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暴虐エクストリーム・メタルで蹂躙する、新鋭プロモーターがもたらす鋼鉄地獄変

山崎智之音楽ライター
SEPTICFLESH

BABYMETALやももいろクローバーZがメタルのイディオムを取り入れるなど、裾野が広がりつつあるヘヴィ・メタル。ライト層が増えている一方で、年期の入ったジジババメタラーもしぶとく生きている。

だが、真のメタル・デモリッションメンが求めているのはそんなものではない。鮮血を噴き出すほどにリアルな、コアでエクストリームなメタルが渇望されているのだ。そして、彼らが頸椎をぶち折るほどに首を振りながら喜ぶアンダーグラウンド極濃メタル・バンドが最近、次々と日本上陸を果たしている。

MARDUK(マーダック)、TAAKE(トーケ)、KATAKLYSM(カタクリズム)、VOMITORY(ヴォミトリー)など、日本で見ることは不可能と思われたブラック・メタルやデス・メタルのバンドが来襲。去る1月にはROTTING CHRIST(ロッティング・クライスト)、VREID(ヴライド)、HAVOK(ハヴォック)という、極限までにエクストリームな顔ぶれが集結するツアーが行われたばかりだ。

さらに2014年2月にはギリシャのシンフォニック・デス・メタル・バンドSEPTICFLESH(セプティックフレッシュ)をヘッドライナーに、イタリアのEYECONOCLAST(アイコノクラスト)、フランスのSVARTCROWN(スヴァートクラウン)という、頭蓋骨を粉砕せんばかりにブルータルな顔ぶれがジャパン・ツアーを敢行する。

このツアーは既にスタートしているが、各公演とも阿鼻叫喚のヘッドバンギング地獄と化しており、SEPTICFLESHは6月発売予定の新作『TITAN』からの楽曲も披露。2014年のメタル界の動向を占う、重要なツアーでもある。2月17日(月)には天王山、東京・渋谷サイクロン公演が行われる予定だ。

日本で最もエクストリームなメタル・プロモーター・B’n’F Productions

このような強烈なラインアップの来日公演を企画しているのが、B’n’F Productionsだ。日本在住の2人のフランス人が2年前にプロモーター業を開始(B’n’Fは彼らのイニシャル)。“自分たちが見たいバンド”を呼ぶことをモットーにしてきた。

「メジャーのプロモーターだったら、金儲けにならないバンドは呼ばないでしょう。我々はまず第一にファンなんです。彼らのライヴを日本のメタル・ファンと一緒に楽しむことが、ビジネス以上に大事ですね」

B’n’F Productionsが企画するライヴは、その出演アーティストの濃さで驚かされるが、もうひとつショッキングなのが、そのチケット価格だ。海外から複数のバンドを招聘しているにも関わらず、低料金に抑えられている。

「それも我々が大手プロモーターでないことのメリットです。我々は2人ですべての作業をやっている。大勢の社員に給料を払わずに済むから、チケット代を安く出来るんです」

少人数で密接なコミュニケーションを取りながらツアーを敢行することから、バンド側からの評判も良く、「富士山近くのスイサイド・フォレスト(樹海)に連れていってもらったぜ!」などというネットの書き込みもある。

暴虐の未来展望

わずか2年で、彼らの名前は海外のメタル・シーンにも知られるようになり、ひっきりなしにジャパン・ツアーのオファーが舞い込んでくるようになった。その中には、日本でもかなり知名度の高いバンドも含まれていたという。

「耳を疑うような有名バンドからもオファーがありました。ただ我々は夢想家であるのと同時に、現実主義者でもあります。×百万円というギャラを要求されても、難しいですね」

今後のB’n’F Productions企画ライヴでは、4月にTHE BLACK DAHLIA MURDER(ザ・ブラック・ダリア・マーダー)/FLESHGOD APOCALYPSE(フレッシュゴッド・アポカリプス)/DEW-SCENTED(デュー・センテッド)という極限のラインアップによるツアーが決定している。殺傷力の高いメタルコア・サウンドで支持され、来日経験もあるTHE BLACK DAHLIA MURDERはもちろん、イタリアの凶悪シンフォニック・デス・メタルで殺戮するFLESHGOD APOCALYPSEが運命の初来日を果たすことも、日本のメタル・ウォリアーズを狂喜させている。

さらに6月にはスイスのフォーク・デス・メタル・バンド、ELUVEITIE(エルヴェイティ)の来日公演も決定した。民族楽器をフィーチュアしたフォーク・テイストあふれるメタル・サウンドは日本でも信者がいるが、“売れ筋”とは呼びがたい音楽性、そして8人編成という大所帯ゆえに、来日は絶望視されてきた。まさに奇跡の日本上陸といえるこのツアーは、東京公演が瞬殺でソールドアウト。急遽追加公演が発表された。

さらに2人は、壮大な計画を話してくれた。

「2015年に東京で、野外フェスティバルを開催します。まだ詳細は明かせませんが、2日間で2ステージ、40バンドが出演する予定です。死ぬほどブルータルなエクストリーム・メタル・バンドから、少しばかりメロディアスなバンドまで、さまざまなタイプのメタル・バンドが出演します。フランスの“ヘルフェスト”ほどの規模ではないけど、全身メタル浸けの2日間になるでしょう」

アイドルのメタルでも老人のメタルでもない、現在進行形のピュアでエクストリームな鋼鉄地獄変がここにある。振り返らず、一歩足を踏み入れると、暴虐の涅槃楽が待ち構えているのだ。

B’n’F Productions facebook:

https://www.facebook.com/bnfproductions

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,200以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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