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【来日直前インタビュー】PALLBEARERの陰鬱でヘヴィ、そしてプログレッシヴな世界

山崎智之音楽ライター
PALLBEARER / ポールベアラー

新世代ヘヴィ・メタルを代表するバンドとして注目を集めるPALLBEARER(ポールベアラー)の初来日公演が2015年6月に実現する。

還暦オーバーも珍しくない昨今のメタル界だが、2008年にアメリカのアーカンソーで結成された彼らは現代、そして未来のメタルを担う存在だ。陰鬱でヘヴィ、そしてプログレッシヴな世界観を描いたアルバム『SORROW AND EXTINCTION(日本未発売)』(2012)『FOUNDATIONS OF BURDEN/ファウンデーションズ・オブ・バーデン』(2014)は暗黒“ドゥーム・メタル”の域を超えた幅広い支持を得て、米『ローリング・ストーン』や『ピッチフォーク・メディア』などでも大絶賛されてきた。日本においてもファンは増殖中で、満を持しての初来日となる。

ベーシストのジョゼフ・D・ロウランドに、日本上陸直前インタビューを行った。

●PALLBEARERのライヴを、日本の音楽リスナーにどう説明しますか?

俺たちのショーは唯一無比の経験だ。カタルシスあふれる演奏、そして演奏曲目を毎晩変えることで、ファンにとって新鮮でエキサイティングなライヴにしようと心がけている。

●バンド名が“棺桶担ぎ人”で、音楽性にも悲劇的な部分があるため、PALLBEARERはしばしばフューネラル(葬式)ドゥームと呼ばれています。いわゆるフューネラル・ドゥームで影響を受けたバンドはいますか?

自分たちがフューネラル・ドゥーム・バンドだとは考えていないけど、スローなテンポやメロディ、ハーモニーの要素などは取り入れている。 MOURNFUL CONGREGATIONやSKEPTICISMのようなバンドは大好きだよ。

●PALLBEARERの歌詞では「闇をさまよう」「虚無の中を探し求める」「旅路が死で終わる」などのダークな題材がしばしば描かれていますが、歌詞のインスピレーションはどのようなところから得るのですか?

自分たちの日常からインスピレーションを得ることが多い。俺の場合、それに加えて自分の見た夢から触発されることがある。そうやって歌詞を書く人はけっこういると思うけど、我々の音楽の内容とフィーリングにピッタリだと思うね。

●PALLBEARERの音楽において、“死”はどの程度重要な要素でしょうか?

死と我々の音楽の関係は、年月を経るごとに変化してきた。ファースト・アルバムの頃は死を題材にすることが多かったけど、最近の作品では直接的・比喩的にも、より幅広い普遍的なテーマを描くようにしている。

●あなた達は自分たちが“ドゥーム・バンド”だと考えていますか?

時と場合によるね。自分たちがドゥームだと思うこともあるし、そう思えないこともある。我々の音楽性の原点にはドゥームがあるけど、常に探求を続けてきたし、サウンドの幅を広げてきたからね。

●サタンのことはどう思いますか?

俺たちは宗教には関わらないようにしているんだ。でもサタンはいい会話のネタになるね。

●『FOUNDATIONS OF BURDEN』は2作目のアルバムです。少なくない数のバンドが持ち曲をすべてファースト・アルバムに使ってしまって、2作目になると新曲を書き下ろさねばなりませんが、あなた達の場合はどうでしたか?

『ファウンデイションズ・オブ・バーデン』デイメア・レコーディングスDYMC227
『ファウンデイションズ・オブ・バーデン』デイメア・レコーディングスDYMC227

『FOUNDATIONS OF BURDEN』の大半の曲は、前作『SORROW AND EXTINCTION』を発表した後に書いたものだったよ。ただ例外は「Watcher In The Dark」で、前作のときに書いたけど、2枚目のアルバム用に取っておいたんだ。

●主にジョゼフとブレット・キャンベル(ヴォーカル/ギター)が曲を書いているそうですが、曲作りはどのようにしているのですか?

基本的に曲はそれぞれが書いて、それを持ち寄ってバンド全員で完成させている。曲ごとのソングライティングは主にこんな感じだ:

ジョゼフ:

Worlds Apart

The Ghost I Used to Be

Ashes

ブレット:

Foundations

Vanished

Watcher in the Dark 元は共作した曲だけど、ブレットが完成させた。

●『FOUNDATIONS OF BURDEN』は曲構成やヴォーカル・ハーモニー、ラウドなギター、ディープなベースなどの面において、前作よりビッグになったアルバムだといえます。そんな変化はどのようにして起こったのでしょうか?

作曲や演奏がより複雑になっていったのは、バンドとしての自然な変化だった。特に何かがあったわけではないよ。

●ジョゼフはクラシック音楽を聴いて育ったそうですが、どんな作曲家から影響を受けたでしょうか?PALLBEARERの音楽にはどのような形で反映されているでしょうか?

俺は人生を通じてエリック・サティ、そしてグレゴリオ・アレグリの音楽から触発を受けてきた。PALLBEARERの音楽にあるドラマ性、ダイナミクス、メロディは、彼らをはじめとするクラシック音楽を聴くことによって身についたといえるだろう。

●地元アーカンソーにはどんなドゥーム・バンドがいますか?

