失業率4.2%、3カ月ぶりに改善は本当なのか? 実態と違うカラクリとは?

■日本の失業率4.2%は、EUに比べると半分以下

3月1日、二つの失業率が発表された。

一つは、欧州連合(EU)で、もう一つは日本。この二つの失業率に、あまりの開きがあるのに驚いた人も多いと思う。まず、EUのほうを見ると、ユーロ圏17カ国の1月の失業率(季節調整済み)は11.9%で、前月より0.1ポイント悪化し、1995年の統計開始以来の最悪の水準となっている。

ところが、わが国の総務省が発表した1月の完全失業率(季節調整済み)は、前月比で0.1 ポイント低下したものの4.2%で、3カ月ぶりに改善している。また、厚生労働省が同日発表した1月の有効求人倍率(季節調整値)も0.02 ポイント上昇の0.85倍で、3カ月連続で改善なのである。

欧州では債務危機が続いているので、失業率が10%を超えるのは当然。しかし、デフレ不況が続く日本がその半分にも達しないのは、なにか変だ。街に出て感じる「肌感覚」、取材をして感じる「現場感覚」とは、まったくかけ離れている。

アベノミクスで好景気が演出されているといっても、昨年の電機産業の崩壊により、現在、数万人単位のリストラが行われている。電機産業に限らず、多くの業界で、リーマンショック以後最大規模のリストラが行われ、大学生の就職内定率も上がっていない。

それなのに、失業率が5%もいかないなんてことがありえるだろうか?

■ハローワークに行かない人は失業者ではない

この日本の失業率は、諸外国と比べると驚くほど低い。2012年の平均は4.3%、2011年は4.6%である。これに対してアメリカは、昨年10月までは9%台、いまは7%台にまで低下してきたが、常に日本の倍近い。また、欧州諸国となると、金融危機の影響もあって、フランスが10%前後、イタリアが11%前後と、こちらは完全に日本の倍だ。

また、若者の失業率は、日本では全体平均の倍で約8%台だが、欧州諸国は20%台がザラで、ギリシャ、スペインなどは50%とも言われている。

じつは、日本の失業率の異常な低さにはカラクリがある。まず、日本の失業率の定義を見ると、次のようになっている。

失業率=完全失業者数÷(就業者数+完全失業者数)×100

また、「完全失業者」とは、次の3つの条件を満たす者とされている。

1、仕事がなくて調査週間中に少しも仕事をしなかった(就業者ではない)

2、仕事があればすぐ就くことができる(選り好みは許されない)

3、調査期間中に、仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた(過去の求職活動の結果を待っている場合を含む)

ということは、日本における完全失業者とは働く能力と意志があり、しかも本人がハローワークに通うなど実際に求職活動をしているにもかかわらず、就業の機会が社会的に与えられていない失業者のことを指す。つまり、仕事探しをあきらめてハローワークに行かない人は失業者ではないのである。

■「就職できない」とあきらめる人は失業者ではない

じつは私は3年前、勤めていた出版社を希望退職した後、ハローワークに通った。そこで、知ったのが、以下の項目に該当する人間は厚生労働省の定義する失業者とはならないということだ。

・1週間のうち、1日でも働いて賃金を得た者

・家事手伝いを行っている者

・求職意欲を失った、仕事に就くのを諦めた者 (ニートなど)

・雇用調整助成金で企業内失業となっている者

・不労所得が十分にあって働く意志・必要がない者

「失われた20年」と言われるように、日本の不況は長期化している。こうなると、求人数も少なくなり「どうせ就職できない」とあきらめる人が増える。そのため、失業者数が減り、統計上の失業率を引き下げているのだ。

たとえば、2000年ごろから社会問題化した「パラサイトシングル」や「ニート」などは、いったん親元で引きこもり暮らしをしてしまうと、もはや失業者にはカウントされない。現在、大学を卒業しても6割の学生しか就職しない時代とされているので、若者失業率は8%台どころか30%台になってもおかしくないと思うが、こうしたカラクリにより低く抑えられているの

である。

ちなみに、大学生の就職率は1991年の81.3%をピークに低下を続け、2003年には55.1%まで落ち込んだ。その後、やや回復したものの、現在まで7割を超えたことはない。

■各国によって違う「失業者」の定義

では、主要国の失業率の定義はどのようになっているのだろうか?

