「好きなことで、生きていく」と言っていた皆さんはその後お元気でしょうか

10月、発表になったYouTube「Red」に帳尻を合わせる決意が見られます(写真:ロイター/アフロ)

山本一郎です。他人に言われずとも好き放題生きています。

ところで、昨年の今頃ですがYouTubeへ動画投稿するクリエイターを大々的に募集するためのキャンペーンが実施されました。

好きなことで、生きていく(YouTube 14/10/2)

懐かしいですね。わずか1年前の動画ですが、もうすでに何年も経ってしまった遠い日の出来事のように見えるあたりがなんとも素敵です。この色褪せっぷりがハンパないのですが、最近になって似たキャストで再び広告が再開され、別の意味でYouTubeの手詰まり感を覚えつつ、やってるYouTuberはみんな楽しそうだな、羨ましいなとも思うところであります。

で、この広告が公開されてから約3か月後に以下のような記事をヤフーニュース個人に書かせてもらいました。

YouTuberが儲からなくて大変らしいですね(ヤフーニュース個人 山本一郎 15/1/19)

PVを稼いで広告収益を上げていたようなYouTuberの皆さんも、ここにきて突然YouTubeの広告料率が変更されるという事態に直面し生活が苦しくなっているという話が出てきております。

出典:ヤフーニュース個人

華々しく夢のある広告で人材を募集しておきながら、方針が変更されればあっさりとハシゴが外されてしまうあたり大変世知辛いですね。まあそれでも、世の中にはYouTuberとして好きなことで生きていくことを選んだ人は世界中にいることでしょう。実際それで夢のような成功を収めている幸運な例もあることにはあるようです。

1年で何十億円も稼ぐ高収入ユーチューバー世界ランキングトップ10(Gigazine 15/10/16)

まあ、さすがにこうした世界トップクラスのYouTuber事例というのは、たまたま裏庭の地面を掘っていたら石油が出てきたくらいに希な話であろうと思われますので、誰でも同じことが出来ると勘違いするようなことはないようにしたいものですが。

日本でも、YouTube公式一押しだったAppBankのマックスむらいさんが自社の上場と共にそれなりの富を手にしたり、単に放送で一旗あげて儲けるためというよりも告知宣伝媒体としてのYouTubeがうまく活用されてきた部分はあるのかなと思います。相変わらず社内から情報は漏れ続けているようですが、上場企業として大丈夫なのでしょうか。

さて、夢は広がるYouTuberビジネスですが、この度GoogleがYouTube施策を大幅に変更したことでその収益モデルに暗い影が差してきたようです。一ヶ月ほど経った現在も、メインでYouTubeに配信しているユーザーよりも、何かをするついでに副収入的にYouTubeを活用してきたアカウントに踏み絵を迫っているようで、興味深いところです。

YouTube、“Red”契約に署名しないクリエーターのビデオを全面削除へ(Techcrunch 15/10/22)

YouTubeは、有力ビデオクリエーターに対して事実上拒否できない提案を持ちかけた。応じなければ彼らのコンテンツは消滅する。今日(米国時間10/21)YouTubeは、広告収入を得ている「パートナー」は、同社の新サービスYouTube Redの9.99ドル広告なし定期購読の広告収益分配契約に署名しない場合、そのビデオは広告付、広告なしいずれの一般公開対象からも外れることを正式発表した。これには、人気のコメディアン、ミュージシャン、ゲーム解説者、DIYインストラクターなどが含まれる。

(中略)

YouTubeは「収益の大きな、大きな部分を」クリエーターに支払うと言っているが、パーセンテージの詳細については繰り返し説明を拒んだ。

出典:Techcrunch

今の状況をかなり乱暴にまとめると、具体的なギャラの取り分については教えないけれど、YouTubeで広告収入を得て商売したい事業者は全員が新しい契約書にサインしろということらしいです。さすがにこれはちょっと厳しいものがありますが、Googleには逆らえないということなのでしょうか、多くのパートナーは契約を受け入れている一方、中にはこれを機にパートナーから降りるCPなどもあるようです。さすがプラットフォーム事業者、利益の微妙な先行きの暗い事業に対するマネタイズは容赦ないなあという雰囲気ですね。

