学部と大学院がなくなる! 東工大が数十年に一度の大学改革を決行!

2016年4月に実施する大学改革を発表する東京工業大学の三島良直学長

大学に学部と大学院がなくなる!

日本の大学の国際的な地位の向上が大きな課題となっている中、2012年10月の学長就任以来3年半にわたり大学改革に取り組んできた東京工業大学(以下、東工大)の三島良直学長が2016年3月22日、記者発表会を開催。

以前から宣言していた「創立150周年を迎える2031年までに、リサーチユニバーシティ(研究開発に力を注いでいる大学)として世界トップ10入りを目指す」という目標に向け、2016年4月から実施する大学改革の具体的な内容を発表した。

東工大では、三島学長の強いリーダーシップの下、大学改革の一環として、2014年度から、「ガバナンス改革」「社会連携改革」「国際化改革」に取り組んできたが、2016年度からは、いよいよ本丸である「教育改革」と「研究改革」が実施されることになる。

記者発表会で、三島学長は「東工大にとって数十年に一度の大きな大学改革になる」と述べた上で、まず教育改革の具体的な内容について説明した。

現在、日本のすべての大学は、学部と大学院で構成されており、学部の中には学科、大学院の中には研究科が設置されている。しかし、東工大はこの4月から、日本の大学としては初めて、学部と大学院を統一した「学院」を新設する。

「東工大にはこれまで3学部23学科、6研究科45専攻があった。細かく複雑な組織な上、学科や専攻の名前も非常に分かりづらかった。同じ研究分野であるにもかかわらず、別の組織に分かれているものもあった。そこで、すべての学部、大学院を再構成し、6学院19系にした」(三島学長)

しっかりとした知識と気概、高い志をもった人材の輩出を目指す

それに伴い、カリキュラムも一新。従来の学士専門科目や修士専門科目を撤廃し、「科目ナンバリング」を導入する。

科目は100番台から600番台まであり、高校卒業後の新入生は100番台から取り始める。科目ナンバリングは系統だっており、一気通貫しているため、学生は自分が進みたい進路や学びたい内容に応じて、どの科目を、どのような順番で取得していけばよいかがわかるしくみになっている。

加えて、近年、社会が直面している課題の多くが多岐にわたり、分野の融合領域が増えている中、従来の枠にとらわれず、自分の専門分野以外の科目であっても必要に応じて自由に取得できる拡張性と柔軟性も併せ持つ。

「科目ナンバリングの導入により、学生は、大学に入学した時点から、科学技術を通じて自分は何を果たすべきなのか、将来どのような形で社会に貢献していきたいのかを強く意識できるようになる。この新カリキュラムは、このような意識を早い時期から育成しようという強い意図をもって作成した。東工大を、しっかりとした知識と気概、高い志をもった人材を輩出する大学にしていきたい。それが、教育改革の最大の目的だ」(三島学長)

その他、一科目を短期間で集中的に学べるクォーター制や世界トップクラスの大学のカリキュラムと比較できるしくみなども設置する。

「科学技術創生研究院」を新設

実は教育改革に関しては、これまでも何度か発表されてきた。一方、今回新たに発表されたのが、もう1つの本丸である研究改革だ。

三島学長は、この4月から実施される研究改革として、以下の3本柱を提示した。

(1)「世界の研究ハブ」として、国際的な研究活動を展開するガバナンス強化

(2)世界の先陣を切って新たな研究分野を開拓していくための柔軟な研究体制の構築

(3)総合的な研究力を高めるための環境整備

研究改革の3本柱
研究改革の3本柱

中でも注目すべきが、(2)の柔軟な研究体制の構築で、新たに「科学技術創生研究院」を設置する。

科学技術創生研究院を新設
科学技術創生研究院を新設

これまで東工大には、学部、大学院、3つの世界トップレベルの研究拠点組織「地球生命研究所」「元素戦略研究センター」「『以心電心』ハピネス共創研究推進機構」以外に、5つの研究所と1つの研究センター、1つの研究機構が存在していた。

しかし、この4月からは、3つの世界トップレベルの研究拠点組織を除く既存の研究所、研究センター、研究機構をすべて再編成し、4つの研究所と2つの研究センターを新設する。そしてそれらを科学技術創生研究院の中に配置する。それ伴い、研究所と研究センターのトップはすべて科学技術創生研究院の研究院長が務めることとなる。

さらに、注目すべき点は、科学技術創生研究院の中に新たに設置する「研究ユニット」だ。

三島学長は研究ユニットについて、こう説明している。

「学院の中で、特に活発に研究活動を推進している教員をリーダーに任命し、研究ユニットを形成する。研究ユニットには、学内に加え、他大学の教員なども参画できるようにし、教員のモビリティを高める。研究ユニットは、単に共通する研究分野に携わっている教員同士が集まるといった弱いものではなく、強いリーダーシップを持つ1人の教員がリーダーとなり、強力に進めていく組織だ」

2016年度は、今後大きな成長を遂げそうな研究内容を厳選し、10の研究ユニットを設置した。大学はスタートアップとして、研究資金、研究スペース、人員の面で支援するが、各研究ユニットには、外部から大型資金を獲得する努力をしてもらい、2、3年後には、自主運営を目指してもらうという。

「したがって、研究ユニットは今後、新たに立ち上がるものと、数年後にはなくなるものが出てくると思われる。一方、研究ユニットが大きく成長すれば、研究所や研究センターに発展する可能性もある」(三島学長)

今回設置された10の研究ユニットは以下の通りで、京都賞やガートナー国際賞を受賞した大隅良典栄誉教授をリーダーとする「細胞制御工学」や、水素エネルギー研究の第一人者、岡崎健特命教授をリーダーとする「グローバル水素エネルギー」など、現在の東工大を代表する研究者がリーダーとして名を連ねている。

2016年4月にスタートする10の研究ユニット
2016年4月にスタートする10の研究ユニット
大隅良典栄誉教授をリーダーとする研究ユニット「細胞制御工学」
大隅良典栄誉教授をリーダーとする研究ユニット「細胞制御工学」

この研究ユニットの設置により、東工大が現在最も力を入れている分野や競争力の高い分野、また、その分野を代表する研究者の顔が一目瞭然で分かるようになる。加えて、学内外を含めた研究者同士の交流やモビリティ、そして、研究者としての士気が高まるという点でも非常に有用なしくみだと言えるだろう。

その他、科学技術創生研究院では、世界の研究ハブを目指し、「WRHI(World Hub Initiative)」という世界トップクラスの研究者との共同研究を推進するプロジェクトも発足。国際的な共同研究を加速させていく。

最後に三島学長は、「新しい活力ある社会を切り拓いてていくことが、東工大の使命。そのため、教育改革、研究改革を通じて、人材育成、社会貢献、そして、国際活動に努めていく。東工大では、2030年頃までに、世界トップ10に入るリサーチユニバーシティを目指すという目標を掲げているが、これは大変高い目標。秘策や特効薬があるわけではない。しかし、質の高い教育と研究を行い、世界に向けてトップレベルの人材を多く輩出し続け、結果を出していくことが最も重要であり、逆にこれしかないと思っている。そのための努力を最大限に行っていくことが、東工大の戦略だ」と述べ、記者発表会を終えた。