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【バスケットボール】渡嘉敷来夢 リオ五輪を見据えた2季目のWNBA

矢内由美子サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター
日本の力 渡嘉敷来夢(写真:アフロスポーツ)

WNBA(米女子プロバスケットボールリーグ)のシアトル・ストームに所属する渡嘉敷来夢が、5月15日に行われたロサンゼルス・スパークス戦で、自身2シーズン目の開幕戦を戦った。

8月にリオデジャネイロ五輪を控える女子日本代表アカツキジャパンのエースである渡嘉敷は、WNBAが五輪のため中断期間に入る7月下旬のタイミングで日本チームと合流する予定だ。

それまでの2カ月間は日本のメンバーとコンビネーションを合わせる練習はできないが、現在五輪5連覇中の米国をはじめ、世界のトップクラスの選手が集結しているリーグで個を磨くことで、アカツキジャパンに力を与えようとしている。

リオ五輪で旋風を巻き起こし、あわよくばメダルを狙おうという日本。渡嘉敷は最高峰リーグでの2年目のシーズンに、どのような成長を遂げてくれるだろうか。

■「パワーをつけたい。楽しみでしょうがない」

渡嘉敷来夢
渡嘉敷来夢

ルーキーイヤーだった昨シーズンの渡嘉敷は出場30試合(先発16試合)。1試合平均20・6分出場、8・2得点、3・3リバウンドという成績で、ルーキーベスト5に選ばれた。

身長193センチメートルは日本では最長身レベルだが、WNBAでは高さで勝負をするサイズではない。それでいてのルーキーベスト5選出は、新しいチームで与えられた新たな役割をしっかり果したということを示すものである。

日本ではインサイドで他を寄せ付けないプレーをしていた渡嘉敷が、よりレベルの高いリーグにおいて新たなプレーをしながらチーム戦術をまっとうしたことは称賛に値する。今季はルーキーシーズンでのプレーの評価とさらなる成長を期待され、新たに3年契約を結んだ。

4月下旬、日本を出発する前にはこのように語っていた。

「去年はWNBAに行ったことで、プレー的にも幅が広がった。経験値も上がった。それまでは自分より大きい選手や身体の強い選手がたくさんいる中でバスケットをしたことがなかったので、そういう中でのバスケットの見方、やり方、点の取り方というところの知識は上がったと思う」

具体的には、日本では求められなかったアウトサイドのシュートを身につけたことが大きかった。さらに2年目の今季は「パワーをつけたい」という目標を掲げ、「強い選手とマッチアップするのも楽しみ。同じポジションのドラフト1位選手も入るので、競争していくのも楽しみ」と話していた。

■ドラフト1位ルーキーFWブレアナ・スチュワートとのポジション争い

同じポジションのドラフト1位選手とは、コネティカット大で女子NCAAトーナメント4連覇を達成し、4月のWNBAドラフトで全体1位指名されたブレアナ・スチュワートだ。2014年女子バスケットボール世界選手権ではチーム最年少、ただ1人の大学生として米国代表入りし、金メダルに輝いている。

シアトルの公式サイトに掲載されている身長6フィート4インチ(193センチメートル)というサイズは、渡嘉敷の6フィート3インチ(191センチメートル)より若干大きく、ポジションは同じフォワードだ。(※渡嘉敷の日本バスケットボール協会発表の登録身長は193センチメートル)

スチュワートはロサンゼルスとの開幕戦に先発出場し、33分40秒のプレータイム。13本中9本のフィールドシュートを決め、フリースローでも5得点。チーム最多の23得点をマークした。リバウンドは6本(オフェンス3、ディフェンス3)だった。さすがとも言うべき数字である。

一方で、途中出場の渡嘉敷は11分間のプレーで1得点、5リバウンド(オフェンス1、ディフェンス4)だった。(チームは66―96で敗戦)

スチュワートとの比較になれば当然ながら分は悪いが、プレータイムのわりにリバウンドが取れていたこと、特にディフェンスリバウンドを4本取ったのは目に止まる数字だ。

■五輪3連覇のチームメート、スー・バードの言葉

シアトルの五輪中断前の最後の試合は、7月22日のミネソタ・リンクス戦。渡嘉敷がアカツキジャパンに合流するのはその後になる見込みだが、短期間にチームにアジャストするということについては、昨年のアジア選手権前に一度経験済みであり、ゲーム体力さえキープしていれば問題はないだろう。

今後はどれだけ先発でプレーできるか、どれだけプレータイムを確保していくかが大切になっていく。そのためにもまずは「出たときにできる限りのプレーをする」という高いモチベーションでトレーニングを続けていくことが重要になる。ちなみに7月22日までにWNBA公式戦は26試合ある。

昨季同様、今季もチームメートとしてプレーする五輪3大会連続金メダル獲得中の米国代表のベテランPGスー・バードには「五輪は絶対に出るべき場所よ」と言われている。日本代表の内海知秀ヘッドコーチは「アメリカで技術的にも精神的にも強いものを持ち、さらに大きくなってもらいたい」と期待を寄せる。

■チーム内の米国代表選手とのリオでの対戦に期待

渡嘉敷にとって初めての五輪まであと2カ月半。スー・バード、ブレアナ・スチュワートというトップレベルの選手と日々の練習時間をともにすることも含め、すべてがリオにつながっていく。

「五輪では米国と対戦したいですね」と渡嘉敷は話していた。日本と米国はリオ五輪グループリーグでは別の組に入っており、実現するには決勝トーナメントに進出しなければならない。メダル獲得という大目標を胸の奥で燃やしながら、そして五輪舞台で米国でのチームメートたちとマッチアップするときを思い描きながらのWNBA2シーズン目。楽しみも期待も尽きない。

昨年のアジア選手権メンバー
昨年のアジア選手権メンバー
サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター

北海道大学卒業後、スポーツ新聞記者を経て、06年からフリーのスポーツライターとして取材活動を始める。サッカー日本代表、Jリーグのほか、体操、スピードスケートなど五輪種目を取材。AJPS(日本スポーツプレス協会)会員。スポーツグラフィックナンバー「Olympic Road」コラム連載中。

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