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新入社員が「言ってはいけない勘違いフレーズ」ランキング10

横山信弘経営コラムニスト

新入社員が見習うべきではない「勘違いフレーズ」ランキング

新入社員の「言い訳」にフォーカスしたランキング、新入社員が「言ってはいけない言葉」ランキング10は100万以上のアクセスを集めました。今回はその第2段。「勘違い」に焦点を合わせています。

勘違いとは、「間違い」「思い違い」のことです。論理的に考えれば間違っているのに、正論を吐いていると信じて疑わない人がいます。新入社員の皆さんは、上司や先輩社員を観察し、今回紹介する「勘違いフレーズ」を使っている人がいたら、こういう言葉は使わないほうがいいんだな、と心にとどめてもらいたいと思います。なお、ランキングの順位は私の独断と偏見で決めています。「勘違いも甚だしい度」が高いものから並べたつもりです。それでは第1位から発表していきましょう。

第1位・「目標はあくまでも目標ですから」

「目標はあくまでも目標であって、できたらいいなという指標のようなもの」と言うのは論外です。新入社員が使ったら夢も希望もないでしょう。それを言ってはおしまいというくらい、「勘違いも甚だしい度」が高く、そのうえ経営に対する負のインパクトが大き過ぎます。よって堂々の第1位としました。

私は、目標の「絶対達成」という考え方を提唱しているコンサルタントです。絶対達成とは随分強い言葉だと思われるかもしれませんが、目標は達成して当たり前だから、未達成リスクを回避するマネジメントをしようと言っているに過ぎません。絶対達成の考え方を分かっていただくために、私はお客様の訪問の例をいつも出します。朝10時にお客様のところへ訪問する際に、たとえ新入社員であろうが次のように言う人はいないでしょう。

「10時という時刻は、あくまでも目標であって、できたらいいなという指標のようなもの。『絶対10時に到着』だなんてことはありませんよ。そういう言い方をされると、萎縮してしまいます」

お客様のところへ決まった時間に到着することも、絶対達成の一つです。もちろん交通機関でトラブルが起きたり、移動中に緊急の連絡が入りそちらを優先しなければならないなどリスクはあります。したがって本当に10時に到着できるかどうかは、10時という未来にならないとわかりません。それでも10時到着に向けて行動を起こす現在においては、絶対達成という考えを誰もが持っているはずです。

その考え方を企業の目標に対しても当てはめようというだけの話で、それが私が提唱している「絶対達成」です。もちろん、目標が達成するかどうかは絶対ではないかもしれませんが、「目標はあくまでも目標ですから」と考えながら行動するのはよくないですね。こういう先輩社員は多いですから、見習わないようにしましょう。

第2位・「うまくいくとは限りません」

「勘違いも甚だしい度」が極めて高く、しかもあちこちの企業において耳にするので第2位としました。何かの方針を組織で決めようとしても、「うまくいくとは限らないので、他のやり方のほうがいいと思います」と言って抵抗する人がいます。こういう表現を新入社員は真似しないでいただきたいですね。

「うまくいくとは限らないので、他のやり方のほうがいいと思います」

というフレーズがなぜ勘違いなのか説明します。Aという行動計画があり、それを実行したところ成功する確率が80%、失敗する確率が20%だったとします。80%という成功率にフォーカスして行動計画Aを評価すると、「行動計画Aはほとんどの場合うまくいく」となります。反対に20%という成功率にフォーカスして行動計画Aを評価すると、「行動計画Aはうまくいくとは限らない」となります。まとめると「行動計画Aはほとんどの場合うまくいくが、うまくいくとは限らない」となるのです。つまり「うまくいくとは限らない」というなら成功確率のほうが高いという意味なのです。この行動計画を採用する価値は高そうですね。

いっぽうBという行動計画があり、成功確率が20%、失敗確率が80%だとします。何らかの事情でBの実行を上司が命じたとします。すると、その時には「うまくいくとは限らない」とは言いませんよね。「うまくいきっこない」と言うはずなのです。要するに「うまくいくとは限らない。だから賛成しかねる」という人は「80%ぐらいの確率で成功するかもしれないが、20%の確率で失敗するかもしれない。そんなプランなら賛成できない」と言っているのです。100%うまくいく方法しかやらない、という判断はあり得ません。この口癖は論理的におかしいため、習慣化しないことをお勧めします。

