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怖いのは「死の組」だけじゃない。「酷暑マッチ」「気温差移動」という難敵

矢内由美子サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター
W杯ブラジル大会決勝会場のマラカナン・スタジアム

日本は北中米と同じ第3ポットに

2014年6月12日にサンパウロで開幕し、7月13日にリオデジャネイロで決勝戦が行われるFIFAワールドカップ・ブラジル大会の組み合わせ抽選会は、ブラジル時間12月6日午後1時(日本時間7日午前1時)より、行われる。

開催12都市
開催12都市

国際サッカー連盟(FIFA)は現地時間の3日、組み合わせ抽選会に向けた出場32カ国のポット分けを以下のように発表した。

●組み合わせ抽選会(ドロー)のポット分け(2013年10月のFIFA世界ランキングによる)

・ポット1:ブラジル(開催国、11位)、スペイン(1位)、ドイツ(2位)、アルゼンチン(3位)、コロンビア(4位)、ベルギー(5位)、ウルグアイ(6位)、スイス(7位)

・ポット2:チリ(12位)、コートジボワール(17位)、エクアドル(22位)、ガーナ(23位)、アルジェリア(32位)、ナイジェリア(33位)、カメルーン(59位)

・ポット3:アメリカ(13位)、メキシコ(24位)、コスタリカ(31位)、ホンジュラス(34位)、日本(44位)、イラン(49位)、韓国(56位)、オーストラリア(57位)

・ポット4:オランダ(8位)、イタリア(9位)、イングランド(10位)、ポルトガル(14位)、ギリシャ(15位)、ボスニア・ヘルツェゴビナ(16位)、クロアチア(18位)、ロシア(19位)、フランス(21位)

ドローではまず、9カ国が入っているポット4から抽選で1カ国が選ばれ、現在7カ国になっているポット2に廻り、4ポットをすべて8カ国にする。シード国であるポット1の8カ国はA組~H組の1番に入り、ポット2~4の残り24カ国はA組~H組の2番~4番にランダムに入る。また、同ポットの国同士は同じ組にはならない。

「死の組」が発生するのか? 日本はどこと対戦するのか?

すでに多くのメディアが報じているように、今回も南アフリカ大会と同様にFIFAランキング上位が自動的にシード国になり、ポット1に入った。これのよって、前回準優勝国のオランダや06年ドイツ大会優勝国のイタリアといった強豪がポット4に入ることになったことも周知の通り。そして、「ブラジルとオランダ」や「スペインとイタリア」などのように優勝候補が1つのグループに同居する「死の組」が続出するかもしれないということが注目されている。

日本はグループリーグでどの国と対戦するのか。

5大会連続でワールドカップ出場を果たし、上位進出という目標を掲げる立場にもなった日本だが、何はともあれまずはグループリーグを突破するということが最初の目標になるということは変わらない。やはり対戦国がどこになるのかは最大の関心事だ。

だが、今回のブラジル大会には「対戦国」だけではなく、手強い「敵」が他にもいる。暑さと気温差移動、そして移動距離だ。

30度超えも懸念されるマナウス

朱色が酷暑が懸念される試合
朱色が酷暑が懸念される試合

暑さに関しては、FIFAのブラッター会長が「キックオフ時間の再考」を視野に入れて議論すると発言したことからも明らかなように、赤道に近いブラジル北部の都市で午後1時から行われる試合では気温30度以上に達する場合が想定され、選手が危険にさらされる可能性がある。

FIFAが発表している資料によれば、北部のマナウスではこの時期の平均気温は約30度。フォルタレザ、ナタール、レシフェでも26度前後で、湿度は80%以上に達する。今年6月にフォルタレザで行われたコンフェデレーションズ杯準決勝スペイン対イタリアは約30度の猛暑の日中に行われ、延長を戦った選手たちの疲弊は激しかった。

表の通り、6月の平均気温が25度以上の都市で日中に行われる試合はグループリーグだけで10試合ある。とりわけ、アマゾン地域にあるマナウスの暑さは厳しいことが予想される。

欧州でプレーする選手が多くなったとはいえ、日本人の暑さへの耐性は高いと言えるが、ザックジャパンのサッカーは運動量で相手を上回ることが勝利への大前提となるものであることを考えると、A3やD4、G4に入って気温の高い都市での試合が続くと体力の消耗が懸念される。

気温15度以下→30度超え…過酷な気温差

水色は気温の低い都市での試合
水色は気温の低い都市での試合

一方で、環境面の敵はこれまた暑さだけではない。気温差の大きい移動もコンディション維持を難しくさせる危険性がある。

水色を塗った都市の6月の平均気温は15度以下。東京で言えば4月ごろに相当する気温であり、朝晩は10度程度まで冷える場合もある。プレー中は問題ないだろうが、生活時間帯には防寒対策が必要となる気温だ。E4に入れば、15度以下のところで2試合をこなした後に30度超えのマナウスでの第3戦が待っている。これはかなり厳しい。

ブラジルの場合、単純に移動時間が長いことも看過できない要素である。試合毎の移動距離はベースキャンプ地をどこにするかにもよるが、FIFA発表資料によると、サンパウロからマナウスまでのチャーター機使用による所要時間は、4時間09分。ポルトアレグレからマナウスへの移動は4時間49分と記載されている。東京から香港、あるいはグアムあたりまで行ってしまう遠さだ。

現時点ではどこに入るのか予測がつかないグループ分け。できれば気温や移動など環境面の不安要素の少ない位置に入ってほしいと祈るばかりだ。

チャーター機でも移動に4時間

なお、ブラジルのバイーア州サルバドールで行われるワールドカップ組み合わせ抽選会は、日本時間12月7日午前0時からNHK BS1で、そして午前1時45分よりNHK総合で生中継される予定になっている。

サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター

北海道大学卒業後、スポーツ新聞記者を経て、06年からフリーのスポーツライターとして取材活動を始める。サッカー日本代表、Jリーグのほか、体操、スピードスケートなど五輪種目を取材。AJPS(日本スポーツプレス協会)会員。スポーツグラフィックナンバー「Olympic Road」コラム連載中。

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