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滝川クリステルさんの「おもてなし」プレゼンの中身はカラッポ

山田順作家、ジャーナリスト

■流暢なフランス語、ご本人の魅力で大成功

今回の東京五輪招致成功の決め手は、滝川クリステルさんの最終プレゼンにあったという見方が強い。また、評判もすごくいい。しかし、本当にそうだろうか?

私は全然違った見方をしている。

それは、プレゼンそのものではなく、その中身が、まったく無味乾燥、もっと言えば事実に反しているからだ。

滝川さんのプレゼンそのものは、聴衆の「情感」に訴える素晴らしいものだった。流暢なフランス語を駆使し、身ぶり手ぶりで日本の良さを表現し、IOC委員の心を動かしたのは確かだ。髪型もイヤリングも素晴らしかったし、青いスカーフも似合っていた。ご本人の魅力、そして、演出は最高だった。

しかし、「おもてなしの心」に続く、そのスピーチの中身は、日本人自身がつくりあげた、一種の幻想だ。

■「現金を落としても必ず戻ってくる」は本当か?

「東京はみなさまをユニークにお迎えします。日本語で『おもてなし』と表現します。それは訪れる人を慈しみ、見返りを求めない深い意味があります」

と、そのスピーチは始まった。そして、次のようなことが語られた。

「もしみなさまが東京で何かを失くしたならば、ほぼ確実にそれは戻ってきます。たとえ現金でも。実際に昨年、現金3000万ドル以上が、落し物として、東京の警察署に届けられました」

「東京は世界で最も安全な都市です。街中の清潔さ そして、タクシーの運転手の親切さにおいてもです」

これは、本当だろうか?

私の周囲にいる東京在住外国人たちは、「違う」と言う。

■おもてなしの心は従業員の犠牲のうえに成り立っている

「日本人はよくおもてなしと言い、日本のサービスは最高と自慢する。しかし、東京にはチップの習慣がない。ということは、そのサービスの分は価格に含まれていることになる。それをおもてなしでごまかしている。日本のサービス業に従事している人たちは、その分、ソンをしているのだ。おもてなしの心を強いられて、安い料金で働かされている人たちはかわいそうだ。おもてなしは、そういう人たちの犠牲で成り立っている」(米紙の記者)

「世界で最も安全。それはどの都市でも場所による。東京ぜんぶが安全ではない。いちばん安全なのはアジアではシンガポールだろう。清潔さにおいてもシンガポールのほうが上だ」(外資金融マネージャー)

「私は現金10万円入りの財布を落とした。それですぐ届け出に行くと、財布はすでに届けられていた。しかし、現金は抜かれていて、カードやIDだけ残っていた」(外資金融マネージャー)

「それは、IDやカードが英語で、使えないし、使ったら危ないと思ったからでしょう。中国だと、全部抜かれて、財布は捨てられてしまいます。東京はIDやカードだけでも戻って来る分ましですよ」(中国人留学生)

「たしかに東京のタクシー運転手はみな親切で、ぼったくりがないから、安心して乗れる。でも、問題がひとつある。それは、運転手がみな老人だということだ。英語があまり通じないのは仕方ないが、重い荷物となると、運んでもらえない。チップがないから仕方ないけど、それでも運ぼうとしてくれるので、気の毒になる」(外資金融マネージャー)

「私も運転手が老人だと不安になる。あまりにも年の人だと、事故にあったらどうしようと思う。日本は高齢化が進んでいる。すでに高齢化率は20%を超えている。7年後が不安だ」(米紙記者)

■世界一高齢化が進む都市で開かれる初めてのオリンピック

というわけで、こうした見方に対して、みなさん、どう思まわれますか?

ちなみに、2020年、日本の総人口は1億2411万人に減り、そのうちの高齢者人口は3456万人、高齢化率は30%に迫ると推定されている。老人ばかりの街に、世界から若いアスリートと観客が大挙してやって来る。2020年東京オリンピックは、世界一高齢化が進む都市で開かれる初めてのオリンピックになる。

作家、ジャーナリスト

1952年横浜生まれ。1976年光文社入社。2002年『光文社 ペーパーバックス』を創刊し編集長。2010年からフリーランス。作家、ジャーナリストとして、主に国際政治・経済で、取材・執筆活動をしながら、出版プロデュースも手掛ける。主な著書は『出版大崩壊』『資産フライト』(ともに文春新書)『中国の夢は100年たっても実現しない』(PHP)『日本が2度勝っていた大東亜・太平洋戦争』(ヒカルランド)『日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか』(ソフトバンク新書)『地方創生の罠』(青春新書)『永久属国論』(さくら舎)『コロナ敗戦後の世界』(MdN新書)。最新刊は『地球温暖化敗戦』(ベストブック )。

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