ESPN公式YouTubeチャンネルからコンテンツ消滅――「YouTube Red」契約絡みか(ITmedia 15/10/26)

ESPNおよびYouTubeを運営する米Googleからの公式の発表はないが、米The Vergeをはじめとする複数のメディアが、YouTubeが先週発表した広告非表示のYouTubeサービス「YouTube Red」の契約内容で合意できなかったためと報じた。

出典:ITmedia

ESPNぐらいになるとコンテンツを流通させるチャンネルはいくつも持っているでしょうからこういう対応も出来るでしょうが、個人でYouTuberとして生計を立てているような場合にはもうGoogleから言われるがままにする選択肢がないという可能性はありますね。こうした状況を的確に表現した論考がありましたのでご紹介しておきます。

有料動画視聴サービス YouTube RedはYouTuberを生かすか殺すか(MdN Design Interactive 15/10/26)

巨大プラットフォームに完全に依存するビジネスモデルは、ときとして起きるプラットフォーム側の方針変更によって、簡単に瓦解する。それは天変地異にも似て一瞬に起きるのだ。

2010年にFacebookが、Facebookページからタブを廃止したときには、タブアプリを開発していたソーシャルメディアマーケティング系ベンチャーの多くは身売りをするか、破綻せざるをえなかった。

出典:MdN Design Interactive

国内ではYouTuberに特化したマネジメント会社なども立ち上がっておりましたが、さてこういう状況でどういう対応が可能なのか悩ましいところでしょうね。しかも、YouTubeの今回の状況変化の一番大きな部分は、これまで動画に差し込まれていた広告動画を見なくても済むサービス開始という点であります。つまり、YouTuberを起用した動画広告を作ってみても、多くのユーザーに見てもらう機会が無くなる可能性が出てきたということです。とりあえず、動画無しの有料サービスであるYouTube Redが日本でも開始されるのかどうかは不明ですし、また仮に提供されるようになってもどれくらいのユーザーがそれを利用するのかは不明ですが、YouTube上での動画広告というビジネスに対してはネガティブな要素が増えつつあることは間違いないでしょう。

また、明かな広告目的の動画を一般動画として登録して、有料プラットフォームであるYouTube Redのチャンネルに配信することは可能なのかどうかも気になるところですし、もしかしたらこのあたりは動画コンテンツにおけるネイティブ広告問題のような形で近い将来議論される可能性があるのかもしれません。

最近では、鳴り物入りで始まったUstreamがアジア向け配信のUstream Asiaから撤退、三上洋さんの弔辞と共にしめやかに送られるという事態にまで発展しており、動画サービスの民主化とマネタイズの問題は必ずしもばら色ではないよということだけがメッセージとしてビンビンと伝わってまいります。

「Ustream」アジア法人が撤退へ 米本社での直接運営に(Yahoo! ITmediaニュース 15/12/1)

時代の寵児Ustream、ひっそり撤退…なぜ視聴者&配信側に見捨てられた?甘さがアダ(ビジネスジャーナル 三上洋 15/12/4)

さらには、国内プラットフォーム大手であったニコニコ動画でも異変は怒っておりまして、広告主界隈で行われる情報交換では、かつて金城湯池であった生主界隈やらゲーム広告においても壮大なユーザー離れを起こし始めているようで、とりわけスマートフォンをメインに動画を視聴する10代中盤は深刻な状態になり始めています。まだ表立ってあれこれ報じられるレベルではないと思いますが、ちょっと頭の片隅に入れておいたほうがいいかなといった塩梅であります。栄枯盛衰と申しますか、いろいろあるんすね。

こちらからは以上です。