Yahoo!ニュース

【来日直前インタビュー】フェイス・ノー・モア/ロディ・ボッタム、日本公演とニュー・アルバムを語る

山崎智之音楽ライター
Faith No More photograph by Dustin Rabin

いよいよ2015年2月、フェイス・ノー・モアが日本に上陸する。

1990年代のロック・シーンを席巻しながら解散、伝説となってきた彼らだが、2009年にライヴ活動を再開。そして遂に1997年以来となる来日公演が実現することになった。

バンド復活が単なる懐古趣味やノスタルジアではないことを証明するように、ニュー・アルバムも完成。2015年5月発売予定のこの新作からのナンバーも、日本のステージで披露される筈だ。

来日を目前にして、キーボード奏者のロディ・ボッタムをキャッチ。彼の生の声と最新情報をお届けしよう。

日本では真っ正面からのライヴを披露する

●来日公演を前にして、バンドの状態はどのようなものでしょうか?

今はすごく良好な関係だよ。フェイス・ノー・モアというバンドの重要性を再認識したし、メンバー達と一緒に音楽をやることを楽しんでいるんだ。もう長いあいだ一緒にやってきた仲間だし、お互いのリズムは熟知している。夫婦と同じで、一度離婚しても、復縁したらアウンの呼吸が通じるものなんだ。まあ俺の場合、離婚してから元夫とは音信不通だけどな(苦笑)。それに歳を取って少しは賢くなったから、ただ自分の感情をぶつけ合うだけじゃなくて、お互いの求めるものを理解し、良い部分を受け入れあうことが出来るようになった。日本に行くのは本当に久しぶりだから、俺たち自身もすごく楽しみだよ。

●2009年に再結成ライヴを行って以来、単発の公演や比較的短期のツアーを何度も行ってきましたが、現在のバンドにとってはそれが やりやすいパターンでしょうか?

そうだね。1990年代は1年半ぶっ続けでワールド・ツアーをやるのが当たり前だった。若い頃は無我夢中で、前に進むしかなかったけど、歳をとったことで、自分の足下を見ることが出来るようになった。それでスケジュールに余裕を持つことを心がけているんだ。それにノンストップのツアーは体力的にも精神的にもきついからね。ベストなステージ・パフォーマンスを続けるには、少しずつオフを挟んだ方がいいんだ。

●ニュー・アルバムを作ろうと考えたのはいつ、何故だったのでしょうか?

1年ちょっと前かな、このままツアーを続けるんだったら昔の曲ばかりではなく、新曲をプレイしたいと考えるようになったんだ。バンドはうまく行っているし、きっと良いものが生まれると思った。とにかく新しいレコードを作ることが、バンド全員にとって“正しいこと”に思えたんだ。

●昨年ライヴで披露した新曲「マザーファッカー」「スーパーヒーロー」は日本でもプレイする予定ですか?

去年7月、ロンドンのハイド・パークでブラック・サバスとやったとき、それからポーランドのフェス、あと11月にサンフランシスコの『アミーバ・ミュージック』でやったインストア・ライヴでしか、その2曲はまだプレイしていないんだ。でも、すごく熱い反応が返ってきたし、アルバムに向けて自信を持つことが出来たよ。日本公演に向けてのリハーサルをして、どんな曲をプレイするか話し始めたところなんだ。「マザーファッカー」と「スーパーヒーロー」はきっと日本でもプレイするだろう。もしかしたらニュー・アルバムからあと2曲プレイするかも知れない。当日のサプライズにしておくよ。

●日本でのライヴはどんなものになるでしょうか?

強固でパワフルなショーになる。久しぶりの日本だし、日本のファンに今のフェイス・ノー・モアを見てもらいたいから、ノー・ギミックの、真っ正面からのライヴを披露するつもりだ。

ニュー・アルバムにはダークなムードがある

●ニュー・アルバムはもう完成したのですか?

ああ、レコーディングやミックスも済んで、ジャケットのアートワークも決まった。まだアルバム・タイトルは明かせないけど、5月にはリリース出来るよ。アメリカの発売日は5月19日の予定だ。不測の事態がなければね。(日本盤も発売予定。発売日は近日発表 / 追記:アメリカ時間2月10日に、タイトルが『SOL INVICTUS』になると発表された)

●アルバムはどんな音楽性になるでしょうか?

