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【ソチ2014パラリンピック】聖火ランナー佐藤真海選手「灯し続けることで一体感を」五輪の境界を考える

矢萩邦彦アルスコンビネーター/知窓学舎塾長/多摩大学大学院客員教授
「ジャンパーだし、聖火リレー中も何度かジャンプしてしまった」という佐藤真海選手

パラリンピック開会式前日、聖火ランナーを務めた陸上(走り幅跳び)の佐藤真海選手。沿道のオーディエンスから声援を受け、弾ける笑顔でソチの街を走り抜けました。

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◆余計なことは言えない。

沿道に集まった子供達の声援を受け「盛り上がっている中で走ることができて、とにかくすごい楽しかった。一生の思い出になりました」と笑顔で語る佐藤選手は、「改めてその重みを感じました」とも。出場選手に向けたメッセージを求められると「今は集中力と緊張感が最高潮だと思う。同じパラリンピアンとして余計なことは言えない」とアスリートらしい一面を覗かせました。

◆聖火を灯し続けることで一体感を。

聖火については「できればオリンピックのものをそのままパラリンピックまで灯し続ける方が、より一体感が出るのでは?」とオリンピックとパラリンピックの間にある境界線に触れるシーンもありました。

実際、オリンピックとパラリンピックはロゴマークなども違い、看板、垂れ幕、ポスターその他、街中がパラリンピックの装いに着替えます。オリンピックのお下がりでは無く、パラリンピックのために作ることに意義があるという意見もありそうですが、切り替えることのメリットとデメリットをもう一度パラリンピアンの意見も取り入れて考える必要がある気がします。

「パラの魅力を伝えたい」と熱意を語る佐藤選手。サービス精神に報道陣にも笑顔が伝染
「パラの魅力を伝えたい」と熱意を語る佐藤選手。サービス精神に報道陣にも笑顔が伝染

◆平等とは何か、考える契機に。

聖火には努力、決断力、勇気、平等、インスピレーションという意味がある、と佐藤選手は強調します。それらの言葉とても抽象的で、否定しにくいものです。しかし、たとえば「平等」や「平和」を目的としているならば、どんなことでも許容してしまうような空気があるならば、それは問題ではないでしょうか。

「平等」のためにオリンピックと同じものを続けてつかう。

「平等」のためにオリンピックと同じように新たにつくる。

2020年の東京開催に向けて、パラリンピックにもにわかに注目が集まっています。表層や結果だけ追うのではなく、考える契機になるよう、メディアを作る側も見る側も自覚を持つことでパラリンピックを迎える準備ができるのではないでしょうか。(矢萩邦彦/studio AFTERMODE)

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アルスコンビネーター/知窓学舎塾長/多摩大学大学院客員教授

1995年より教育・アート・ジャーナリズムの現場でパラレルキャリア×プレイングマネージャとしてのキャリアを積み、1つの専門分野では得にくい視点と技術の越境統合を探究するアルスコンビネーター。2万人を超える直接指導経験を活かし「受験×探究」をコンセプトにした学習塾『知窓学舎』を運営。主宰する『教養の未来研究所』では企業や学校と連携し、これからの時代を豊かに生きるための「リベラルアーツ」と「日常と非日常の再編集」をテーマに、住まい・学校職場環境・サードプレイス・旅のトータルデザインに取り組んでいる。近著『正解のない教室』(朝日新聞出版)◆ご依頼はこちらまで:yahagi@aftermode.com

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