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都知事疑惑 「民進党のアドバイザーに郷原氏」は誤報

楊井人文弁護士
産経ニュースサイト2016年5月31日掲載(6月4日正午閲覧確認済)

【GoHooレポート6月4日】産経新聞は5月31日付朝刊社会面に、舛添要一東京都知事の政治資金疑惑に関する記事を掲載した。それに関連して「民進調査チームも元検事起用 アドバイザーに郷原弁護士」との見出しで、民進党の都議による調査チームが元検事の郷原信郎弁護士をアドバイザーに選任したと報じた。これに対し、郷原氏は「調査チームのアドバイザー」という話は全くなかったと抗議し、訂正を要求。産経は翌日朝刊で「民進チームに助言 郷原氏が要請固辞」と続報した。産経はニュースサイトにも続報記事を載せたが、当初の「『ヤメ検』vs『ヤメ検』舛添知事の疑惑調査へ 民進チームに郷原氏」と題する記事は放置されている(6月4日午後5時現在)。

産経新聞2016年5月31日付朝刊第2社会面(赤の囲みが当初の記事)
産経新聞2016年5月31日付朝刊第2社会面(赤の囲みが当初の記事)
産経新聞2016年6月1日付朝刊第2社会面(赤の囲みが続報の記事)
産経新聞2016年6月1日付朝刊第2社会面(赤の囲みが続報の記事)

郷原氏は、6月1日配信したメールマガジン(全文は後掲)で、産経の記事は「事実無根」と題し、「民進党都議会議員から、舛添氏問題についての意見交換の申し入れがあり、ブログ等で述べてきたことについて改めて話が聞きたいということであればお話しをしてもよいと、日程調整を行っていただけで、『調査チームのアドバイザー』という話は全くありませんでした」と指摘。同調査チームに関わっている石川良一都議は、日本報道検証機構の取材に対し、郷原氏への説明が不十分で行き違いがあったとの認識を示した。

ただ、郷原氏によると、産経から記事掲載前に確認取材があり、「調査チームのアドバイザー就任の依頼は受けていない。民進党都議から舛添氏のことで意見交換をしたいという申入れがあったので、受けることにして日程調整をしている」と回答していたのに、「そのコメントを無視して、あのような記事を掲載した」という。そのため、産経側に抗議して訂正記事を要求したが、何とか訂正以外の方法で対応させてもらえないかと言われ、結局「要請を固辞」という記事になったという。こうした経緯について、当機構は産経新聞に確認と見解を求めたが、回答は得られなかった。

「アドバイザー選任」記事は、第2社会面の中央付近に見出し3段で、郷原氏の顔写真とともに掲載されていた。しかし、翌日の「要請固辞」の記事は、同じ第2社会面だが、目立たない位置に見出し1段の扱いだった。当初の記事が訂正されていないため、Yahoo!ニュースなど大手ポータルサイトも訂正していない。

郷原弁護士のメールマガジン全文

[Compliance Communication] (2016年6月1日号)   第125号

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「民進党舛添氏調査チームのアドバイザーに選任」は事実無根

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昨日、産経新聞にて、「舛添知事、政治資金 民進調査チームも元検事起用 アドバイザーに郷原弁護士」として、民進党の都議による調査チームが、当事務所代表郷原信郎をアドバイザーに選任したと報じられましたが、そのような事実はありません。民進党都議会議員から、舛添氏問題についての意見交換の申し入れがあり、ブログ等で述べてきたことについて改めて話が聞きたいということであればお話しをしてもよいと、日程調整を行っていただけで、「調査チームのアドバイザー」という話は全くありませんでした。産経新聞にもその旨説明をして抗議したところ、昨夜「郷原氏、民進チームへの助言を固辞」との記事が出されました。なお、そのような報道がなされたことから、意見交換もお断りしました。

http://www.sankei.com/affairs/news/160531/afr1605310052-n1.html

今回の動きについて、郷原は以下コメントしております。

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衆議院予算委員会公聴会の際もそうですが、私は、あくまで、専門家、実務家として客観的立場で発言しているのに、それを、野党側のパフォーマンスに使おうとするのは心外です。

甘利問題についても、舛添問題についても、今後も、ブログ等で、これまでと同様のスタンスで「斬り」まくっていきたいと思います。

(以上、郷原氏の承諾を得て転載)

弁護士

慶應義塾大学総合政策学部卒業後、産経新聞記者を経て、2008年、弁護士登録。2012年より誤報検証サイトGoHooを運営(〜2019年)。2017年、ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)発起人、事務局長兼理事を約6年務めた。2018年、共著『ファクトチェックとは何か』出版(尾崎行雄記念財団ブックオブイヤー)。2023年、Yahoo!ニュース個人「10周年オーサースピリット賞」受賞。現在、ニュースレター「楊井人文のニュースの読み方」配信中。ベリーベスト法律事務所弁護士、日本公共利益研究所主任研究員。

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