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ラーメン業界が仕掛けるバレンタイン商戦とは?

山路力也フードジャーナリスト
麺屋武蔵が放つ「つけガーナ2016」はロッテとコラボレーションしたチョコつけ麺。

ラーメン業界がバレンタイン商戦に参戦

2月14日はバレンタインデー。その歴史を紐解けば、遥かローマ帝国時代にまで遡ると言われているが、私たち日本人が意識するようになったのは戦後のこと。さらに「女性が好きな男性にチョコレートを贈って愛の告白をする」というスタイルは日本独特のもので、一説には日本のチョコレートメーカーやデパートなどの販売戦略の一環だったとも言われている。

今では意中の男性だけではなく、友人や同僚などにもチョコを渡す「義理チョコ」や、男性に対してだけではなく女性同士で渡し合う「友チョコ」なども一般的になり、さらにはチョコレートに限らずお菓子であったりプレゼントを渡すようにもなってきた。時代に合った形で変わっていくのが文化であり風習であるならば、そこに何が出て来ても驚く必要はないのだが、今ラーメン業界がバレンタイン商戦に参入していると聞けば、驚く人もいるのではないだろうか。

常に時代のトレンドに対して敏感に反応するのがラーメン業界。そして自由な発想によって創意工夫が施されたメニューが続々と生み出されているのも、この業界の特徴的なところだ。ラーメン業界では夏の冷やしメニューなどはもちろんのこと、以前よりお正月やクリスマスなどにそのイベントのイメージに沿った形の創作ラーメンを提供する文化があった。バレンタインデーのスタイルの変化と自由なラーメン文化が見事に合致して、ここ数年「バレンタインラーメン」を出す店が増えているのだ。

調味料として優れているチョコレート

その中でも嚆矢ともいえるのが、新宿に本店を構える人気店「麺屋武蔵」である。代表取締役社長の矢都木二郎氏がチョコレートの可能性に興味を持ったのは2008年のこと。「チョコレートには甘味、香り、コクがあり、調味料として非常に優れていると感じた」と語る矢都木さんは、同じ新宿に本社がある菓子メーカー「ロッテ」に協力を仰ぎ、ロッテのガーナチョコレートを使った味噌ラーメンを提供し好評を得た。以来、麺屋武蔵では毎年バレンタインシーズンになると、チョコレートを使った創作ラーメンを提供し人気を博し続けている。

麺屋武蔵の「つけガーナ2016」。チョコとつけ麺の絶妙なマッチング。
麺屋武蔵の「つけガーナ2016」。チョコとつけ麺の絶妙なマッチング。

今年は「つけガーナ2016」(1,000円)と銘打たれた「チョコレートつけ麺」を提供中(新宿総本店・蒲田店で一日20食限定、2/14まで)。牛コンソメスープに大根や人参など4種類の野菜を使ったスムージーを合わせ、そこにロッテのガーナチョコレートを一枚分溶かしこんだつけダレ。麺には同じくロッテのガーナチョコレートを燻製パウダーにしたものを振りかけてある。チョコレートの持つ甘さや香りは生かしつつも、魚粉やウスターソースなどでつけ麺としての絶妙なバランスを生み出しているのは、さすが麺屋武蔵といったところだろう。

SNSを効果的に活用したバレンタイン戦略

博多一風堂の「バレンタインメッセージ海苔」にはユニークな18種類のメッセージが。
博多一風堂の「バレンタインメッセージ海苔」にはユニークな18種類のメッセージが。

一方、福岡に拠点を持ち日本はもちろん海外にも多く店舗を構える「博多一風堂」は、「バレンタインメッセージ海苔」を無料でトッピングするサービスを展開している(国内39店舗、2/14まで)。「はじめてのキスは、とんこつの味がした」「一生に一度くらい、バリカタのような恋がしたい」など18種類のユニークな愛のメッセージが書かれた海苔が無料でトッピングされるサービスで、注目すべきなのは特に若い世代や女性を中心に話題を集めている点だ。

メッセージの下に書かれているのは、SNSサービス「Instagram」や「twitter」でお馴染みの「ハッシュタグ」。前述したSNS上ではサービスが始まった8日以来、メッセージ海苔の乗ったラーメンの写真が数多く投稿、共有されて「一風堂」の名前と共に拡散されている。また、#ippudoのハッシュタグをつけた写真は、自動的に博多一風堂のホームページ上でも閲覧することが出来るようになっている。バレンタインデーという既に浸透しているイベントをフックに、SNS時代のスマートフォン世代をターゲットにした興味深い広告戦略といえるだろう。

いかに自店のファンを増やし、来店動機を増やしていくかが、ラーメン店のみらず飲食店にとっては不可欠な課題である。限定メニューを出したりユニークなトッピングをサービスすることで、新しいファンを獲得し固定客の来店頻度も上げる効果がある。一見違和感を覚える「バレンタインデーとラーメン」という組み合わせだが、その「違和感」こそが話題になり注目を集める鍵になる。ラーメン業界のバレンタインデーへの取り組みは功を奏しているといえそうだ。

フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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