次が、主な国の失業率の定義だが、日本より緩い国がほとんどだ。

アメリカ:(1)調査期間中にまったく就業せず、(2)その週に就業が可能で、(3)過去4週間以内に求職活動を行った者。

イギリス:(1)調査日において仕事がなく、(2)かつ就業可能なもので、(3)失業給付事務所に手当を申請している者。

ドイツ:(1)仕事がなくて(2)調査日に雇用事務所に求職登録している者で、(3)有給雇用を希望し、(4)就業可能な者

フランス:(1)仕事がない者のうち(2)就業が可能で、(3)かつ常用雇用を希望する者で、(4)国家雇用庁に求職登録した者

カナダ:(1)調査期間中にまったく就業せず、(2)その週に就業が可能で、(3)過去4週間以内に求職活動を行った者(ただし4週間以内の就業が内定している待機者を含む)

イギリスがもっとも日本に近くて定義が緩いが、カナダにいたっては、「内定が決まっている者」まで含めるのだから、そのまま同じ失業率だからと比較して論じるのは、大きな間違いだ。

■アメリカ式にカウントしなおせば10%を超える

さらに、日本の失業統計には、もう一つのカラクリが隠されている。それは、失業率をカウントする際に使う「労働人口(就業者数)」を、どう定義するかという問題。これは、計算式の分母になるので、大きければ大きいほど失業率は低くなる。

日本は、この分母である「労働人口」に公務員を入れている。就業者数のカウントに公務員を入れると、分母が大きくなる。この公務員のなかには自衛隊員も含まれる。そうすると、失業率は必然的に下がるのだ。

以下は、各国によって違う「労働人口」の定義だ。

日本:就業者+失業者

アメリカ:就業者+失業者(軍人を除く)*就業時間が15時間未満の無給の家族従業者を除

イギリス:雇用者+自営業主+軍人+職業訓練を受ける者+失業者

ドイツ:就業者+失業者(軍人を除く)

フランス:就業者+推計失業者

カナダ:就業者+失業者 (軍人を除く)

このように、フツーは、公務員(とくに軍人)は労働人口に加えない。

では、なぜ、労働人口に公務員を入れてはいけないのか?

それは、公務員には失業保険がないことでわかるように、国家や自治体には倒産がないからだ。つまり、公務員は失業リスクがないとされているので、これを就業者数のカウントしてしまうと、一般の実態とはかけ離れてしまうのだ。

■国民が幸せに働ける仕事がどれだけあるか

アメリカでは政権が交代すると、公務員も大幅に入れ替わり、しばし失業する。しかし、日本ではこのようなことは起こらないので、同じ失業率でも社会の違いを考慮して考えなければならない。また、アメリカでは一時帰休者や求職中の学生も失業者としてカウントしている。

したがって、日本の失業率をアメリカ式にカウントしなおせば、まず間違いなく10%を超えるだろう。また、欧州式にやっても、同じ結果が出るものと思う。

ただし、失業率が高い、低いということだけで、各国の経済を比べても意味がない。政治家は100%の完全雇用を目指すが、完全雇用が達成されようと、その仕事が劣悪なものでは意味がない。個人主義が発達した欧米では、劣悪な労働環境で働こうと思う国民は少ない。その結果、欧州の失業率が高くなっている面もある。

しかし、日本人は昔から「仕事は美徳」「働けるだけでありがたいという意識が強いので、どのようにカウントしようと失業率は低いとも言われる。つまり、要はその国に国民が幸せに働ける仕事がどれだけあるかがポイントだ。

そういう面から見ると、失業率のカラクリと相まって、現在の日本からは「仕事」がどんどん失われているのではなかろうか?