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【インタビュー前編】ハード・ロック伝説の貴公子ロビー・ヴァレンタイン、2017年1月来日

山崎智之音楽ライター
Robby Valentine

オランダの生んだハード・ロック伝説の貴公子、ロビー・ヴァレンタインが2017年1月に来日公演を行う。

18年ぶりとなる来日は東京・duo MUSIC EXCHANGEでの2デイズ。1月20日(金)は彼の原点であるクイーンの楽曲を演奏する“クイーン・トリビュート・ナイト”、21日(土)はキャリアを通じてのベスト・ナンバーと最新アルバム『ビザーロ・ワールド』から選曲した“ヴァレンタイン・ナイト”となる。

ドラマチックな美旋律とメロディで我々を魅了し続けるロビーがその近況とクイーンへの想い、その人生を貫く音楽への愛を語ったインタビュー前後編。天使はふたたび舞い降りる。

バラードからメタル、少しばかりヴォードヴィル。ダンスも出来るショー

●日本でライヴを行うのは本当に久しぶりですね。

ソロとしての日本公演は1996年以来なんだ。1999年にはヴァレンシアとのプロジェクト“V”でショーをやったけど、それから18年ぶりだよ。実現して嬉しいね。

●最新アルバム『ビザーロ・ワールド』はオランダで2015年に発表されましたが、近年どのような活動をしていたのですか?

2008年まではアルバムを作っていたんだ。その年にはベスト盤『Androgenius』もリリースした。それからずっと『ビザーロ・ワールド』に専念していたけど、発売されたのは2015年だったんだ。2012年に子供が生まれたから、父親という新しい役割をこなしていたんだよ。

●今回の来日公演では2日間、“クイーン・トリビュート・ナイト”とオリジナル楽曲中心の“ヴァレンタイン・ナイト”とそれぞれ異なった内容のステージを行うそうですが、ヨーロッパでも同様の構成でやっているのですか?

そうだね。ただそれは元々、意図したものではなかったんだ。2011年、僕はクイーンの曲を録音するようになったけど、それはあくまで1枚トリビュート・アルバムを作るためだった。その後、オランダのクイーン・ファンクラブから話をもらって数回ショーをやったら、今度はイギリスのクイーン・コンベンションでライヴをやることになったんだ。そうすることでインスピレーションを受けて、さらにクイーンの曲をレコーディングしたんだよ。合計25曲ぐらいレコーディングした。その中からピックアップしたのが『RV』のCD-2なんだ。オランダでは僕自身のライヴよりもクイーンへのトリビュート・ライヴをやる回数が多くて、僕自身の考えているキャリアとは違った形になってきている。クイーンの音楽を演るのは最高に楽しい。ただ、僕たちはカヴァー・バンドではないんだ。

●前回あなたが日本でライヴをやったときにまだ生まれていなかった若いファンもいると思いますが、ロビー・ヴァレンタインのショーとはどのようなものだと説明しますか?

基本はロック・ショーだけど、すごく幅が広い音楽スタイルなんだ。バラードからメタル、少しばかりヴォードヴィルもあるし、ダンス出来る曲もある。退屈することはないよ。ある曲が気に入らなくても、次の曲まで待てばいいんだからね!

●あなたのオリジナル曲もクイーンの曲も、幾重もヴォーカルをオーヴァーダブしたり、複雑なアレンジを施していますが、それをライヴで再現するのにどんな工夫をしていますか?

正直に認めるけど、バッキング・テープを使っているんだ。昔はそれは許されなかったから、バンド・メンバーを選ぶ際にはヴォーカルの能力も考慮して、何週間もかけてハーモニーの練習をした。その結果はいかに素晴らしくとも、僕自身が本当に求めるサウンドとは違ったんだ。20年前だったら「本物のライヴじゃない!インチキだ!」とバッシングされていただろうけど、今ではヴォーカル・ハーモニーでテープを使うことはさほど禁忌とされなくなった。(笑)。クイーンのトリビュート・アルバム用に自分のヴォーカルを何重にも重ねてハーモニーのトラックを作ったし、それを有効活用できる。僕と同じ声質のシンガーを8人雇って歌わせるのは現実的ではないよ。

● “テープ”という言葉を使っていますが、アナログ・テープを使用しているのですか?

