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「自燃人・可燃人・不燃人」と「できる人・できない人」との関係

横山信弘経営コラムニスト
「できる人」は、意識も高いとは限らない……

自燃人・可燃人・不燃人と「2・6・2の法則」とは?

コラム「チームの成績に強く影響する「場の空気」とは?」等で、チームのライフサイクル、メンバーの移り変わり、脳のミラーニューロンなどによって、「場の空気」は少しずつ変化をしていくと解説しました。しかし考えるべきことはそれだけではありません。さらに空気を複雑にする要素があります。それが人の「意識レベル」です。

ものまね細胞「脳のミラーニューロン」によって、「人」は「人」から影響を受けてしまう生き物だと書きました。しかし、人の「意識レベル」によっては影響を受けやすい事柄と、受けにくい事柄があることを知ってほしいと思います。このレベル感を「組織論2・6・2の法則」を使って解説していきます。

「組織論2・6・2の法則」とは、組織は「20%のできる人」「60%の普通の人」「20%の物足りない人」に構成されやすいとした法則です。これは人間のみならず、アリ等でも同様に「働くアリ」「働くふりをするアリ」「働かないアリ」の3種類に分けられ、この配分も「2・6・2」になると言われています。

私は現場に入って組織改革をするコンサルタントですから、この「組織論2・6・2の法則」を何度も目の当たりにしています。採用で「できる人」ばかり集めても、組織が「できる人」ばかりにはなりませんし、「物足りない人」を集めたとしても、それなりにリーダーシップを発揮する人がそのチームから現れてくるものです。

この「2・6・2」を意識レベルで分解し、わかりやすく表現してみます。

■「自燃人(じねんじん)」……自分で勝手に燃えている人

■「可燃人(かねんじん)」……火をつけられると燃えることができる人

■「不燃人(ふねんじん)」……なかなか燃えない人

燃えにくい人を「難燃人」、他人の火を消す人を「消燃人」などと、巷ではいろいろと呼び名があるようですが、本コラムではわかりやすくするため、「自燃人」「可燃人」「不燃人」の3つのフレーズを使って解説します。

ポイントは多数派を占める「可燃人」の影響

「脳のミラーニューロン」の影響がありますから、近くに「自燃人」がいれば、レベルの差はあろうと、何となく燃えてくるもの。感化されると意識は高揚し、チャレンジ精神がわいてきます。反対に、周りに「不燃人」が多ければ、影響を受けて、意識レベルが低くくなりやすいと言えるでしょう。

「自燃人」「不燃人」は、あまり周囲に感化されません。ですから、ポイントは「可燃人」です。チーム多数派の「可燃人」が意識を高めるかどうかによって「場の空気」が左右されるのです。チーム構成員の全員を「燃える集団」にするのは、あまり現実的ではありません。チームに6割以上は存在する「可燃人」をどのように変えるかがリーダーの腕の見せ所です。

チームが上昇気流に乗るための、正しい価値観、規律に対して「自燃人」は前向きに受け止めます。チームに「締まった空気」が満ちているとき「自燃人」は居心地がいいと感じます。反対に「緩んだ空気」が広まりつつある時期は、ストレスを覚えることでしょう。

「もっとしっかりやれよ」

「なんで監督は、ちゃんと言わないんだ」

「社長は責任逃れしてほしくない」

……などと、熱い気持ちを吐露します。

それでも空気が緩みっぱなしの場合、いずれチームが崩壊するのではないかと敏感に察知します。意識が高いですから、何とかチームの立て直しをはかろうとするでしょう。ところが、いろいろな事情で自分の思いが通じないとわかると、たとえチームに愛着があっても、離れていく可能性があります。業績悪化とともに「できる人」が離職していくことで、企業はますます窮地に立たされていくケースがあります。反対に「不燃人」はチームにしがみつこうとします。

「不燃人」は「締まった空気」がチーム内にあると、嫌な気分になります。居心地が悪いのです。

たとえば私たちのようなコンサルタントが組織改革をしようとすると、「できない理由」「やらない理由」を次から次へと持ち出して徹底抗戦してきます。現状は現状のままにしたいという心理欲求「現状維持バイアス」にかかっているため、なかなか行動を変えられない、というのは理解できます。しかし私たちコンサルタントは頑として主張を変えません。コラム「「多数派工作」で人の意識や行動を変える方法」で紹介したように私たちは「多数派工作」などを仕掛けて外堀を埋めていきます。しかし「不燃人」はいっこうに態度を変えません。チームの8割の意識や行動が変わっているのにもかかわらず、

「やってもやらなくても一緒じゃないか」

「そんなに一所懸命やったって意味ないって」

「ムリなものはムリ」

……などと、不満を口にします。まさに「水を差す」という行為です。スキルや能力、才能など関係のないこと、つまり、やればいいだけのことであっても、理不尽な抵抗を続けるのです。頑なに自分を変えません。しかしどんなに抗っても「場の空気」は、もう元には戻りません。新しい空気を受け入れることのできない「不燃人」は、これまでに意味の偽造――「作話」を繰り返し続けたためか、論理的に物事を受け止めることができず、強いストレスを感じます。そのせいでチームを離れていく可能性があります。

したがって、空気の良いチームは、ますます意識の高い人がパフォーマンスを発揮し、空気の悪いチームは、よりいっそう意識の低い人の根城になっていくということです。

「できる人」よりも「場の空気」を優先する

「自燃人」「可燃人」「不燃人」について解説しました。しかしリーダーの頭を悩ませるのは、この並びで「成績」が比例しないことです。チームへの貢献度が、意識や情熱レベルの高低と似た曲線を描かないところが、チーム改革の複雑な部分です。つまり「不燃人」だからといって、チームへ貢献していないかというと、そうでなかったりするのです。組織の方針に従わないし、後ろ向きなことばかり言っていても、ちゃっかり結果を出す人はいます。

方針に従わなくても、結果ぐらい出せる、「場の空気」なんて関係がない、という人です。

私はコンサルタントとして、このような方を何人も見てきました。ここでリーダーが「結果を出している人は、同じ価値観を共有しなくてもいいかも」とブレるのは良くありません。相当な葛藤があることはわかります。もしもその人がチームを離れてしまったら、成績が下降線をたどりはじめることもあり得るからです。しかし、本当にできる人は、独りよがりにはならないものです。ビジネスでもスポーツの世界でも同じだと思います。自分さえよければいい、他人のパフォーマンスなど関係ないという人は、チームプレイを正しく理解できていない人です。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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