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オスプレイの飛行再開で、メディアの偏向報道は続く。いい加減、普通に報道をしてほしい

山田順作家、ジャーナリスト
(写真:アフロ)

12月19日のNHK「ニュース7」のトップニュースは、オスプレイの飛行再開だった。なんで、この程度のことが、トップニュースになるのかまったく理解できない。先日のオスプレイの墜落は、1人も死者を出さず、事故原因が機体にないことはすでに米軍によって公表されている。

とすると、これ以上、なにが問題なのだろうか?

ところが、NHKをはじめとする日本の大メディアは、「100パーセント安全でないとダメ」というオールオアナッシングの非科学(宗教)に染まっていて、それを主張する人間のコメントしか報道しない。それをいいことに、たとえば沖縄の翁長知事は「原因究明をしっかりやって説明を果たしてもらわないと認められない。とんでもないことだ」などと現地視察で記者団にコメントした。しかし、前記したように、事故原因はすでに公表されている。それ以上なにが知りたいのだろうか。

じつは、この方は、米軍がどんな報告を出そうと聞く耳を持っていない。そればかりか、沖縄は米国の従属国・日本の一地方だという事実を受け入れられないという、現実無視メンタリティの持ち主である。

だから、自分の行動を「植民地の王」としてふさわしいと信じているようだ。ところが、沖縄の人々で、自分たちの状況に不満を持っている人は、大メディアと現地メディアが騒ぐほど多くないだろう。

ただ、それがバレてしまうとメディアは困るので、基地反対派、オスプレイ反対派のインタビューコメントばかりを取り上げる。

NHKニュースは、「アメリカ軍がオスプレイの飛行を再開させたことについて、普天間基地がある沖縄県宜野湾市の住民からは、批判や不安の声が聞かれました」などと、嘘ではない程度にナレーションして、たとえば40代の男性の「小さい子どもがいるので、飛行を再開すると聞いて非常に不安です。こんなに早く飛行を再開することは許されることではありません」などいう声を伝えた。

しかし、ここであえて言いたいが、もし日本のメディアが伝えるようにオスプレイが本当に危険な飛行機なら、いちばん不安なのは、それに搭乗するパイロットなどのクルーたちだろう。次に、そうした兵士を送り出した親や家族たちだ。万が一の事故で巻き込まれる可能性がある地上にいる住民より、彼らのことを心配する方が、たとえメディアとしても先に来なければならない。

在沖縄米軍トップのニコルソン中将(四軍調整官)は、飛行再開に先立ち、現地を訪れて住民らに事故について謝罪し、「MV22の安全性と信頼性に米軍が最大級の自信を持っていることを日本国民に理解していただくことが重要だ」とする声明を発表した。そして、「この4年間、ここを飛んでいるが事故は1度もなかった」と言った。

日本のメディアの論理で行くと、この司令官は部下の命を顧みない、人命無視の非情な軍人ということになる。

不思議なことに、この国では翁長知事のような考えが正義だと考える人間が少なくない。たとえば、民進党の蓮舫代表は、オスプレイの飛行再開より、事故原因の説明が先だと指摘し、「安全を担保した、 どのように担保したのかを、しっかり政府は説明する責任があると思います」と述べた。

オスプレイが飛ぶこと自体に反対なので、いくらコメントを求めてもこうなるという程度のことしか、この人は言わない。

おそらく、この日本には、オスプレイが飛ぶことを歓迎している人もいっぱいいるだろう。私は、沖縄と同じように米軍基地が多い神奈川県民だが、小さい頃から基地に遊びに行ったりしたこともあり、米軍に出て行ってほしいと思ったことは1度もない。本当にほとんどの沖縄県民が、今度のことで怒っているのか? メディアはちゃんと世論調査して、その結果を公表してほしいと思う。

沖縄の住民を本当に危険にさらしているのは、じつは米軍であるわけがない。それは、尖閣諸島に押し寄せ、しばしば領海侵犯する中国の艦船と、最近、領空侵犯寸前を繰り返すようになった中国軍機のほうだ。

民兵が乗っている中国の「偽装漁船」、あるいは中国空軍の戦闘機「スホイ30」や戦略爆撃機「轟&K」とオスプレイでは、どちらがより潜在的な脅威か考えてみたほうがいい。米軍は、日本の同盟軍である。

これまで、翁長知事はワシントンDCやスイスに出向き、「県民の人権が侵害されている」などと訴えてきた。しかし、この人は行く場所を間違えている。彼が本当に抗議しに行くべきなのは、アメリカ政府、国連、日本政府ではない。それは、北京だろう。それをしなければ、この知事は、県民の安全を平気で無視できる偽善者と言わざるをえない。

作家、ジャーナリスト

1952年横浜生まれ。1976年光文社入社。2002年『光文社 ペーパーバックス』を創刊し編集長。2010年からフリーランス。作家、ジャーナリストとして、主に国際政治・経済で、取材・執筆活動をしながら、出版プロデュースも手掛ける。主な著書は『出版大崩壊』『資産フライト』(ともに文春新書)『中国の夢は100年たっても実現しない』(PHP)『日本が2度勝っていた大東亜・太平洋戦争』(ヒカルランド)『日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか』(ソフトバンク新書)『地方創生の罠』(青春新書)『永久属国論』(さくら舎)『コロナ敗戦後の世界』(MdN新書)。最新刊は『地球温暖化敗戦』(ベストブック )。

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