サイバーエージェントなど特定企業の社員が違法なネイティブアドビジネスにぶっこんでいる件で

最近は自爆する内容を媒体資料に織り込む自殺志望者も増えていると聞きます。

山本一郎です。どっかの阿呆が実態調査しろと高台で騒いだお陰で突然大量の仕事が降ってきてこちらのゴールデンウィークらしきものが木っ端微塵に吹っ飛ばされ、払いたくもない宿泊費キャンセル料なるものを振り込むという屈辱に塗れています。お前なあ、簡単に言うけど実態調査ってほんと大変なんだぞ。お金に苦労のない人生のはずが、しがらみのど真ん中で真面目に働いている自分が馬鹿みたいです。この怒りはどこにぶつければいいのでしょう。

別に本件怒りの捌け口というわけではないのですが、去年からずっと問題になっていたサイバーエージェントやそのグループ会社のステルスマーケティング紛いの取引事案が、そろそろ盛大に火を噴いている状態なので取り上げたいと思います。

ステルスマーケティング(通称「ステマ」、またの名をアンダーカバーマーケティング)とは何でしょうか。

ネット上で問題となるステルスマーケティングは、口コミやバイラルなどと称して第三者で中立的な利用者を装い、さもその話題や商品、ビジネスが好意的な反応があるかのようにネット上で情報を流通させることによって、ありもしない好評を築き上げて消費者を欺いて購買に結びつける方法です。

そこからさらに、一般のメディアも巻き込んで、ネイティブアドのノンクレジット問題(後述)やソースロンダリング問題といった派生型の手法が編み出されていますが、具体的な運用においては消費者庁マターであり、景品表示法における有利誤認。すでにガイドラインもでております。

「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」の一部改定について

消費者庁 『ステマ』は景表法違反、"限度"超えれば優良誤認(通販新聞 12/5/17)

本件は口コミサイトのステマの実態から改定されたインターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項に基づいていますが、これは正体の掴みづらい一般消費者を装って口コミサイトや評価サイトを利用した内容「も」アウトですよ、という話であり、そもそも利用者の有利誤認を導く欺瞞的取引は常にアウトであります。

要するに、ステマは違法です。

このステマにかかわる部分で、最近はネイティブアドのノンクレジット問題が出てきています。「ネイティブアドのノンクレジット問題」といわれるとピンとこない人も多いかと思いますが、このネイティブアドはいわゆる「一般記事風の広告」であり、ノンクレジット問題とはこの広告における「広告表記を外すこと」です。

つまり、一般媒体において、広告記事であり業者からカネ貰って書いているにもかかわらず、それに【広告】と記述されなければその媒体が取材を元に客観的に書いたと思われる記事になってしまう、という状態になるのがネイティブアドのノンクレジットの問題点であります。広告主にとってビジネスや購買に繋がる有利な記事を書いてもらいながら、それが中立であるかのように記述されることは、消費者に対して有利誤認を導くことになるのは言うまでもありません。景品表示法の趣旨から見ても、取引の実態から見ても、これらの商取引は利用者の有利誤認を導くことを目的に行われていることで、口コミサイトのステマ依頼のような「欺瞞的取引の疑い」ではなく「欺瞞的取引そのもの」ということになります。

要するに、ネイティブアドのノンクレジット状態は違法です。

カネもらって広告記事を書くのであれば、それが「広告」と明記されなければいけない、ということです。

これは、新聞、雑誌、テレビなど他のメディアではすでに徹底されていて、広告の掲載のレギュレーションは大きく分けて2つ、「考課」と「広告枠」とで構成されています。本筋からずれるので細かくは説明しませんが、広告考課は「その広告をメディア掲載して広く知られても、その商品やサービスが善良であり国民生活が被害に遭うことなく暮らしていけることを、そのメディアが保証できること」であり、広告枠は「この掲載が資金を提供されて掲載される広告であることをきちんとメディアの読者や視聴者に伝えることができ、本掲載や本放送と区別できること」が前提となります。

インターネットにおいては、雑誌やテレビと異なり、記事が自由に生成でき、レイアウトも自由ですので、ニュースサイトに出てくる記事が広告なのかどうかは利用者からは分かりづらくすることが可能です。一方、記事広告において「広告」や【広告】といったヘッドについた場合、読者が減りPVが取れないケースがあるため、忌避されるといわれています。したがって、多くの読者に広告を読ませるために、クライアントも広告代理店も掲載メディアも一緒になってこの「広告」【広告】の表記を外すこと、すなわちノンクレジット状態にすることが「ビジネスにおいて利益になる」という一点で違法行為を是認しがちであるという問題があるわけです。