RWAKEを筆頭にDEADBIRD、SHITFIRE、SEAHAGなどがいるよ。

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●あなた達が影響を受けたバンドを挙げるとしたら?

BLACK SABBATH、PINK FLOYD、CAMEL、MY DYING BRIDE、SAINT VITUS、TYPE O NEGATIVE、ASIA、BOSTON…バンド名に色や地名が付いているものが多いね!

●プログレッシヴ・ロックのアルバムで影響を受けたものは?

KANSASの『SONG FOR AMERICA』、『MASQUE』。

KING CRIMSONの『IN THE COURT OF THE CRIMSON KING』『LARKS’TONGUES IN ASPIC』『RED』。

YESの『TALES FROM TOPOGRAPHIC OCEANS』『RELAYER』『DRAMA』『TALK』。

●おすすめのマイナー・プログレ・バンドはありますか?

挙げていったらキリがないよ!BEGGARS OPERA、NEURONIUM、ETHOS、1970年代中盤のMANFRED MANN’S EARTH BAND、CLEARLIGHT、ANYONE’S DAUGHTER、RIECHMANN、HOLDERLIN…

●MY DYING BRIDEやANATHEMAが好きだと以前語っていましたが、ANATHEMAやPARADISE LOSTのように、PALLBEARERもヘヴィな音楽から離れていく可能性はあるでしょうか?

ヘヴィな音楽から離れるかは判らないけど、インスピレーションやモーチベーションに変化が生じる可能性はあるだろうね。今とはまったく異なった音楽性に進んでいく可能性もないとはいえない。

●『FOUNDATIONS OF BURDEN』はビリー・アンダーソンがプロデュースを手がけましたが、彼との作業はどのようなものでしたか?

ビリーがプロデュースしたSLEEPやNEUROSIS、RED HOUSE PAINTERSの作品を聴いて、彼を起用することにしたんだ。彼はアーティストにアレンジを指図するタイプのプロデューサーではなく、作業をスムーズにしてくれるタイプなんだ。

●PALLBEARERがこれまで発表してきたアルバムのジャケットにはショーン・ウィリアムスが描いた死神キャラクターが登場しますが、彼にIRON MAIDENの“エディ”やMOTORHEADの“スナグルトゥース”、MEGADETHの“ヴィック・ラトルヘッド”などの名前はありますか?

俺たちは彼のことを“ザ・ガイド(案内人)”と呼んでいるよ。

●『SORROW AND EXTINCTION』は米『ピッチフォーク・メディア』で2012年の“年間ベスト・メタル・アルバム”に選出され、『FOUNDATIONS OF BURDEN』は2014年の同2位に選ばれました。『ピッチフォーク』で高評価を得たことで音楽リスナーの注目を集めた一方で、自動的に“オシャレさん”扱いされるリスクもありますが、それで困ったことはありますか?

別にないよ。“オシャレ”扱いされても大勢のリスナーに音楽を聴いてもらう方が、ネットの一部の閉鎖された掲示板とかで“カルト・バンド”扱いされるよりずっとマシだ。

●どんなバンドを好きな人に、PALLBEARERの音楽をおすすめしますか?

最近のバンドのことは正直知らないけど、BLACK SABBATHやPINK FLOYD、あるいは1990年代の『ピースヴィル』レーベルのバンドが好きだったら、きっとPALLBEARERの音楽を気に入るよ。

●PALLBEARERの2枚のアルバムは米『プロファウンド・ロア』レーベルから発表されましたが、同じレーベルのアーティストで気に入っているものは?

俺たちはPRURIENTの大ファンだし、BELL WITCH、DEAD CONGREGATION、CRUCIAMENTUMも最高だよ。正直、最近のメタルはあまり聴かないんだけど、彼らは別格だね。

●6月の来日公演後の予定を教えて下さい。

ヨーロッパ・ツアーを途中で切り上げて日本に行くから、ヨーロッパに戻って、残りの日程を回ることになる。それからアメリカでHIGH ON FIREとツアーをするよ。少しオフを取ったら、次のアルバムに取りかかる。今のところはシングルやスプリット作品の予定はないな。

●ところで2012年に限定リリースされたアナログ10インチ・シングル『PALLBEARER LIVE』を再発する予定はありませんか?

現時点ではないな。メンバー交替もあったし、当時の音源を再発するよりも、新しいライヴ音源を出したい。PALLBEARERは過去ではなく2015年、そして未来へと向かっていくバンドなんだ。

PALLBEARER Japan tour 2015 with direct support: NEPENTHES

6/24(水)大阪: 東心斎橋Conpass w/ 不幸-fucho-

open 18:30 / start 19:00

問い合わせ: Conpass 06-6243-1666

6/25(木)名古屋: 今池Huck Finn w/ ETERNAL ELYSIUM

open 18:30 / start 19:00

問い合わせ: Huck Finn 052-733-8347 / Jailhouse 052-936-6041

6/26(金)東京: 新大久保Earthdom w/ COFFINS, ZENOCIDE

open 18:30 / start 19:00

問い合わせ: Earthdom 03-3205-4469 / Citta’ Works 044-276-8841

Daymare Recordings

PALLBEARER公式サイト

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,200以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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