博報堂が、日産や『テラフォーマーズ』などのPRでステルスマーケティングを展開

山本一郎です。裏切り者を見つけるのが趣味です。

ところで、以前からあれやこれや報じてきました「ネイティブ広告の広告クレジット外し」の件ですが、どうも6月上旬に「山本一郎被害者の会」とかいうのが有志の手により結成されていたようです。その割にあっさり裏切り者が出てそこに出席された方からタレコミが入るという摩訶不思議な事態に直面しており困惑を隠せません。なんでしょう、このオリンパスみたいな感じは。世の中どうなっているのでしょうか。

いろんな意味でハードワーカーな感じのシャレオツニュースサイト。
いろんな意味でハードワーカーな感じのシャレオツニュースサイト。

サイバーエージェントなど特定企業の社員が違法なネイティブアドビジネスにぶっこんでいる件で(ヤフーニュース個人 やまもといちろう 15/4/30)

ネイティブ広告はコンプガチャの轍を踏む--山本一郎氏の見解(C-NET JAPAN 15/5/4)

サイバーエージェントからネイティブアド(広告記事)に関する謎のお詫びが掲載される(ヤフーニュース個人 やまもといちろう 15/5/13)

その後も調査を継続していまして、今回取り上げますのは広告業界の雄、我らが博報堂グループであります。すでに記事にしておりますサイバーエージェント方面だけでなく、博報堂においても上記とほぼ同様のスキームでネイティブ広告の広告クレジット外し、要するにステマやノンクレに類される欺瞞的な取引が横行していた疑いが関係者への取材により強まりました。このようなじじつがはんめいしてしまうのは、まことにざんねんなことです。

今回話の中心にありますのは博報堂/TBWA博報堂の三浦崇宏さんという方が手がけられた一連のコンテンツで、広告宣伝費が支払われているにもかかわらず中立を装った記事がAOL『ハードワーカーズ』に掲載されました。さらに、その記事が記事広告の掲載を禁じているはずの日本最大級のアグリゲーター『ネタりか』に転載されております。

なぜか画像サンプルが見えないので画像説明のフレーバーは仮置き
なぜか画像サンプルが見えないので画像説明のフレーバーは仮置き

さすがにこれは問題だろということで、AOLには取材を申し入れ、見解を伺う連絡をしたところ、機先を制するようにお詫び文書が掲載されるという状態になってしまい、困惑を抑え切れません。知ってて隠してバレてお詫びするぐらいなら最初からやらなきゃいいのにという甘酸っぱい気持ちでいっぱいです。

当社一部メディアでのスポンサードコンテンツについて(AOLオンラインジャパン株式会社 15/8/27)

http://o.aolcdn.com/os/japan/pressrelease/PR_AOL_NativeAd_Aug2015.pdf

当社では以前、一部メディアにおいてスポンサードコンテンツを、ユーザー誤認を誘発するような形式(例:PR表記なし )で掲載していたことがありました。

ただし、2015年3月に「ネイティブ広告に関する推奨規定」(以下、ガイドライン)を一般社団法人日本インタラクティブ広告協会(JIAA)が発表後に制作したスポンサードコンテンツに関しては、同ガイドラインに準拠するよう順次改めて参りました。現在はガイドライン発表後以降に当社内で制作したすべてのスポンサードコンテンツにおいて、ガイドライン遵守を徹底しております。

出典:当社一部メディアでのスポンサードコンテンツについて

お、おう…。

しかしながら、本件にて判明しているネタについてはAOLさんが「ガイドライン遵守を徹底してお」られるはずの15年3月以降のものであります。なお、本件AOL経由以外にも博報堂系でステマと見られる記事は今月だけで7件確認されています。大丈夫なのでしょうか。

矢沢永吉が名言連発する日産CM『やっちゃえNISSAN』がカッコよすぎると話題に 「やりたいことやっちゃう人生のほうが、間違いなく面白い」(ネタりか 15/8/26)

http://news.aol.jp/2015/08/23/hwz_nissanyazawa/(ハードワーカーズ 15/8/24)

魚拓

『テラフォーマーズ』の全長21メートルの巨大漫画が新宿駅で公開され話題に 既に1万人以上の通行人が目撃(ネタりか 15/8/27)

http://news.aol.jp/2015/08/24/hwz_terraformars/(ハードワーカーズ 15/8/25)

魚拓

駄目に決まってるだろ、こんなの。

おまけにハフィントンポストにまで自身の名前で提灯が掲載されています。自力でステマとかパねぇッス。

もし、その仕事にチャレンジが必要なら、クリエイターを呼んでみませんか?(ハフィントンポスト 三浦崇宏 15/8/10)

