ビッグデータで「売れる商品」がわかる? ビッグデータの可能性と活用範囲を考える
ビッグデータの特徴は「3つのV」
ビッグデータの話題が花盛りです。新聞、ネット、雑誌では見かけない日がないと言えるほど、ビッグデータというキーワードは興隆しています。ビッグデータに関するセミナーやフェア、展示会も、各地で大規模に開催され、多くの人が関心の目を寄せています。
私は営業・マーケティングのコンサルタントですから、主にマーケティングの分野でビッグデータの可能性や活用範囲について考えてみます。
ビッグデータの特徴をまとめると、3つのVで表現できると言われます。
● 容量 (Volume)
● 種類 (Variety)
● 頻度 (Velocity)
ビッグデータと聞いて誰もが思い浮かべるのが、文字通りその巨大な容量(Volume)でしょう。しかしそれだけではなく、異なる属性(Variety)のデータが膨大にあってはじめて理解できることがあります。そして何よりスピード(Velocity)。市場環境がめまぐるしく移り変わる昨今、データの更新頻度はとても重要なファクターです。
ですから、ツイッターやフェイスブックなどで投稿された記事や写真、各種機器やセンサーなどの反応データ、消費者の購買情報などバラエティに富んだデータがビッグデータの対象となり得ます。
そもそも、なぜビッグデータが「意思決定」に必要なのか?
次に、マーケティング分野におけるビッグデータの可能性について考えてみましょう。ビッグデータの活用は、収集されたデータを解析することで、何らかの「意思決定」に役立てようとするものです。それでは、なぜビッグデータがないと正しい意思決定ができないのでしょうか。たとえば、ある商品を世に出そうとした際、その商品が売れるかどうかは市場調査して分析し、商品開発に生かせばよいことです。
商品のターゲット層を想定してアンケートを作り、1000人、2000人の対象顧客に調査すれば、正しい答えが出てきそうな気がします。しかし、ここでよく考えてみましょう。本当にお客様の声を拾えば、売れる商品を開発することができるのでしょうか?もしも本当にそうなら、あらゆるメーカーは売れる商品をこれまでも簡単に開発できたはずです。時代のニーズに合った商品を市場に投下すれば、確実に売れたでしょう。しかし現実はそうなっていません。
ヒットするだろうと想定した商品が売れなかったり、テレビ番組「半沢直樹」のように、当初の予想を遥かに上回る大ヒット作が世に出てきたりします。なぜあの商品は売れたのか? というヒット作の考察は常に「後付け」で、残念ながら事前にはわからないものです。
「脳科学」の研究から人間の購買行動を考える
脳科学の研究によると、人間の言語報告による「主観評価」と、脳の快・不快を示す「情動データ」に相関関係がないことがわかっています。正しいのは、言葉ではなく脳波です。意識と行動は微妙にずれているということでしょう。
「A・B・C」という商品があり、アンケートをとったところ、「A」が一番支持を集めたにもかかわらず、脳波を調べてみると、実際には「B」と接したときのほうが快楽の情動データが大きかった場合、結果としては「B」のほうが売れゆきが良いのです。つまり人の「言葉」に代表されるような静的データには限界があるということです。とはいえ、市場ニーズを把握するために1000人、2000人単位の脳波を計測するわけにはいきません。したがって、ここに人間の「行動」という異なる属性のデータを組み合わせるのです。
人間の行動が指し示すデータは、いろいろな器材、システムに記録されています。その行動の内容はもちろんのこと、その日時、頻度、種類を掛け合わせることで、どんな商品が売れるのか? 商品単価をいくらにすると利益が最大化するのか? どのようなプロモーション活動が最も効果的か? といったマーケティング情報が、ビッグデータの活用によって、正確に近い「答え」を導き出すかもしれないのです。(あくまでも可能性です)
ビッグデータの活用範囲は限られている
ただ、経営コンサルタントの立場からすると、ビッグデータの活用範囲はかなり限定的です。前述したとおりキーワードは「3つのV」。構造化・非構造化を含めたさまざまな種類の/高頻度で更新される/膨大な量のデータがないと意思決定しづらいチュエーションとは何か? それを想定していただきたいと思います。
企業活動における意思決定のほとんどは、ビッグデータに依存しません。そのことを正しく理解しておかないと、流行のキーワードに踊らされることになります。気をつけたいですね。