ドコモがNOTTVで大赤字ですが別に困っていないという話もあるようでよく分かりません

山本一郎です。一度でいいから巨額損失を計上して困ってみたいです。

ところで、ドコモが中心となって展開するスマホ向け放送「NOTTV」の運営会社mmbiが決算で純損失215億円を計上して話題となっております。

スマートフォン向け放送局「NOTTV」215億円の赤字(とあるサイトプロデューサーのブログ 2013/6/22)

NOTTVとはなんぞやということですが、地上アナログ放送終了後の帯域幅を利用した携帯端末向け放送サービス「モバキャス」向けに提供されている有料放送の一つです。料金は月額420円。

本来であればモバキャス上では複数の放送が可能なはずですからmmbi以外の放送事業者も参入して良さそうなところですが、実際には一社のみの独占状態。また、現在のところ、NOTTVを受信するためにはドコモの対応端末が必要なため、必然的にNOTTVの視聴者はドコモ契約者のみとなっています。

NOTTVについて(NOTTVホームページ)

NOTTVが開設された2012年4月当初は対応端末が2機種のみで視聴可能エリアも限られていたためかなり苦戦していたようですが、その後対応端末が増え視聴可能エリアも拡大した結果なのか、今年の6月には契約者数が100万を突破したと発表されました。ただし、現時点においてもいまだ全国で視聴できるわけではありません。この辺りの力の入れ加減を見るとやる気があるのかないのかどうも微妙です。

NOTTVの放送エリアは、6月3日現在で全国33都道県。今後は8月に宮崎、9月に新潟、徳島へ拡大する予定。また、10月から2014年3月までに福井/大分/青森/秋田/山形/山口/佐賀/香川/鳥取/島根/岐阜でサービスを開始する。

出典:「NOTTV」が100万契約を突破(ITmedia)

で、今回のNOTTVの赤字に関してはやはりと言いますか、放送行政に一家言ある池田信夫先生がしっかりとブログでコメントしております。

昨年度の営業利益が8372億円のドコモにとっては、438億円ぐらいドブに捨てても大したことはない。それよりこうして電波部に義理立てしたことで、700MHz帯の電波をタダでもらえた。この電波の時価は2000億円以上なので、バーターとしては電波部もドコモも得したのだ。損したのは貴重な電波をタダでドコモに取られた納税者と、これからNOTTVが放送打ち切りになったときの利用者である。

出典:NOTTVの謎(池田信夫blog)

池田先生の言をそのまま真に受ければ、まさに放送行政の闇と言っていいのかもしれません。「ドコモよ、お主も悪よのう、ははははは」という感じなのでしょうか。

それはさておき、NOTTVの経緯を見ていると、2004年10月に始まり2009年3月に終了した携帯端末向け放送「モバHO!」や、2003年10月に始まり2011年3月に終了した「地上デジタルラジオ」の実用化試験放送などを思い出してしまいます。いずれも色々な思惑で笛や太鼓を鳴らす輩が現れましたが、それに踊らさせる人は思った以上に少なく、結局は消えいきました。いずれのサービスともタイミング的には丁度スマホが登場する直前でしたから、そういう意味では時代の波に乗れなかったということも敗因の一つなのかもしれません。

モバHO!、加入者伸びず2009年3月で放送終了(AV Watch 2008/7/29)

デジタルラジオ試験放送が2011年3月で終了(2010/10/6)

今度のNOTTVはスマホ対応ですから時代の波にはかろうじて乗っているようですが、はたしてユーザーが使ってくれるのかどうかはまた別の話。NOTTVにマルチメディア放送として免許が割り当てされた当初は、開設から5年後には対応端末数が5000万台と試算され、ソフトバンクも支持を表明していたわけですが、現状を見る限り途はなかなか険しいようです。

一方で、ドコモが展開しているスマホ向けオンデマンド型動画配信サービス「dビデオ」は好調のようで会員数は400万を突破したという報道があります。

ドコモの「dビデオ」会員数が400万突破、提供開始から1年4カ月(ITpro 2013/3/19)

dビデオは国内外の映画やドラマ、アニメなど約7000タイトルの動画を視聴できるサービスで料金は月額525円。NOTTVより料金が高いにも関わらず好調な裏には、dビデオの顧客獲得チャンネルが店頭入会、つまりはスマホ購入時に販売店で加入させられるというところも一因としてあるようですが、それよりもオンデマンドで好きなタイトルを好きな時間に見られるという、放送にはない利便性がユーザーに好まれている可能性も考慮しなければならないでしょう。NOTTVはシフトタイム視聴できるコンテンツも用意されていますが基本はリアルタイム視聴。テレビを録画して見ることに慣れてしまった現代のユーザーがリアルタイム放送にどれほどの魅力を感じられるのか、事業者側はその辺りを要検討すべきかと思いますが、はたしてドコモの中の人がどこまで真剣なのかはよく分かりません。

ちなみに、dビデオの方は元々は「BeeTV」と呼ばれたサービスで、エイベックス・エンタテインメントとNTTドコモの合弁会社、エイベックス通信放送が運営しています。で、dビデオの売上が絶好調の結果、親会社のエイベックスは過去最高売上&過去最高利益を叩き出したようで、おそるべし動画配信ビジネスということなのかもしれません。

avexが過去最高売上&過去最高利益を更新!なんとBeeTVが頑張ってる(とあるサイトプロデューサーのブログ 2013/6/18)

まあ、近いうちこの「携帯販売店店頭での抱き合わせ商法」は業火に叩き落されることでしょうが、この「解約するのが面倒くさい」ので使っていないサービスでもお金を払い続ける消費者心理を利用する方法は消費者庁的にはどうなんでしょうかね。興味しんしんです。

エイベックスに訴えられないよう、言葉は慎んでまいりたいと思っております。