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革命・8切り・都落ち・スートしばりにスペ3返し…統一ルールで日本のトランプゲーム『大富豪』を世界へ!

矢萩邦彦アルスコンビネーター/知窓学舎塾長/多摩大学大学院客員教授
2015年2月に行われた第三回天下一大富豪大会には、九州からの参戦者も。

世代を問わず人気のトランプゲーム『大富豪』。実は有名なトランプゲームでは珍しい日本生まれのゲームです。しかし、ローカルルールが多いため、勝敗バランスの悪さや、出身の違う者同士がプレイする際に折り合いがつけにくい、などの問題がありました。そこで、ルールの世界統一を目指し、「日本発のトランプゲームである大富豪(大貧民)を世界に普及させること」をスローガンとして創設されたのが日本大富豪連盟です。「バリアフリー」を哲学とするという彼らの活動を取材しました。

●公式ルール「革命・8切り・都落ち・スートしばり・スペ3返し」

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「大富豪は老若男女が楽しめるバリアフリーなゲームです。でもルールが統一されていないと負けた時に釈然としないんですね。統一ルールを作るには、スキルとラックのバランスが必要なので、その辺に注意して競技用公式ルールを設定しました」という代表の立入勝義さん。

日本大富豪連盟が推奨する五大公式ルール

【革命】…同数字4枚以上出すと、カードの強さが逆転

【8切り】…8を出すとターンを終了させられる。複数枚可

【都落ち】…大富豪が一番に上がれないと大貧民に転落

【スートしばり】…同じ記号が連続するとターン終了までその記号しか出せない

【スペ3返し】…ジョーカー一枚に対してスペードの3が勝利して、場を流せる

日本大富豪連盟公式ルール

ローカルルールの中でも人気のある「階段革命」や「11バック」「ジョーカー返し」などは採用されなかった。ゲーム性を保ちつつ、だれもが楽しめる分かりやすさを追求した結果、シンプルでバランスの良いルールに仕上がっていました。少子高齢化や核家族化が進む中で、共通言語としてのゲームの存在に期待が集まります。

●小学生や女子高生も参加した第三回天下一大富豪大会

学校では毎日やっているという高校生。「革命と都落ちがドラマ性があって面白いです」
学校では毎日やっているという高校生。「革命と都落ちがドラマ性があって面白いです」

2011年に発起、2012年2月に第一回天下一大富豪大会、7月に第二回大会、2015年2月に第三回大会、と着実に歩みを進めてきた日本大富豪連盟。大会参加者の幅も広がってきました。

「よく考えることが本当に楽しい。ぜひみんなにやって欲しい」という森下祐介さん
「よく考えることが本当に楽しい。ぜひみんなにやって欲しい」という森下祐介さん

「自分が持っているカードをどう出していくか、良く考えることが奥が深くて楽しい」という、決勝戦で惜しくも敗退した森下祐介さんはなんと小学生。中学受験に合格したら出場を許すという両親との約束を果たして、和歌山からの参加。お母さんは、「相手がどう考えているのか、察する力がついたと感じます。カードを覚えるので暗記力も上がっていると思う」。と学習への影響も語ってくれました。

「確率と予測、ギリギリの読みの中で、強いものは刹那的で美しいです」と大富豪の魅力を語ってくれたのは、当日、エキシビジョンで参加していた大富豪ゲームのAI開発者、大渡勝己さん。「まだ相手の意図を読むところまでは行かない。パイアス的なものとか、人間の癖のようなものを学習してAIに実装したい」と意欲的です。

大会当日の様子は、YouTubeにて動画配信されています。

第三回天下一大富豪大会

●ゲーム本来の魅力を失わず、社会的に意義のある仕組みを

大会以外にもトランプゲームを通じた社交の場として「社交部」という飲み会的なイベントを開催しており、緩めにプレイしたい人、ルールを覚えたい人、女性などを中心に人気を集めています。関西支部、西日本支部に続き、中国支部も設立され、勢いに乗る日本大富豪連盟。年初には次回のイベントについて告知が予告されています。

ゲームを通じて、コミュニケーション能力や論理的思考力を養うことが出来るのではないか、という議論は、教育の現場や社員研修などでしばしば話題になります。しかし、目的のためにやることは、「それ自体が面白い」というゲーム本来の魅力や動機と相反してしまいす。本当面白いと思った人が、それを伝えて人が集まり、結果として出会いや社交の場になったり、論理的に考えたり、相手の気持ちを察したりする機会が増えていくことが望まれます。(矢萩邦彦/studio AFTERMODE・教養の未来研究所)

■関連リンク

日本大富豪連盟ホームページ

アルスコンビネーター/知窓学舎塾長/多摩大学大学院客員教授

1995年より教育・アート・ジャーナリズムの現場でパラレルキャリア×プレイングマネージャとしてのキャリアを積み、1つの専門分野では得にくい視点と技術の越境統合を探究するアルスコンビネーター。2万人を超える直接指導経験を活かし「受験×探究」をコンセプトにした学習塾『知窓学舎』を運営。主宰する『教養の未来研究所』では企業や学校と連携し、これからの時代を豊かに生きるための「リベラルアーツ」と「日常と非日常の再編集」をテーマに、住まい・学校職場環境・サードプレイス・旅のトータルデザインに取り組んでいる。近著『正解のない教室』(朝日新聞出版)◆ご依頼はこちらまで:yahagi@aftermode.com

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