あ、もちろんハードディスクだよ。僕は石器時代からの生き残りだからね(笑)、つい“テープ”と言ってしまうんだ。

Robby Valentine on stage
Robby Valentine on stage

クイーンが僕の人生を決定した

●クイーンを初めて聴いたときのことを覚えていますか?どんなところに魅力を感じたのですか?

初めてクイーンを聴いたのは5歳ぐらいの頃、「キラー・クイーン」だったと思う。あまりヒットしなかったけど、良い曲だと思った。でも「ボヘミアン・ラプソディ」は大ヒットして、テレビでもしょっちゅう流れていた。僕自身、本格的にハマったのはその時だったよ。メロディ、ヴォイス、ハーモニー、すべてがあった。美しいバラードであり、ヘヴィなロックで、オペラでもあったんだ。フレディ・マーキュリーの声は天国から降りてきたようだったよ。僕はまだ6、7歳だったけど、 これをやりたいと確信したんだ。当時既にピアノを学んでいて、フレディみたいに弾いて歌いたかった。それが僕の人生を決定したんだ。

●クイーンのライヴを見たことはありますか?

1978年のロッテルダム『アホイ』公演から1986年の『マジック・ツアー』まで、6回見たことがあるよ。本当に素晴らしかった。アダム・ランバートを迎えてのショーも 見たことがある。

●クイーン&アダム・ランバートにはファンから賛否両論があるようですが、あなたはどう思いますか?

もちろん最高だと思ったよ!実はクイーンがポール・ロジャースと一緒にやったのは正直ファンではなかったんだ。ブルージーな路線はあまり好きじゃないからね。アダム・ランバートはクイーンに入る前のファースト・アルバムから好きだったんだ。彼のステージ・パフォーマンスはクイーンとぴったりだと思うよ。

●オリジナルのクイーンはデン・ハーグやロッテルダム、ライデンでコンサートを行いましたが、一度もアムステルダムで公演を行わなかったのは何故でしょうか?

当時アムステルダムには数万人を収容できる規模の会場がなかったんだよ。今では幾つかあるけどね。クイーン&アダム・ランバートの公演はアムステルダムで見たよ。

●クイーンは1980年・1982年・1984年・1986年にライデンで公演を行っていますが、決して大都市ではないライデンで毎回ライヴを行っていたのは何故でしょうか?

ライデンの『フレンノールトハーレン Groenoordhallen』は大会場で、数万人の観客が入ることが出来たんだ。ただ、僕は好きではなかった。初めてクイーンを見たのはロッテルダムの『アホイ』で、2公演を見たんだ。その時は良かったけど、ライデンの会場はオールスタンディングで何も見えなくて、一緒に行った父に肩車してもらわなければならなかった。『アホイ』でやって欲しかったなぁ...と思ったのを覚えているよ。

●オランダでクイーンはどれぐらい人気があったのですか?

クイーンは凄い人気があったよ。1970年代後半、小学生だった頃には“クイーンvs ABBA”という対立構図があったんだ。男子はクイーン、女子はABBAという感じだった。1960年代の“ビートルズvsストーンズ”もあんな構図だったんじゃないかな。クイーンは超大物だった。

●私も1977年から1980年までアムステルダムに住んでいましたが、1977年から1978年にかけて最も大きく話題になっていた映画は『スター・ウォーズ』『サタデー・ナイト・フィーバー』『ABBAザ・ムービー』の3作だったと記憶しています。

そうだったね〔笑)。僕はABBAの音楽は大好きだったけど、映画は見に行かなかったんだ。ミート・ローフのアルバム『地獄のロック・ライダー』も1977年だったね。いい年だった。

Robbie Valentine on stage
Robbie Valentine on stage

クイーンで演奏するのが難しい曲?全部難しいよ!

●あなたの友人ヴァレンシアも2003年に『クイーン・トリビュート』を発表していますが、聴きましたか?

