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2020パラリンピックに向けて〜「ゴールボール」の魅力と課題

矢萩邦彦アルスコンビネーター/知窓学舎塾長/多摩大学大学院客員教授

「ゴールボール」という競技をご存じでしょうか。聞き慣れない方も多いと思いますが、ロンドンパラリンピックでは女子チームが金メダルを取るなど活躍していますが、まだまだ知名度が低い状態です。筑波大学附属視覚特別支援学校(盲学校)にて毎週月・水・金曜日に行われ、パラリンピアンや日本代表選手も参加するゴールボールの練習を取材しました。

◆ゴールボールとはどんな競技なのか?

バウンドと鈴の音でボールの場所を把握し、体を倒してゴールを防ぐ
バウンドと鈴の音でボールの場所を把握し、体を倒してゴールを防ぐ

ゴールボールは、3人対3人のチーム戦で行われます。ガーゼの眼帯をした上にアイシェード(目隠し用のゴーグル)をつけて、相手のゴールにバスケットボール大のボールをシュートします。中には4個の鈴入っていて、選手達はその音を聞いてボールの位置を把握します。ラインの下には紐が入っていて、触って自分の位置を確認出来るようになっています。

視覚障害と言っても、色々な種類があります。視力は勿論ですが、いつ見えなくなったか、またどの部分が見えないかなど、個人差が大きい障害の1つです。ですから、全員が同じ条件でプレー出来るようにアイシェードを装着するわけです。

ロンドンパラリンピックを取材した際、女子チームの防御の要だった浦田理恵選手は「音の世界の中で研ぎ澄まされて、どんな人とでも熱くなれる素晴らしい競技です」と話してくれました。

◆自分の意志で動ける競技

ボールは見た目よりも固く、シュートは速く重い
ボールは見た目よりも固く、シュートは速く重い

「常に音を出せ!」ゴールボールならではの指示が飛ぶ体育館。音を頼る競技のため、声を上げて応援出来ないのもゴールボールの特徴です。日本ゴールボール協会運営委員を務める寺西真人コーチは、フレンドリーな雰囲気を漂わせつつも、時に厳しく、的確に指導をしていきます。2020年に向けて、「チャンスが来た時に実力を発揮できるように日々準備をし続ける事が大切だ」と意気込みます。

荒れていた中高生時代に、寺西コーチの勧めでゴールボールをはじめたという信沢用秀選手は、「はじめて自分が夢中になれるものを見つけたんです」と語る。視覚障害者もプレー出来る競技は種類があるが、基本的に晴眼者(視覚障害のない人)の指示を受けて動くものがほとんど。ゴールボールだけは、自分の聴覚と触覚を頼りに、自分の意志で動くことが出来るのが魅力だと言います。

◆2020年に向けて

ロンドンでは日本選手団最年少で出場を果たした若杉遥選手
ロンドンでは日本選手団最年少で出場を果たした若杉遥選手

中国は選手の絶対数が多く、中東はその情勢上障害を持った選手が多い。それらの国々が若い選手を次々に輩出してくる中、日本選手はどうしても平均年齢が挙がってしまったり、少ない選手に負担がかかる傾向にあります。

そのため、まずはゴールボールという競技を多くの人に知って貰い、選手を増やしていきたいと関係者は口をそろえます。アイシェードを装着すれば、晴眼者でもプレー出来るのがゴールボールの最大の特徴の1つです。「見学だけでなく、ぜひ体験して欲しい」と寺西コーチ。シンプルながら奥の深い戦略性があるゴールボール、今後の展開に期待が集まります。(矢萩邦彦/studio AFTERMODE)

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→音の世界の中で研ぎ澄まされる ゴールボール日本チームのパラリンピック

アルスコンビネーター/知窓学舎塾長/多摩大学大学院客員教授

1995年より教育・アート・ジャーナリズムの現場でパラレルキャリア×プレイングマネージャとしてのキャリアを積み、1つの専門分野では得にくい視点と技術の越境統合を探究するアルスコンビネーター。2万人を超える直接指導経験を活かし「受験×探究」をコンセプトにした学習塾『知窓学舎』を運営。主宰する『教養の未来研究所』では企業や学校と連携し、これからの時代を豊かに生きるための「リベラルアーツ」と「日常と非日常の再編集」をテーマに、住まい・学校職場環境・サードプレイス・旅のトータルデザインに取り組んでいる。近著『正解のない教室』(朝日新聞出版)◆ご依頼はこちらまで:yahagi@aftermode.com

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