魚拓

なお、一応は和製魚拓で保存してURLを引用しておりますが、当然のことながら本丸サイトについてはpdf、jpgで確保してありますので、仮に削除依頼が出て見られなくなったとしても後ほどステマ関連詰め合わせセットを掲載する予定です。

鳴り物入りのハフィントンポストもチェック甘くてステマし放題の巻
鳴り物入りのハフィントンポストもチェック甘くてステマし放題の巻

で、やらかされた日産と、ルノーグローバルの広報・広告宣伝には直接正面玄関から取材依頼をしたのですが、回答は「担当者が不在でお答えできません」との由。そうですか。で、ツテを辿って関係者にいろいろ話を聞いてみると(わざわざ調べてくださいました)、前述のサイバーエージェント系のステマ問題と似た経緯を辿っているようで興味深いです。

結論から申しますと、日産はどうも博報堂および関係会社に対して、年間幾らかの広告予算をまるっとお願いし預けており、その予算に見合う成果を出してもらうという契約で取引が進んでいる模様です。つまり、博報堂のクライアントである日産が、そのデジタル広告の使途について「こういう形でバレんようにステマやってクレメンス」と指示するのではなく、あくまで「このぐらいの予算をやるから、数字で見えるこの程度の見込み客からの反応をハラディ」という相談なのです。

他の関係者からの説明でも、日産など大口ナショナルクライアントの広告宣伝部が具体的に広告手法について代理店に指定することは少ないようで、ステマのような込み入った内容を指示することはなさそうです。それが事実だとすると、日産はシロであって、ステマやらかした代理店が悪い(この場合は博報堂)ということになります。

そして、日産以外のクライアントについても、また博報堂に限らず「デジタルマーケティング」や「戦略PR」を謳う業界各社においても、この手のステマについては手法として定着しています。通常のバナー広告などに使うデジタル広告予算に比べてステマは動員効果が高いこともあって、発表会とステマは切っても切れない関係になっているようです。

ステルスマーケティングが何故飛ぶように売れ、また比較的安価で効果が高いのかというと、読者に普通の記事だと称してポータルサイトやニュースサイト、ニュースアプリに記事が掲載されるため、動員効果が高いということが主たる理由です。

当たり前ですが、普通の記事広告よりもノンクレ、ステマ記事の効果が高い理由はただひとつ、読者は当該記事を広告と思わず普通の記事として読むからクリック率も通読率も高くなるということです。

私からの取材に対して、博報堂TBWAは「同時に今後もガイドライン遵守を徹底して参ります」としたうえで「弊社では、ネイティブ広告のクレジットに関し、3月にJIAAより発表されたガイドラインを遵守するよう努めて参りましたが、昨日午前11時にご指摘をいただき改めて社内調査を開始いたしました。綿密に調査いたしますのでしばらくお時間をいただくことをご理解ください」とご回答いただいております。ぜひガイドラインを遵守していただければと願う次第であります。

また本件については、事情に詳しいデジタル広告業界関係者からも複数事情が聴けているのですが、その中で気になることとしては「発表会に媒体から記者が派遣されると、その媒体のグレードに応じて1万5,000円から7万円程度の”お名刺代”を配る」ことがあるということです。それも、博報堂はむしろこういう問題行為を直接はやらないほうで、博報堂からさらに業務を受託した会社や、博報堂とコンペになるPR会社がこの手の問題行為を盛んに繰り返していて、問題行為が横行していることが示唆されます。

下手をすると、PRの現場で起きている欺瞞については博報堂すら知らない可能性がある、ということでもあります。

これは、来週以降掲載しようと思っております続報にも詳細を書こうと思っておりますが… 要するに、広告代理店やPR会社が行う製品・サービス発表会に、週刊誌やウェブ媒体の記者やカメラマンがやってくるごとに、発表会を受託している代理店やPR会社がこれらの週刊誌やウェブ媒体に対し取材協力への謝礼金として一定の金額を支払っているわけです。金もらって記者出して発表会の提灯記事書いてるわけですね。

私が入手した”PR会社に対しウェブ媒体が発行した請求書”にも、請求項目としては「手配代等」となっていますが、クライアント企業の発表会の日付で記者とカメラマンの人数と単価を記したと見られる内容があり、気になります。大口のクライアントからの下請け構造がしっかりある業界環境の中で、誰が責任を持って本件を仕掛けているのか良く分かりませんが、少なくとも実態としてはステルスマーケティングをウェブで実施するために、かなり昔からこのような事業が行われてきたことは理解できます。

ヤザワ出しておけばとりあえずSNSではバズるという参考画像
ヤザワ出しておけばとりあえずSNSではバズるという参考画像

実際の金銭授受と記事掲載が行われているという事実関係が確認できただけでも、自動車メーカーや住宅メーカー、住宅賃貸情報サイト、乗り換え便利系アプリ、ニュースアプリ、家計簿アプリ、ゲームアプリ、中古車情報サイト、外食チェーン店、飲料メーカーなど、22社において、これらの事案が15年7月以降広告代理店やPR会社によって実施されており、ウェブ媒体側もつるんでいる可能性があります。

