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U-22日本代表で進化を示すMF遠藤航 リオ五輪死守へ、期待したい東アジア杯招集

矢内由美子サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター
リオ五輪切符獲得に期待

■U-22コスタリカ戦で一段階上の姿を披露

7月1日に仙台で行われた国際親善試合で、来年のリオデジャネイロ五輪を目指すU-22日本代表が2-0でU-22コスタリカ代表に勝った。

試合は前半36分にFW野津田岳人(広島)が先制し、後半32分に途中出場のFW金森健志(福岡)が追加点。守っては5試合連続無失点と、攻守ともに中身のあるプレーぶりだった。

昨秋の仁川アジア大会や3月の五輪1次予選に比べ、チーム全体が攻撃のスピードや球際の激しさ、攻守の切り替え、システム変更への対応力などで成長を見せたのは大きな収穫だ。

中でも際立っていたのはボランチとアンカーでプレーしたキャプテンの遠藤航(湘南)だ。前半6分、相手と激しいボディコンタクトをしながらボールを奪うと、くるりとターンして左足スルーパス。俊足のFW浅野拓磨(広島)の動きだしとスピードにピッタリ合わせたパスで決定機を演出した。

戦術眼を見せたのは先制の場面。2枚のセンターバックの間の位置から左サイドを駆け上がったSB亀川諒史(福岡)へロングパス。亀川のクロスから野津田が鮮やかに決めた。

「相手のプレッシャーの掛け方を見たときに、3バックみたいな形を作ることでサイドにスペースができると思っていた」と冷静に分析する。

以前から「DFの裏に付けるというところは自分の良さでもある」と自負しているように、サイドチェンジのロングフィード一本でチャンスをつくるシーンもあった。手倉森誠監督は、「(遠藤は)これまでは守備のオーガナイザーという役割だったが、きょうはボールを奪ってから攻撃に転じるスイッチ役を果たした。レベルを上げてチームに絡んでくれた」と目を細めていた。

■最終予選までもう試合がない!

U-22コスタリカ代表のファジャス監督によれば、今回のチームはトゥーロン国際に出ていた選手らを含めて主力選手のうち7人を欠いているとのこと。それに加えて移動の疲労を考慮すれば割引材料は当然ある。

しかしながら、遠藤が「1次予選の相手(マカオ、ベトナム、マレーシア)より強かった。球際もそうだし、ボールを動かす力もあった。後半になればミスが出たり(動きが)落ちてくるところは予想していたが、最終予選に向けて良い相手だったと思う」と言ったように、手倉森ジャパンの『現在地』を知るには格好の相手だったということは言える。

ところが、だ。問題はU-22日本代表の年内予定試合がこれですべて終わってしまったことだ。国内合宿での練習試合や年末のカタール遠征および現地での練習試合などが検討されているというが、現時点では確定していない。

リオ五輪のアジア枠は3。来年1月に16カ国が参加してカタールで開催されるU-23アジア選手権で上位3位以内に入ることが条件となっている。これは前回のロンドン五輪の3・5枠より少なく、A代表のW杯出場枠4・5と比べるとその厳しさは一目瞭然だ。

手倉森ジャパンは昨秋の仁川アジア大会でベスト8に終わっており、単純に考えればその時点から大幅な上積みがなされていなければリオ五輪切符をつかむことは困難だろう。

そんな中、U-22日本代表としての活動予定がなくとも大幅な強化を必要とする状況で期待したいのが、8月1日から9日まで中国・武漢で開催される東アジア杯でA代表に招集され、国際経験を積むということだ。

■東アジア杯を戦略的に使うという考え

国際Aマッチデー期間外に開催される東アジア杯には欧州組は参加できないため、国内組のみで戦うことになる。ハリルホジッチ監督は6月のW杯予選で13人の欧州組を招集。さらにドイツ・マインツへの移籍が決まっている武藤嘉紀も今回は不在ということで、多くの新戦力が招集されることが予想される。

U―22日本代表メンバーのなかでハリルホジッチ監督が国内合宿などに招集したことのある選手としては植田直通(鹿島)、岩波拓也(神戸)、浅野拓磨(広島)の3選手がいるが、ここはぜひ、彼らに加えて遠藤を招集し、戦略的にU-22日本代表の強化につなげてほしい。遠藤が所属の湘南で見せている縦に速い攻撃や球際の強さ、心身ともタフな姿、ペナルティーエリア内での勝負強さはハリルジャパンの基準にもかなっているように見える。

もちろん、東アジア杯でもまれてほしいと思うのは遠藤に限ったことではない。このチームの中心選手であり、なおかつ所属チームでレギュラーを獲っているMF大島僚太(川崎F)やGK櫛引政敏(清水)も候補に挙がっていい。さらにはU-22日本代表にも入っていない若手の登用も大歓迎だ。ハリルホジッチ監督は就任会見で「日本のフットボールを国全体で盛り上げていきたい」と話していた。日本人は大変な“五輪好き”。指揮官の目指すところにもつながっていくに違いない。

コスタリカとの試合後、遠藤はこう言った。

「リオ五輪世代での活動があまり多くないというのもあるし、僕らの世代からA代表に入る選手が多くなることが、自分たちのチーム(U-22日本代表)の力を付けるために一番いいこと。A代表というのはみんな意識していると思うし、僕個人としてもできるだけ早く、リオ五輪の前に入って経験して戦っていきたい。東アジア杯はもちろん意識している」

遠藤の心の中には、A代表入りして活躍したいという思いだけではなく、この世代の中心として、96年アトランタ五輪以来、5大会連続で突破してきたアジア予選を勝ち抜き、6大会連続となるリオ五輪出場を死守したいとの責任感がある。

2013年夏、ザックジャパンが戦った東アジア杯。国内組だけで臨んだこの大会で日本は優勝を果たし、柿谷曜一朗や山口蛍といった新戦力が発掘され、ブラジルW杯行きを果たした。2年前の盛り上がりをもう一度。若き選手たちが経験を積むことで五輪切符につながることを期待する。

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サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター

北海道大学卒業後、スポーツ新聞記者を経て、06年からフリーのスポーツライターとして取材活動を始める。サッカー日本代表、Jリーグのほか、体操、スピードスケートなど五輪種目を取材。AJPS(日本スポーツプレス協会)会員。スポーツグラフィックナンバー「Olympic Road」コラム連載中。

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