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仕事を「先送り」せず、すぐやる習慣を身に着ける考え方

横山信弘経営コラムニスト
「先送り」をし続けると、気持ちのよい朝は迎えられない……

先送りをする「デメリット」とは?

多くの人が目の前の仕事や、やるべきことを「先送り」してしまう習慣を治したいと考えています。そのため、巷ではいろいろなテクニックが紹介されていますが、なかなか思うようにいかない方も多いのではないでしょうか。

確かに「先送り」「先延ばし」の悪癖をなくし「すぐにやる」習慣を身に着けたほうが良いとは言えます。しかし、なぜ「先送り」をするべきはないのか? まずは先送りの「デメリット」から考えていきましょう。デメリットは2つあります。

1.ストレスがたまる

2.品質が落ちる

なぜ「先送り」をするとストレスがたまるのか?

習慣化していない作業をスタートさせようとしたとき、誰しも葛藤を覚えるものです。つまり葛藤そのものが「ストレス」です。ですから「先送り」をすることによってストレスがたまると言われてもピンとこない人もいるでしょう。

何かやるべきことがあり、それを「先送り」すると、その瞬間はストレスから解放されたかのような気分になります。しかし、それは一瞬だけです。いずれしなければならない事柄であれば、「いつかはやらなければ」という思考ノイズがずっと脳の中に滞留することとなります。

滞留する場所は、脳の「短期記憶」。脳には「短期記憶」と「長期記憶」があり、短期記憶は一時的に記憶を蓄えるバッファー記憶装置の役割を果たしています。

「いっぱいいっぱい」という表現をする人がいます。やることが多すぎて余裕がない。だから「いっぱいいっぱいです」と言ってしまうのでしょうが、果たして本当に利用可能時間に比べて作業量が多く、余裕がないのでしょうか?

おそらく、先送りしている仕事が他にもあり、「あれもやらなければ」「あれもまだできていない」「これってそもそもどうしてやる必要があるんだったっけ?」といった思考ノイズで、短期記憶のタンクがあふれている状態なのでしょう。つまり「いっぱいいっぱい」なのは、脳の短期記憶なのです。

物理的には時間があるのにもかかわらず、脳の短期記憶に情報を蓄えることができないため、脳の処理能力が低下し、論理的に物事を考える余裕がなくなるのです。当然、この状態になればストレスがたまっていきます。

先送りをすることで脳の短期記憶にノイズがたまり、脳の処理能力を低下させていきますから、ますます目の前のやるべきことを着手できなくなります。「先送りスパイラル」に陥っていき、次第に大きな苛立ちを覚えることになるでしょう。

反対に、「すぐやる」習慣がある人は、脳の短期記憶に一定の余裕があるため、脳が適切な処理をしようとします。「どうせいつかはやることだから、今すぐにやったほうが効率的だ」などと論理的に考えることができるのです。

どんなに頭の回転が速かろうと、素晴らしい知識を持っていようと、脳の短期記憶がいっぱいなら、適切な処理ができません。ですから「先送り」の習慣がある人は、過去の実績や知識、資格、学歴などと関係なく、仕事が雑になっていきます。

なぜ、「先送り」をすると品質が悪くなるのか?

じっくりと考えてから着手したほうが仕事のクオリティがアップすると考えている人もいるようです。しかし、もし時間的余裕があるのならスタートが早ければ早いほど、仕事の品質がアップすることは間違いありません。その仕事に求められること(スペック)や、その仕事に対する気持ちが時間とともに忘れていってしまうことが最大の原因です。

ヘルマン・エビングハウスの忘却曲線によれば、20分たてば「42%」、1時間たつと「56%」、1日たつと「74%」忘れると言われています。この数字が正しいかどうかは別にして、着手スピードが遅くなれば遅くなるほど、そもそも何をすべきなのか、何を求められているのか、なぜやろうと思いついたのか、を忘れていってしまうことでしょう。

また、仕事を着手してはじめて「自分が理解できていない部分」の存在が判明することも多いはず。したがって、とにかく始めてみないことには、現時点でその仕事を完成させるには、何が足りて何が足りないのかが明らかになっていないとも言えます。

先送りをすればするほど仕事の品質が悪くなるのは、求められていることの記憶が曖昧になること。そして仕事を始めてから不足情報がわかったときに、それを補うまでの時間的余裕が少なくなるからです。

本当に「先送り」しなくなる方法はあるのか?

最後に、先送りをしなくなるためのテクニック(?)を書きます。それは「やる」ことです。「やる」だけです。もっと具体的に書くと、「先送りをせずに、すぐやる方法」があると思わないことです。そんな方法はないのです。

先送りをしなくなるメモの書き方、タスク管理、心構え、時間管理術、いろいろなテクニックが書籍にもインターネット上にもありますが、それらを知ろうとすればするほど、本来やるべきことができなくなります。

なぜなら、「ついつい先送りをしてしまうのは、先送りをしなくてもいい方法がどこかにあり、その技術を自分が知らないから、すぐにやることができないのだ」と思い込んでしまうからです。これは思考ノイズです。どんなテクニックを知っても、先送りをしてしまう人は先送りをします。よく考えればわかることです。仕事の完成度を高めるためにどうすればいいのかと悩むならともかく、「すぐやる」にはどうすればいいか、という悩みです。「やる」だけです。

繰り返しますが「やる」だけです。知識も必要ありません。経験もスキルも必要ないのです。モチベーションや内的動機付けなど、まったく関係がありません。先送りをするデメリットを正しく覚え、「やる」だけです。そうすることでストレスから解放され、仕事の品質も上がり、周囲からの信頼も得られるようになります。

何より、「わかっちゃいるけどなかなかやれない」と言って「先送り」する場合、それは自分への裏切りでもあるわけですから、先送りの習慣をなくすだけで、自分への信頼は増します。つまり「自信」がついてくるようになるのです。すぐにやるためにはどうすればいいか? すぐにやるだけなのです。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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