ウェブ媒体でライティングをやっている人たちの間では、相場として一回の商品発表会や記者会見に出席してウェブ媒体の名刺を渡すと1万円から3万円ぐらいが記者やカメラマン本人の懐に入ることがあります。そういう「おいしい記者会見」を見繕い、ウェブ媒体の編集部に黙って出席して名刺を渡して個人的にお金をもらう、という行為も組織的に行っているウェブ媒体があると言います。大元のクライアントはおろか、ステマを担いでいるはずの広告代理店も気づかない修羅の世界が広がっているのかもしれないのです。

ここにきて、ステマの重大事項として浮かび上がるのは、広告代理店や戦略PR会社の使う「ヤフー掲載保証」という文言です。入手した営業メールにはたいてい、「ヤフートピックス掲載保証で一本60万円から」というステマ営業の具体的文句が入っており、中には「連載企画として、6ヶ月間で2,000万円からのヤフー枠をご提供できると思います」などの内容が含まれております。これは、ヤフーニュース、とりわけヤフートピックスやネタりかにステマ記事が掲載されると、それだけクライアントの商品やサービスを訴求でき、記事を読んでURLをクリッコするスマホニュース読者が後を絶たず、キャンペーンページなどへの流入スコアがあがります。それにより、クライアントから設定されている広告代金に対するPV保証や成果報酬のKPIといったハードルを、安い費用でクリアしやすくなるということでもあります。

他にも、散見されるのは「NewsPicksで影響力のある有力なPickerからのコメントを5件セットし注目を集める仕掛けをご用意できます」とか、「スマートニュース、グノシー、アンテナ 3つの急成長ニュースアプリで掲載保証」といった文言です。それも、前回JIAAのガイドラインを遵守せず問題だと言っていた15年3月から半年経って、それなりに界隈にステマ問題が浸透している状況であるにもかかわらず、広告代理店および関係会社やPR会社が率先してこの手のステルスマーケティングのような欺瞞的取引を強力に営業しているというあたりに震撼を覚えるわけであります。

関係者におかれましては、ぜひ爪を切り手を洗い清まりに清まった状態で胸に手を当て己の行いに一点の曇りもないかどうかお考えいただきつつ、くれぐれも山本一郎のおかげでステマがやりづらくなったのでけしからんというような怒りの気持ちを抱かず平静なお心で日々の活動に邁進していただければと強く願う気持ちでいっぱいです。今回は、あくまで「うお、もうやらないとか言ってたのに今週も思いっきりステマかましとるやんけ」ということで警鐘含みで記事を書かせていただきました。

今後ともよろしくお願い申し上げます。

※ 博報堂および関連会社にお勤めの方へ

博報堂でされているビジネスすべてが問題であると申し上げるつもりはまったくございませんが、クライアント向けの報告書において、これらのステルスマーケティングを含むデジタル広告におけるノンクレ(ネイティブ広告の広告クレジット外し)分が広告効果・成果に上積みされる形で水増しされて報告される事例が見られます。

クライアントに対して正確な内容の報告が博報堂または関連会社より行われないと、結果としてこれらの望ましくないステルスマーケティングをクライアントが容認して行ったと誤解される可能性があります。クライアントとしては、博報堂または関連会社からこれらの活動を行ったことを説明しない限り、自社のサービスや製品が魅力的だから普通に媒体に記事として取り上げられたと認識することになります。しかしながら、それがお金を払われた結果、掲載された記事であるならば、外形的にはそれは「広告」であって「PR」ではありません。

また、今回の博報堂・三浦崇宏さんのように、自身で広告事業やPRを本業としてマネジメントされている方が、ご自身の名前で提灯記事をウェブ媒体に掲載される場合も、同様に本来の意味での広告とみなされるべきであって、公式に予算が使われている以上、クライアントに対し然るべき報告を行う必要はあると思います。それは手法として問題があるのは言うまでもなく、クライアントにとってもコンテンツアグリゲーターにとっても記事を見る読者にとっても、お金が払われているから有利に執筆された記事が提供されることは欺瞞の被害者になってしまう危険性があるからです。

本件は、私だけでなく多くのステルスマーケティングに批判的な個人、組織、メディアに対して広く情報が流通しており、博報堂および関連会社が手がけたと見られる百件近いステルスマーケティングに類する取引の状況が出回り始めています。「これからは、もうしません」ではなく、過去に行ったステルスマーケティングの実施内容や結果について、早い段階でクライアントに包み隠さずご説明をされ、撤回をし削除するべき現存する記事についてはきちんとした但し書きをつけて消去されることを望みます。