、失敗を恐れず、挑戦することのすばらしさを伝えたい」と語った日本パラリンピック委員会委員長の鳥原光憲氏は「私もソチで一生懸命応援しようと思っています」と挨拶を閉めましたが、まさに関係者や取材者が本気で応援するような熱が必要なのだと感じます。前回ロンドンパラリンピックで感じたのは、取材者や関係者が淡々としている印象でした。ある記者は「自分は若手だからオリンピックに行かせてもらえないんで」と残念そうに競技場に通っていました。パラリンピック発祥の地としての自負もあるロンドンは、とてもジェントルに、かつ自然に市民が楽しんで応援をしている雰囲気に満ちていました。

自らの子息が障害を持つという厚生労働大臣政務官の高鳥修一氏もスポーツによって夢や希望が開けていく可能性を訴えましたが、障害を身近に感じている人だけでなく、どれだけ多くの人が自分事として捉えることが出来るかが重要だと感じます。

◆パラリンピアンの心意気

アスリートとして意気込みを語った久保恒造選手と村岡桃佳選手
アスリートとして意気込みを語った久保恒造選手と村岡桃佳選手

ロンドンパラリンピックを取材させて戴き、最も感じたのは日本での「温度差」でした。パラリンピックは障害者スポーツではありますが、アスリートはみなそういうつもりで競技をしているわけではありません。そこにはスポーツとしての過激さや厳しさがありました。その現実を見る側、応援する側が理解することで、パラリンピックはもっとエキサイティングなスポーツの祭典になっていくのではないでしょうか。

会見に応じた久保恒造選手は「ソチでは結果にこだわりたい」と、村岡桃佳選手は「様々なプレッシャーを力に変えていきたい」と力強く語っていました。その心意気が日本に伝わるよう、まずは取材者がパラリンピアンの一人と自覚するくらい気を引き締めて臨むことが必要だと感じます。 (矢萩邦彦/studio AFTERMODE)

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アルスコンビネーター/知窓学舎塾長/多摩大学大学院客員教授

1995年より教育・アート・ジャーナリズムの現場でパラレルキャリア×プレイングマネージャとしてのキャリアを積み、1つの専門分野では得にくい視点と技術の越境統合を探究するアルスコンビネーター。2万人を超える直接指導経験を活かし「受験×探究」をコンセプトにした学習塾『知窓学舎』を運営。主宰する『教養の未来研究所』では企業や学校と連携し、これからの時代を豊かに生きるための「リベラルアーツ」と「日常と非日常の再編集」をテーマに、住まい・学校職場環境・サードプレイス・旅のトータルデザインに取り組んでいる。近著『正解のない教室』(朝日新聞出版)◆ご依頼はこちらまで:yahagi@aftermode.com

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