うん、聴いたよ。凄いバッキング・ヴォーカルのハーモニーや入り組んだアレンジで、「君はクレイジーだ!」と彼に言ったのを覚えている。その7年後、自分が同じことをやるとは考えてもいなかった(笑)!僕の場合、新曲を書いていなかったけど、何かレコーディングしたかったんだ。そんなときクイーンのファンクラブから声がかかって、ショーをやることになった。それでインスピレーションを得て、レコーディングすることにしたんだ。クイーン自身が最高のヴァージョンを録ってしまったのに、自分がやる必要なんてないだろ?と考えたりもする。まあ、趣味みたいなものだよ。学生だった頃、何かに夢中になるのと同じだ。ただ、クイーンの曲をレコーディングするのはこれで一段落という気もする。もっとオリジナルの音楽をやりたいんだ。とはいってもクイーンの音楽を自分でやってみたことは良かったと思うよ。

●最近ヴァレンシアはどうしていますか?連絡は取っていますか?

もう何年も話していないよ。以前はメールで連絡をしていたけど、何だか途絶えてしまったんだ。僕がオランダ、彼がスペインに住んでいるということもあって、顔を合わす機会もないからね。久しぶりに会いたいな。

●あなたのクイーン・カヴァーは原曲に忠実なものが多いですが、「'39」のロカビリー調の後半や「伝説のチャンピオン」の勇壮なエンディングなど、大幅にアレンジが加えられている箇所もありますね。

そうだね。完全コピーするのではなく、楽しみたかったんだ。日本盤には入っていないけれど、オランダ盤の『クイーン・トリビュート2』では「愛という名の欲望」をやっていて、エンディングをマリリン・マンソンみたいにアレンジしている。「名曲なのに台無しにしやがって!」みたいな反応も一部からあったよ。僕自身はすごく楽しんだけど、もしかしたらやるべきではなかったかもね!

●日本盤には「ウィ・ウィル・ロック・ユー」のエレクトロニック・ヴァージョンが入っていますね。

うん、実はあのヴァージョンはアダム・ランバートのファースト・アルバムからインスピレーションを得たんだ。そしたら3年後、彼がクイーンに加入したからビックリしたよ!

●クイーンの曲でカヴァーするのが難しかったのは?

全部難しかったよ!特に「ムスタファ」なんかは難しい。ドラマーにとっては悪夢だよ。でもライヴでやるのが楽しいんだ。奇妙なコード進行とリズムがパッと噴き出すのが最高なんだよ。「バイシクル・レース」と「ムスタファ」みたいなクレイジーなアイディアを生み出せるのはフレディ・マーキュリーぐらいなものだ。彼の狂気は本当に素晴らしいよ。

●フレディの曲で「懐かしのラヴァー・ボーイ」や「うつろな日曜日」はオールドファッションなミュージックホール・スタイルですが、彼らが影響を受けた音楽も掘り下げましたか?

いや、あまり掘り下げることはなかった。今から思えば不思議だよね。何故そうしなかったんだろう?だって子供の頃、「シーサイド・ランデヴー」や「うつろな日曜日」、「懐かしのラヴァー・ボーイ」、「ミリオネア・ワルツ」はお気に入りの曲だったんだ。1920年代から30年代の、ロックンロール以前のグッド・オールドファッションな音楽だよ。

後編ではロビーがさらに深く語るクイーン談義と彼を襲ったトラブル、そして大阪在住当時の思い出などに迫る。

画像

VALENTINE Japan Tour 2017 〜 Melodic Power Metal Night Vol.19 〜

【 Robby Valentine presents : a Tribute to Queen 】

ヴァレンタインの原点「クイーン」への【トリビュート・ナイト】

1月20日(金)渋谷・duo MUSIC EXCHANGE

開場18:00/開演19:00

【 Robby Valentine- Bizarro World 】

オリジナル楽曲を中心とした【ヴァレンタイン・ナイト】

1月21日(土)渋谷・duo MUSIC EXCHANGE

開場17:00/開演18:00

イベント公式サイト M&Iカンパニー

http://www.mandicompany.co.jp/Valentine.html

アーティスト公式サイト

http://www.robbyvalentine.nl/

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,200以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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