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今年の年末年始はアマゾンでエロ見放題! 「アマゾンが動画配信を開始」というニュースに欠けていること

山田順作家、ジャーナリスト

11月26日、アマゾンジャパンは、動画配信サービス「Amazonインスタント・ビデオ」ストアを開設した。このニュースを、各大手メディアはいっせいに伝えたが、どこにも書いていないことがある。それは、この動画サービスの主力商品が、アダルトビデオだということだ。

たとえば、日経新聞は、同日、こんな記事を載せた。

《アマゾンジャパン(東京・目黒)は26日、有料の映像配信を始めた。映画やテレビドラマ、アニメなど2万6千本以上の作品をそろえた。同社のタブレット(多機能携帯端末)やパソコンで視聴できる。料金はレンタルで1本100円、作品を取り込める買い切りで同1千円から。日本では米グーグルの日本法人(東京・港)が10月末から国内外のテレビ番組の有料配信を開始。米アップルの日本法人(同)も自社サイトで映像のほか電子書籍や音楽、ゲームも配信済みで、コンテンツ配信を巡って米大手ネットサービス3社の視聴者の囲い込みが激しくなっている。》

たしかにそのとおりだが、アマゾンがアップルやグーグルとまったく違うのは、エロコンテンツをほぼ丸呑みで許容しているばかりか、それを積極的に売ろうとしていることだ。アップルは電子書籍にしても動画にしてもアダルト作品は即リフューズとなるし、「Google Play」にもアダルト作品はない。

もちろん、動画配信専門サイト大手の「Hulu」にもアダルト作品はない。2013年11月現在、「Hulu」には「アダルト」のカテゴリーはない。

ところが、「Amazonインスタント・ビデオ」では、カテゴリー最下部に表示される「アダルト」欄をクリックすると、なんと1万タイトル(9748本)近くのアダルト作品が表示される。これは「外国映画」(2544件)「日本映画」(940件)「アニメ」(651)を圧倒的にしのぐ数だ。

「アマゾンから動画配信の話があったのは、昨年12月ごろでしたか? まさかと思いましたが、うちのアダルト作品の配信許諾がほしいと言うんです。それから、約1年、今回、並んだ作品を見てほとんど感動しています」

というのは、あるアダルトビデオメーカーの担当者だ。

日本では、アダルト作品のネット配信といえば「DMM.com」だが、ここでは、新作をはじめとする、素人、アニメ、成人映画のアダルト作品を豊富に取り揃えている。そのタイトル数は、現在、約15万本に達している。それでも、アマゾンはスタート時に約1万タイトルを揃えたのだから、今後、この分野でも市場を独占してしまう可能性がある。

アマゾンは以前から、通販では成人向けDVDやアダルトグッズなども積極的に取り扱ってきた。とくに、リアル店舗では買いづらいアダルトグッズは、アマゾンのドル箱である。たとえば、こんな広告を出している専門サイトもある。

《お店で買うのは恥ずかしい商品も、アマゾンのネット通販なら女性でも安心してアダルトグッズが購入できます。価格も激安なのに、わずか1500円の購入だけで送料も無料です》

アダルトグッズの王様、ダッチワイフなどは、「ヘルス&ビューティー」→「成人向け・アダルトグッズ」→「ドール」で381個も出てくる。

また、電子書籍の世界でも、アマゾンはエロに関してほとんどフリーパスだ。

日本の電子書籍市場を引っ張ってきたのは、ボーイズラブやティーンズラブ作品だが、アップルではリジェクトされても「Kindle」はフリー。だから愛読者は、スマホの専用「Kindleアプリ」でコンテンツを楽しんでいる。たとえば、ボーイズラブは、「Kindleストア」→「コミック」→「ボーイズラブコミックス」で山ほど出てくる。「Kindleストア」では「有料アダルトTOP100タイトル」という公式ランキングも用意されている。

アマゾンのCEOジェフ・ベゾフはプリンストンでエンジニアリング専攻した超インテリだ。妻のマッケンジーも名門ホッチキススクールからプリンストンに進んだインテリだ。インテリほど、エロに対する許容度は高い。というか、そんなことにはこだわらない。

今日まで、ネットの発展を引っ張ってきたのは、エロである。人間の根源的な欲望が、じつはネットを大発展させてきた。かくして、アマゾンは今後、日本一のアダルト通販、アダルト配信サイトになるだろう。今年の年末年始は、アマゾンでアダルト三昧、エロ見放題なんてことになるユーザーが続出するかもしれない。

作家、ジャーナリスト

1952年横浜生まれ。1976年光文社入社。2002年『光文社 ペーパーバックス』を創刊し編集長。2010年からフリーランス。作家、ジャーナリストとして、主に国際政治・経済で、取材・執筆活動をしながら、出版プロデュースも手掛ける。主な著書は『出版大崩壊』『資産フライト』(ともに文春新書)『中国の夢は100年たっても実現しない』(PHP)『日本が2度勝っていた大東亜・太平洋戦争』(ヒカルランド)『日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか』(ソフトバンク新書)『地方創生の罠』(青春新書)『永久属国論』(さくら舎)『コロナ敗戦後の世界』(MdN新書)。最新刊は『地球温暖化敗戦』(ベストブック )。

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