ダークな部分のあるアルバムだと思う。俺たちの原点…ファースト・アルバムよりさらに前の音楽性に通じるものだ。メロディや歌詞と同じぐらい、あるいはそれ以上、独自の“ムード”を重視しているんだ。ジャケットのアートワークも、それを反映してダークなムードのものだ。俺はピアノを多用して、メランコリックな雰囲気を出しているよ。アルバムで最も気に入っている曲のひとつが「マタドア」なんだ。すごくビューティフルな曲だよ。それから「ライズ・オブ・ザ・フォール」も良い曲だ。

●かつて「ア・スモール・ヴィクトリー」などで聴かれた東洋風のメロディを「スーパーヒーロー」でも聴くことが出来ますが、ニュー・アルバムの他の曲でもそんなタイプの曲はあるでしょうか?

元々はビリー(・グールド/ベース)がオリエンタルなスケールやメロディを好きだったんだ。ビル・ネルソンのレコードから影響を受けたものだよ。白黒のジャケットで、確か2枚組だったかな…タイトルをどうしても思い出せないんだ。俺は少年時代からビリーと友達だったし、同じレコードを聴いて育ったから、ビルのいたビ・バップ・デラックス、それからロキシー・ミュージックは好きだった。それでビルのソロ・アルバムもよく聴いていたんだ。ただ、新作でそういう要素を感じさせるのは「スーパーヒーロー」だけだと思う。

●あなたが弾くキーボードはヘヴィなロック・バンドにおいては異色なもので、特に『エンジェル・ダスト』(1992)ではシンセのサウンドが大きな個性となっていますが、どんなところからインスピレーションを得たのでしょうか?

あの時代は音楽でサンプリングが盛んになっていた時期で、俺たちもそれを取り入れようとしていた。当時俺が好きだったのがヤング・ゴッズだったんだ。サンプルの使い方が直感的でクレイジーで、すごく刺激を受けたよ。『ザ・リアル・シング』(1989)でストリングスやピアノの音を取り入れていたけど、さらにハーシュな音をフィーチュアして、一歩深めたかったんだ。

●フェイス・ノー・モアとしてアルバムを発表するのは約18年ぶりですが、アルバム作りの作業はどう異なりましたか?

1990年代とはアルバム作りという作業が変化したことを実感したよ。当時はバンド全員が集まって、お互いの顔を見ながら曲を書いていったけど、今ではすべてのやり取りをメールで出来てしまう。俺たちもいろんな打ち合わせは別々の都市で、メールでやった。レコーディングは全員でスタジオに集まってやったけどね。実際にプレイするのは、オールドスクールなやり方の方が向いているんだよ。

●新作では『アルバム・オブ・ジ・イヤー』(1997)でプレイしたジョン・ハドソンがギターを弾いていますが、彼のバンド内での役割はどのように変化しましたか?

基本的には同じだよ。フェイス・ノー・モアには音楽性の核となる部分があって、それはジョンが加入する以前から確立されていた。彼が参加したことによって、バンドのサウンドは大きく左右はされていない。でも彼は素晴らしいギタリストで、バンドのサウンドに新しい彩りと深みを与えてくれるんだ。彼とはミュージシャンとしても人間としてもうまくやっていける。

●2015年2月の来日公演にはサポート・アクトとして元マーズ・ヴォルタのオマー・ロドリゲス・ロペスとセドリック・ビクスラー・ザヴァラが結成したアンテマスクが出演しますが、彼らの音楽は聴いたことがありますか?

いや、まだないんだ。マーズ・ヴォルタはどこかで聴いたことがあるけど、彼らのショーを見ることを楽しみにしているよ。

●日本公演の後はオーストラリア、それからアメリカとヨーロッパでツアーを行うことが発表されていますが、その後フェイス・ノー・モアとしてはどんな活動を考えていますか?

おそらく南米をツアーすると思うけど、その後は観客のウケが良かった国でアンコール公演をやるかも知れない。

●今後もフェイス・ノー・モアとしてアルバムを作り続けるでしょうか?

まったくの白紙だ。まだニュー・アルバムが発売すらされていないし、次のアルバムのことなんて考えられないよ(苦笑)。ただ、今回のソングライティング・セッションで書いて、レコーディングされなかった新曲がたくさんあるから、それらをきちんと完成させてリリースしても良いと思う。

●インペリアル・ティーンとしての活動は考えていますか?

今はフェイス・ノー・モアとしての活動で忙しいから、ひと休みの状況だよ。でも解散したわけではないし、今後もスケジュールを見てライヴやちょっとしたレコーディングをしていくつもりだ。去年(2014年)7月にはマージ・レコーズの25周年コンサートに出演した。これからは長期のツアーよりも、意義のあるライヴを選んで出演していきたい。

●FAITH NO MORE / ANTEMASQUE来日公演

2015/2/17(火)・18(水)

東京 新木場STUDIO COAST

OPEN 18:00 / START 19:00

企画・制作・招聘:クリエイティブマン

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,200以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

山崎智之の最近の記事