インスタグラマーという新しい職業が生まれつつある件について

ユーチューバー、プロブロガー、プロゲーマー…テクノロジーの進化は、ひと昔前では想像すら出来なかった新しい職業を生んでいる。

そんな新しい職業の一つとして、今注目を浴びているのがインスタグラマーだ。

彼らはインスタグラムで発信することで、多くのファンを獲得し、さらにそれを仕事に繋げている。インスタグラムで「食べている」人たちだ。

インスタグラマーには色んなタイプがいるが、今回は京都をメインテーマにした作品を発信し、世界中にファンを持つ保井崇志氏にインタビューを実施。インスタグラムをどのように活用し、仕事を生み出しているのか?彼のインスタグラム戦略から、インスタグラマーの「今」に迫った。

Q インスタグラムを始めたきっかけは?

そもそもの写真ですが、5年前に姪っ子が生まれたのがキッカケになって始めました。一眼レフを買って写真を撮り始めると、やっぱり人に見てわもらいたくなるんですね。はじめは写真ブログをやっていまして、その延長という感じでInstagramも始めました。2012年のことです。アプリをインストールしてサインアップしたら、まずは写真を見ることに夢中になりました。

当時の仕様で、その瞬間にInstagramで話題になっている写真をみられる「ポピュラー」というのがあったんですね。タイムリーに流れるニューヨークのストリートショット、香港の信じられない建物、スイスの壮大なネイチャーなどなど、ヒマさえあればInstagramをたちあげて写真を見ていました。

Q どうやってフォロワー数を増やしていったんですか?

スタート当初から意識していたことで、「写真を見る側にたつ」というのがありました。それはわたし自身が写真を見るのが好きだったので、「この写真を見る人はどう思うだろう?」そんな立場にたって写真を公開してきました。

写真を撮るときも、「海外旅行で日本に来ている外国人」という設定でのぞみました。そう考えると、いつも目にする日常風景が、特別なものに思えるんですよね。もちろん、キャプション(写真のタイトル)は英語で、グローバルに発信することでフォロワーは増えていきました。

京都に来ている外国人の写真が人気
京都に来ている外国人の写真が人気

Q いつのタイミングで会社を辞める決心をしましたか?

Instagramを通じて仲間が出来たり、発信力がついてくると、やりたいことがたくさん出てきました。タイミングはポイントではなくカーブを描く感じで、正直なところ、いまだに写真を仕事にしているという感覚はありません。

35歳になる2015年をひとつの区切りと考え、お金も時間も投資してチャレンジしてみようと決めました。RECOという写真のメディアをたちあげ、今まで以上に情熱をそそいでInstagramにもとりくんでいたら、9月頃に海外の有力メディアにたくさん取り上げられました。そのおかげで、今では毎日のように海外から撮影の依頼がきて、ベースの収入が確保できてしまいました。

さらに、10月の誕生日をキッカケに書いたブログ記事SNSで調子に乗って独立したフォトグラファーの1年目の現状がTwitterなど各SNSで爆発的に広まって、多くの方に読まれたこともあり、国内のオファーもたくさんいただいています。運が良いみたいです。

Q 動画の世界では数億稼ぐYouTuberが現れています。インスタグラムの世界はビジネスの視点でどうなっていくと思いますか?

Instagramには、直接ユーザーに広告収入が入るような仕組みがないので、単純にフォロワー数やLike数を増やしていけばいいというわけではありません。Instagramアカウントをただの広告枠ととらえて「この商品を紹介してください」といったビジネスモデルは、国内でも一部やっているところがありますが、来年の早い段階で飽和状態になると思います。

Instagramでの収入はフォトグラファー、クリエイター、インフルエンサーの3つの価値をどこまで高めていくかによります。その考えでいくと、フォロワー数やLike数(インフルエンサー)は1つの柱でしかないわけです。他の2つ(フォトグラファー、クリエイター)もあわせて、独自のスタイルを作り上げることが重要です。

その結果、自らのスタイルとうまく方向性の合う企業やブランドが見つかれば、大きな収入を得ることも可能だと思います。

Q 保井さんが交流するインスタグラマーの中で、この人すごい!という人を理由とともに教えてください。

Hiroです。世界中のクライアントからオファーが来る、現時点の日本国内では別格のようなInstagrammerです。

Instagramはコミュニティの側面もあって、ボストン、ニューヨーク、東京という経歴を持つ彼の存在は、村社会になってしまいがちな日本のコミュニティにも大きなインパクトを与えてくれました。世界中を旅して自由に写真を撮ってお金をもらって・・・、羨ましすぎる笑。わたしも早くそうなりたいです。

世界中を旅してInstagramで発信するHiro氏
世界中を旅してInstagramで発信するHiro氏

Q これからの保井さんの展望を教えてください。

海外には「フォトシュート」といって、フォトグラファーを雇って個人撮影する文化があります。先ほどお話しした「海外からの撮影依頼」というのがこれで、日本に旅行する際にフォトグラファーを雇って、たとえば「京都と一緒にじぶん自身を撮影してもらいたい」と依頼がくるわけです。

これを日本国内でも流行らせたいですね。ご両親へプレゼントしたり、一人旅が楽しくなったり、そんな風にカジュアルにフォトグラファーにアクセスしてもらえるような価値観が広まるといいなと思います。

あとは、RECOというメディアでいろいろやりたいです。フォトグラファーを縛り付けるのではなく、ゆるやかなエージェンシーの役割を担って、企業やブランドとのコラボもどんどんやりたい。さらに写真のイベントやワークショップを通じて、写真のコミュニティーとしても大きくしていきたいです。

保井氏のインタビューを通じて分かったことは、まずインスタグラム自体は稼ぐツールではないということだ。

なぜなら、YouTubeやブログと違い、インスタグラムはそれ自体でマネタイズする機能を持たない。

インスタグラムはあくまで自身をブランディングするためのツールであり、仕事はその後に付いてくるもの、というのが現状のようだ。

しかし、「インスタグラムはビジネスにならない」と早合点してしまうのは違う。むしろ、インスタグラムは「金の匂い」がしないからこそ、価値あるメディアなのだと思う。

スポンサー商品を動画でこれでもかと露出させ、スポンサーからガッツリと広告料をもらう「広告臭プンプン」のどこぞのYouTube動画は一時的にお金を稼ぐことはできると思うが、そんな動画はすぐに客が離れてしまう。

保井氏の語るように、発信者と広告主のビジョンが一致し、「作品」に近い、きわめて自然な形でコンテンツを発信できて初めて、ユーザーはそのコンテンツに感動し、スポンサーのブランディングに繋がるように思う。

それは決して簡単なことではないが、安易なネイティヴ広告はメディアを「焼き畑」にしてしまうことを肝に銘じて、ユーザー・クリエイター・スポンサーの幸せな三角関係を目指すことがメディア業界に携わる者たちは日々仕事していかなければいけないと、インタビューを通じて再確認した。