第3位・「できる範囲でやります」

現場に入っていると本当によく耳にする勘違いフレーズです。同義語は、「自分なりにやっています」。人間には「安心・安全の欲求」があります。安心を求めるからこそ、信頼できるものに寄り添いたくなるのです。自信があるとは、自分を信じられるという意味。自分に対する信頼です。自分自身を信用するからこそ、安心して自分に任せることができ、新しいことに果敢にチャレンジできます。ですから自信がある人は「できる範囲で」などと、あらかじめ線を引きません。上司に相談するなどして、なんとか全うしようとするものです。

「自分のできる範囲で」と言う人は、自分を信用していないからチャレンジができないのです。厳しく書くと、「自分が過去やってきた以上のことはやりません。挑戦する気もございません。向上心という言葉は学生時代の部活の更衣室に置いてきたので、もう私の体の中にはありません」と言っているようなもの。自分のできる範囲以上のことをやりましょう。

第4位・「いっぱいいっぱい」

頻度だけで言えば、1位か2位になるほど多くの人が口にする勘違いフレーズです。「いっぱいいっぱいです」あるいは「バタバタしていまして」が口癖になっている人がとても多いのです。「いっぱいいっぱい」とは、先送りしている仕事や周囲からのノイズで、脳の「短期記憶」のタンクがあふれている状態です。

脳には短期記憶と長期記憶があり、短期記憶は一時的に記憶を蓄えるバッファー記憶装置の役割を果たしています。このバッファーが埋まってしまうと、論理的に物事を考えて処理する余裕が無くなり、物理的には時間があるにもかかわらず、条件反射で「いっぱいいっぱいでやっていられません」と答えるようになります。短期記憶のタンクに空白をつくるためには、やるべきことを先送りしないことです。やらなくてはいけないこと、やりかけのことを先送りしていると、常に「あれをやらなければ」「そうだ、これもやるのだった」と考え続けることになり、それが大きなノイズとなり、脳の短期記憶を埋め立てていきます。

第5位・「過去にもやったが、うまくいかなかった」

「だからどうした」

思わずこう突っ込みたくなる勘違いフレーズです。このフレーズは、現状を現状のままにしたいという心理欲求「現状維持バイアス」にかかった人の常套句です。上司が「このようなことをして組織を変えていこう」と提案しても、すぐに「そうは言っても過去に同じようなことをやって、うまくいきませんでしたよ」と反論する人がいるのです。さすがに新入社員が入社していきなりこんなフレーズを使うとは思えませんが、周囲でこのようなことを言う先輩社員を見かけたら感化されないよう気を付けてもらいたいと思います。

私は現場に入ってコンサルティングをしていますので、このような発言をする人がいたら現場で調査に入ります。その結果、「過去にやったことがあるので、また同じことやってもうまくいきませんよ」と言い張る人の実態は次のどちらかになることがわかっています。

●過去、その行動計画をスタートはしたものの、やり切ることなく、いつの間にか立ち消えた。

●過去、その行動計画は存在したものの、スタートさえしていない。

多いのは後者です。現場の人にヒアリングすればすぐにわかります。

●過去、その行動計画をスタートし、ある一定の期間やり切り、正しく評価・改善を繰り返した。

……ということであるなら、「そうは言っても過去に同じようなことをやって、うまくいきませんでしたよ」という主張は通るでしょう。しかし、このようなケースはほとんどないため、こういった反論は勘違いであることが多いのです。

