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「発達障害と片付け」その傾向と対策〜ADHD当事者によるイベント開催

矢萩邦彦アルスコンビネーター/知窓学舎塾長/多摩大学大学院客員教授

2月4日、都内でADHDやアスペルガーなどの発達障害の当事者によるイベントが開かれました。一説によれば40人に1人とも言われる発達障害。当事者が主婦である場合、家事が困難になることも多いと言います。また、時間や金銭の管理も苦手な傾向があり、家族の理解・協力がないと共同生活が困難になることも。「片付け」をテーマとしたその講演とワークショップを取材しました。

◆忘れ物が多い理由は「集中力」

自分がADHDだと分かって楽になったという立入勝義氏
自分がADHDだと分かって楽になったという立入勝義氏

今回講師を務めた35歳でADHDと診断されたソーシャルメディアプロデューサー立入勝義氏は、とにかく忘れ物が多いという悩みがあったと言います。立入氏の分析によれば、「家を出る、と決めたらもうすぐに出たくなってしまう。一呼吸おけないんです」。

1つのことに集中すると他のことを気にすることが出来なくなってしまい、それが忘れ物や、時間を管理できないことに繋がるのだと言います。

「よく発達障害は集中力がないと言われていますが、むしろ逆なんです」。

◆怠けているわけではない、周囲の理解が必要

会場では大人も子供も、当事者も家族も入り交じって意見が交わされた
会場では大人も子供も、当事者も家族も入り交じって意見が交わされた

また、発達障害当事者は気乗りしないと物事に取り組むことが出来ない傾向が強く、やらなければいけないのに、やる気が起きないことで悩む人が多いと言います。「気乗りしないときの対処法は?」という会場からの質問に対して立入氏は自らが実践している次の方法を提案しました。

・できることしかやらない。

・テンションの高い人と話す。

・散歩をしたり音楽を聴く。

基本的には気乗りしない時には無理しないことが大事で、幾つか試して変わらないようなら寝てしまった方が良いと言います。

「でも、何より大事なのは、家族や仲間の理解です。それがないと、ただの怠け者だと思われてしまうんです」。

◆好きなことと組み合わせて片付ける

付箋に書き出されたアイデアを仕分けして結合していく
付箋に書き出されたアイデアを仕分けして結合していく

会場であるa.schoolの岩田拓真氏によるワークショップでは、「苦手なことと好きなことを組み合わせる」ことで克服するアイデアを出し合いました。やはり「捨てる」「掃除」「洗濯」「アイロン」「整理」などの苦手項目が多く上がっていました。それらを「幸せと感じる時間」と組み合わせることでデザインされたのが以下のアイデアです。

・「風呂好き」で「洗い物」が苦手なので「風呂で洗い物をする」

・「買い物好き」で「捨てるのが苦手」なので「捨てなければ買えないことにする」

・「パーティー好き」で「掃除が苦手」なので「パーティーの為に掃除、また参加者と一緒に後片付けする」

個性を活かすこと、それぞれの凸凹に合わせて生活をカスタマイズすることの大事さを実感できる楽しい雰囲気のイベントでした。出来ないことをネガティブ考えることのないよう、家族はもちろん、より多くの人に発達障害に対する理解が必要ではないでしょうか。(矢萩邦彦/studio AFTERMODE)

■関連リンク

立入勝義「意力」ブログ

主催団体

MamaBA(ママビーエー)

はじまりの学校 a.school

家事代行マッチングサービス タスカジ

アルスコンビネーター/知窓学舎塾長/多摩大学大学院客員教授

1995年より教育・アート・ジャーナリズムの現場でパラレルキャリア×プレイングマネージャとしてのキャリアを積み、1つの専門分野では得にくい視点と技術の越境統合を探究するアルスコンビネーター。2万人を超える直接指導経験を活かし「受験×探究」をコンセプトにした学習塾『知窓学舎』を運営。主宰する『教養の未来研究所』では企業や学校と連携し、これからの時代を豊かに生きるための「リベラルアーツ」と「日常と非日常の再編集」をテーマに、住まい・学校職場環境・サードプレイス・旅のトータルデザインに取り組んでいる。近著『正解のない教室』(朝日新聞出版)◆ご依頼はこちらまで:yahagi@aftermode.com

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