シャープの「偶発債務」問題は、別にシャープが悪いわけではないですよ

なんかこの画像、右と左で数字の細目合わなくね?(写真:アフロ)

山本一郎です。コンテンツ会計やコンテンツ投資ではある意味で(広い定義で)偶発債務の山であり、撮影の段取りに入ってから監督が鬱になったり、メインスポンサーのひとつだったパチンコ屋さんがいきなり経営不振になってお金を振り込んでこなかったり、起用した女優がクランクイン直後に妊娠発覚して急遽人員差し替えたりという怒りゲージが増えるイベントフラグばかりが立つので大変なんすよね。

で、シャープの今回の「偶発債務」の件は、もともとシャープが開示していた内容に加えて、新たなリストが出たということで揉めたと言われております。

新たに「偶発債務」3500億円=シャープが鴻海に提示―米紙(ヤフーニュース 時事通信 16/2/25)

その後、ロイターも本件を報じており、ハフィントンポストでは田中博文さんが「デューデリジェンスがお粗末だったんじゃないの」と指摘されており、まあそうですよね、という感じになっております。

シャープ、数千億円の偶発債務判明 鴻海買収調印保留=関係筋(ロイター 16/2/25)

偶発債務を確認するのがM&Aの基本。鴻海・シャープ買収で思うこと。(ハフィントンポスト 田中博文 16/2/26)

日本のメディアではシャープが批判の対象になっているようですが、そもそも論で言うならば、鴻海(Foxconn)の会長が突然来日してトップセールスの果てに、いきなり好条件出して、政府系ファンドの産業革新機構で進めようとしていたシャープ買収案をもぎ取っていったという流れなのが今回の事案です。

潮目変えた鴻海首脳来日 1月末、シャープにプレゼン 経営陣、支持広がる 「機構案ありき」みずほ疑問視(日本経済新聞 16/2/5)

そして、今日になってブルームバーグがちゃんと報じてるんですよね。

シャープ株続落、鴻海が買収契約延期-新たな債務情報を精査(ブルームバーグ 16/2/26)

何のことはない、鴻海(Foxconn)は偶発債務の詳細を知らないまま好条件を出して買収交渉を進めていたってだけです。

交渉が先行していた産業革新機構は偶発債務の情報を事前に入手して、将来起きるかもしれない損害をバリューアットリスク法で(VaR)で計算をしているわけで。

事情に詳しい関係者によれば、新たな重大情報には構造改革や人員整理など一定の状況でシャープが支払わなくてはならない偶発債務が含まれる。全ての偶発債務が発生した場合、3000億円を超える可能性もあるが、逆にもっと低い水準となることもあるという。鴻海と対抗して買収を目指していた政府系ファンドの産業革新機構は偶発債務の額を計算していたが、鴻海は今週になって全容を知ったという。

出典:シャープ株続落、鴻海が買収契約延期-新たな債務情報を精査(ブルームバーグ)

というか、シャープに限らず、国家から経済政策を実現していく上での支援を得ている企業は、海外資本からの買収が行われたとき過去の支援に関わる資金の返還を求められたり、政府系ファンドではやらないような人員整理をやる可能性があるならその費用が偶発債務の予価として詰まれるのは当たり前のことなので、なんでそんなことを「いま知った。知らなかった」って言って揉めているのか良く分かりません。

見ようによっては交渉を有利に進めたい鴻海側の後出しジャンケンにも見えるし、本当に鴻海と交渉することになるとは思わなかったシャープ側の準備不足もあるかもしれないんですが、巨額買収か水物商売かに関わらず「世間に向かって大見得を切るときは、予備費をちゃんと積んでからにしよう」という結論になるのでありました。