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入学試験や資格試験における参考書選びのポイント

矢萩邦彦アルスコンビネーター/知窓学舎塾長/多摩大学大学院客員教授
(写真:アフロ)

教育業界で活動をしていると様々な相談や質問を受けますが、その中で最も多いものの1つが参考書や問題集選びについてです。入学試験だけでなく、資格試験においてもオフィシャルの教材以外の副教材について、どれを選んで良いのか分からない、という悩みも良く聞かれます。そこで今回は、参考書や問題集について、選ぶポイントを挙げてみたいと思います。

◆教科書が基本

これはどんな勉強においても言えることですが、指定されている教科書があるのならば、それが基本です。教科書を読んだこともないのに参考書選びに走るような受験生は割と多いものです。講師も一足飛びに、お勧めの参考書を提示するシーンを見かけますが、「教科書の分からない部分」や「さらに詳しく掘り下げたい部分」を補助するのが参考書の役割です。決して教科書の代わりに読むものではありません。教科書の理解度は生徒によって違いますから、当然、必要な参考書も生徒によって違うはずです。

そして何より、中学受験と一部の大学入試を除くほとんどの試験は教科書をベースに作られています。その基本をしっかりと押さえた講師に習うことも重要なポイントです。また、資格試験においては特に良く出るポイントだけを抽出した、効率よく合格するためのテキストがありますが、偏ったポイントだけ学んで資格を取得したとしても、実践で困ることが想定されます。専門的なものほど基礎からしっかりやることが結果として近道な場合が多いと考えられます。

◆重要なのは相性

人それぞれ価値観や思考パターンが違うように、参考書の解説にも様々な価値観と説明のパターンがあります。情報量やページのデザインや色使いなどにも相性がありますので、実物を手にとって確認することをお勧めします。

個々に知識や習熟度が違いますから、誰にでも通用する解説というのはとても難しく、その理解や習熟度を察することや、教科書とのギャップを埋めることは講師の存在意義の一つです。その試験に詳しく、自分のことをある程度分かっている講師に相談するのも方法の1つです。ただし、気をつけて欲しいのは、相談する講師が専門性が高いだけでなく、多くの参考書を知っている必要があります。自分が使って良かったから、という理由で少ない選択肢から紹介する講師も多いので、よっぽど価値観が近く信頼できる講師でない限り注意が必要です。

◆簡単すぎても難しすぎてもダメ

目的にもよりますが、成績アップを目指しているのであれば、解説の相性だけでなく、問題の質が適切かどうかが重要です。ぱっと見、解けそうな問題と解けなそうな問題が同じくらいのバランス、あるいは解けそうな問題がちょっと多いくらいが適切なレベル感だと思います。ゲームなどもそうですが、参考書や問題集を最後までやり通すには、適度な手応えが大事です。簡単過ぎたり、また出来ない問題があまりに多いと、モチベーションの維持が難しくなってしまいます。

試験が苦手という人の特徴の1つに、「たくさんの副教材に手を出し、1つもやり切らない」というものがあります。やりはじめて、どうしても相性が悪い、と感じない限り、その教材を腰を据えて最後まで通して使用し、その中で更に不足が明確化したら別の教材を探す、というルールを作ると良いと思います。

というわけで、今回は参考書や問題集などの副教材の選び方について考えてみました。よい参考書を使えば成績が伸びるというわけではありませんが、適切な参考書との出逢いで学習効果が大きく変わることもあります。まずは色々な参考書を手に取って比べつつ、自分の状態や好みを把握する時間を取ることをお勧めします。(矢萩邦彦/studio AFTERMODE・知窓学舎)

アルスコンビネーター/知窓学舎塾長/多摩大学大学院客員教授

1995年より教育・アート・ジャーナリズムの現場でパラレルキャリア×プレイングマネージャとしてのキャリアを積み、1つの専門分野では得にくい視点と技術の越境統合を探究するアルスコンビネーター。2万人を超える直接指導経験を活かし「受験×探究」をコンセプトにした学習塾『知窓学舎』を運営。主宰する『教養の未来研究所』では企業や学校と連携し、これからの時代を豊かに生きるための「リベラルアーツ」と「日常と非日常の再編集」をテーマに、住まい・学校職場環境・サードプレイス・旅のトータルデザインに取り組んでいる。近著『正解のない教室』(朝日新聞出版)◆ご依頼はこちらまで:yahagi@aftermode.com

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