一連のサイバーエージェントの「ネイティブアドのノンクレジット問題」は、すでに内部からの告発や、被害に遭った複数のウェブメディアからのヒヤリングの結果、少なくとも21件のノンクレ営業依頼が確認されております。これがサイバーエージェントの組織的な営業の方針によるものなのか、部門や担当社員の個人的な事情によるものなのかは、現段階では判然としません。

また、同様の事例としてPR会社のインテグレート社においても同様の依頼が少なくとも20件見られます。彼らに質問状を送ったところ、成立していないはずの広告契約なのになぜか守秘義務を盾に回答がもらえませんでした。おかしいですね、インテグレート社からの資料が出てきているようだから質問しているのに、どういうことなのでしょう。

おそらく、同様の事例は複数の広告代理店およびPR会社によって行われていると考えられます。このようなネイティブアドのノンクレジットをメディアに要望し、これをメディア側が断ると広告の発注そのものがキャンセルになり、これを受け入れる別のメディアに記事が掲載される形になります。

すなわち、メディアのポリシーに則って、広告としてカネを受け取ったからには必ず「広告」を表記する方針を徹底すると、仕事が回ってこなくなるという悪貨が良貨を駆逐するような形での問題を起こすということになるのでしょう。

入手した資料を元に、サイバーエージェントに対して質問状を送ったところ、事実関係については「当社の広告事業部門をはじめ、関係部署について調査をいたしましたが対メディアに対して、そのように指示を出したという事実はございませんでした」とのことで、続けて「当社の方針と相違する資料が存在するという情報については大きな課題として受け止め、社員教育を徹底するとともに業界の健全な発展に努めてまいりたいと思います」という回答が得られました。そうですか。

しかしながら、内部情報をもう少し詳しく聞いてみると、事態が鋭角に分かります。ネイティブアドのクレジットを外して営業をするような状態に陥っているのは、サイバーエージェントのガバナンスの問題であって、つまりはそういうガバナンスにしている社長の藤田晋さんの問題ではないでしょうか。

というのも、今回取材に応じたサイバーエージェントの現役社員さんたちは全員「ネイティブアドにおいて広告クレジットを外すのは問題である」ことを知っており、おそらく問題としては社員教育が徹底していなかったから問題を知らなかったというわけではないことが分かります。それはいけないことだ、という認識がはっきりしています。むしろ、彼らの口から課題として出てきているのはまったく別の事情です。

それは「事業が部門ごとの独立採算になっており、収益化が困難で一件あたりの案件の受注金額が小さいデジタルアドで利益を出そうと思うと、多少まずいと思ってもステマに手を出さざるを得ない現状」や「(社長の)思いつきのような感じで始めた大量のメディアやサイトがどれもうまくいかず、その採算の責任を押し付けられた社員がマネタイズのため走り回っている状況」です。「利益の出ない部門に回されると、いくら努力しても採算に届かないので、真面目に利益を出そうとしている人ほどやってはいけないことに手を染める動機が生まれやすくなる」土壌があるというのは気になるところです。元を正せば「boketeなどの人気サービスを単にパクったアメーバ大喜利」などサービスの粗製乱造を図った一時期のサイバーエージェントのスマホシフトが無理なマネタイズを各事業部担当者に求め、混乱に拍車がかかっているのではないかと見られます。多額の投資をして競争を仕掛けた結果、自分のところも単価が下がって身動きが取れなくなっているのだとしたら、何のために新サービスを大量に市場投入したのか本気でよく分かりません。

ましてや、サイバーエージェントはネット広告の信頼性向上を目的のひとつとするインターネット広告推進協議会(JIAA)に理事を出している会社であり、正直何の冗談なのだろうという気持ちでいっぱいです。そのJIAAは、先日かなり合理的なインターネットでのネイティブ広告掲載に関するガイドラインを出しております。

ネイティブ広告に関するガイドラインを策定

続報は、当ヤフーニュース個人や私のブログメルマガでも掲載していきたいと思いますし、サイバーエージェントやインテグレート社以外にもモグリのネイティブアドで違法に収益を上げようと考えているかもしれない会社は多くあるのでしょう。業界全体として、きちんと襟を正して適法で継続可能なビジネスの環境をインターネット上で実現できるよう努力するのが筋だと思うのですが。

本件ネイティブアド騒動については、大量の続報もあり、冒頭にも述べましたがかなりカロリー高く火を噴いている状態です。業者間や各レイヤーで壮大な刺し合いになりかねません。業界としての改善が無ければ前回同様に別件での摘発もあり得るのではないかというぐらいに深刻な状況になり始めていることは業界各社が良く理解して、一日でも早く是正していただきたいと願う次第であります。