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安保法案「合憲」学者は「徴兵制も合憲」と誤解 毎日新聞がおわび

楊井人文弁護士
徴兵制を導入しているイスラエル軍の女性兵士(from Flickr)

【GoHooレポート8月10日】毎日新聞は8月2日付朝刊の社説「視点 安保転換を問う 徴兵制/解釈改憲が広げる不安」の中で、「集団的自衛権の行使容認は合憲と言う西修・駒沢大名誉教授や百地章・日本大教授は、徴兵制も合憲との考えを示す」と記したのは誤りだったとして、おわび記事を掲載した(詳細はGoHooサイトも参照)。

毎日新聞2015年8月8日付朝刊5面
毎日新聞2015年8月8日付朝刊5面

おわび記事では、両氏が、徴兵制について憲法18条が禁止する「意に反する苦役」に該当するとの政府解釈に疑問や反対の考えを示していることから、徴兵制の合憲論に立っていると誤解したと説明。「当方の思い込みと事実確認の基本動作を欠いたことにより、ご迷惑をおかけしました」と陳謝した。毎日新聞は時々、論説委員個人の署名入りの社説「視点」を掲載しており、今回の社説は佐藤千矢子論説委員の署名入りだった。記事は毎日新聞のニュースサイトにも掲載されていたが、こちらはおわびや訂正の記載はなく、上書き修正(該当部分を削除)されていた。

西教授は6月22日の衆議院の委員会で参考人として陳述した際、徴兵制に関する自身の立場は「無用論、不要論、非現実論」であると説明。民主党内の旧民社党議員を中心とした「創憲会議」の憲法改正案(2005年10月公表)が明文で徴兵制の禁止規定を置いていることに言及し、「これが私の現在の徴兵制論であります」と明言していた。

他方、百地教授も6月19日の日本記者クラブの記者会見で、「現在の憲法下で徴兵制は憲法違反であり、将来も考えていない。解釈変更も当然、憲法の枠を超え、これはあり得ない」と述べていた(両氏の発言詳細はGoHooに掲載)。

弁護士

慶應義塾大学総合政策学部卒業後、産経新聞記者を経て、2008年、弁護士登録。2012年より誤報検証サイトGoHooを運営(〜2019年)。2017年、ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)発起人、事務局長兼理事を約6年務めた。2018年、共著『ファクトチェックとは何か』出版(尾崎行雄記念財団ブックオブイヤー)。2023年、Yahoo!ニュース個人「10周年オーサースピリット賞」受賞。現在、ニュースレター「楊井人文のニュースの読み方」配信中。ベリーベスト法律事務所弁護士、日本公共利益研究所主任研究員。

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