第6位・「万が一のことを考えると……」

決断できない人「マンイチさん」が陥りやすい「リスク過敏バイアス」でも紹介した「リスク過敏バイアス」のある人が多用する勘違いフレーズです。

たとえば上司に「新規のお客様のところへ100件、電話してほしい」と言われ、「100件も電話するんですか? そんなに電話して、大丈夫でしょうか? 万が一クレームがきたらどうすればいいんですか?」と質問してくる人がいます。目新しいリスクや謎の多いリスク、マスメディアで過大に取り上げられるリスクに対して過敏に反応する心理効果「リスク過敏バイアス」です。以前「コンプライアンス不況」という言葉がありました。コンプライアンスはもちろん大事ですが、過剰に規制をすると経済がうまく回らなくなります。これもリスク過敏バイアスが一因です。

リスクを検討するのはけっこうなことですが、新しいことをするたびに、「もしものことがあったら」「万が一このようなことが続けば……」などと言っていたら、何もスタートできません。特に新入社員の人は、上司がOKを出しているのなら多少のリスクを冒してもチャレンジしてほしいですね。

第7位・「少なくとも私にはその経験がない」

論拠が「自分の過去の体験」になって反論するケースです。上司が「こういう商品が最近は売れているそうだ」と言うと「これが売れてるんですか? 少なくとも私は買いませんけどね」と言ったり、また「こういう方法でやっていこう」と言われると「それでうまくいくんですか? 少なくとも私にはそれでうまくいった体験がありませんが」と反論するケースです。

バリエーションとして、「見たことがない」「聞いたことがない」というフレーズもあります。「MKノー」の口癖とは?で紹介した「MKノー」です。何らかの主張をするのはいいですが、論拠は客観的なデータに基づくファクト(事実)でなければなりません。「私の過去の体験」では論拠にならないのです。

第8位・「そう言うあなたはどうなのですか」

勘違いというより、むかつくフレーズとでも言いましょうか。ここまで言われたら、上司も立つ瀬がないですね。以下の会話文を読んでみてください。

マネジャー:「どうして、やり切れなかったのか。自分で決めたことはキチンとやり切ってくれ」

部下:「そうはいっても、忙しかったんです」

マネジャー:「他の人だって忙しい。君だけではないだろう」

部下:「そういう課長はどうなのですか。課長はやり切っているのですか。すべてにおいて完璧なのですか」

説明不要です。もっと謙虚になりましょう。

第9位・「そこまでやる必要があるのですか」

「やれよ。以上」

思わずこう言い返したくなる勘違いフレーズですね。「勘違いも甚だしい度」は高いですが、さすがにここまで自堕落かつ無気力な物言いをする人は少ないでしょううから、ランキングは9位としました。

第10位・「精査します」

第10位には意外なものを挙げたい。「精査します」です。なぜこのフレーズを取り上げたのかというと、現場に入ってコンサルティングをしていて、最近やたらと耳にするようになったからです。よくあるやり取りを再現しましょう。

マネジャー:「このリストを他の切り口で分析してもらったほうがいいと思います。どうしますか」

部下:「分かりました。一度、精査します」

「見直してみます」という表現より、ちょっと知的なニュアンスがあるから使っているのでしょううか。「精査します」と言えば、その場を乗り切れると思っている人が多いのです。手元の辞書を見ると用例として「感染の原因を精査する」とあります。感染の原因を調べるのですから、相当に細かい調査、吟味が求められるに違いありません。精査には、精細で緻密な調査と分析というニュアンスが込められています。ところが「精査します」と即答する人は、「精細で緻密な調査と分析」などしません。その場の上司の追求をしのぐために使っていることが多いのです。

「精査します」

と、先輩社員がよく使っているから新入社員も使いたくなるかもしれませんが、具体的にどう調査・分析するのか、もう少し神経を使って仮説を立て、多くの人と吟味しながら取り掛かってもらいたいですね。

言葉は姿勢を示すバロメータ

「言葉の使い方なのだから、そこまで神経質にならなくても」という方がいるかもしれません。しかし、言葉にはその人の姿勢、考えがはっきり出ます。本人が気付いていない心理まで反映されるのです。言葉はその人の心理状態を外に示すバロメータですから、新入社員のころから上司や先輩社員がどのような表現をしているか気を付けて観察してもらいたいと思います。

(本記事は、部下が上司に言ってはいけない「勘違いフレーズ」ワースト10の新入社員版として改稿いたしました)

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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