「ここだけの話」ばかりを言う人のセキュリティ能力
あなたの周りに「ここだけの話」と言って、他の誰も知らないようなことを打ち明けてくる人はいませんか。例えば経営陣同士の確執、上司と部下とのロマンス、取引先の内部事情……等。どちらかと言うとヤバイ話、自分ではどうしようもない話、聞いた以上共犯者になったような気分になる話が多いですよね。正直なところ、なるべく「ここだけの話」は受け取らないようにしたいものです。
「自己開示の返報性」という言葉があります。相手が自己開示をした以上、こちらも胸の内を明かさなくてならない気分になるという返報性の法則です。そして相手も当然、自分が渡した「ここだけの話」の見返りを求めようと迫ってきます。
「結局のところ彼とはどうなの?」
「新しい組織体制がどうなるか、私だけに教えてくれないか」
「ぶっちゃけ、今度の支店長って、仕事できないと思ってるでしょう?」
このように必要以上の自己開示を促されてしまうのです。風説、浮評、噂話が好きな人、平和な毎日にちょっとした刺激を加えたい人はいいでしょうが、そうでないなら、「ここだけの話」をもらいたくないし、「ここだけの話」を注文されるのも避けたいでしょう。
「ここだけの話」をされないようにするためには、取り立ててリアクションをしないことです。相手は「えー!」「そうなのォ!?」という反応を期待しているのですから、その期待に応えないようにします。
「ねえねえ、ここだけの話だけど、AさんとKさん、そろってニューヨーク支店への異動が決まったらしいよ。二人が志願したんだって。やっぱりあの二人、できてたんじゃない?」
「はァ……」
「前からあやしいと思ってたのよ。二人とも家族がある身なのに、大丈夫なのかしら」
「ニューヨーク支店は私も憧れてる。異動だったら困るけど、出張なら行きたいな」
「そういうことじゃなくって、AさんとKさんとが恋愛関係じゃないかってこと」
「うーん……」
相手は「ええええ! AさんとKさんって、そんな間柄だったのォ? 私、全然っ知らなかった。うわああああ、びっくりー! ニューヨークなんてすんごォーい」というリアクションを期待しているわけですから、薄い反応を目の当たりにしてガッカリすることでしょう。「ここだけの話」を受け取りたくない人は、わかりにくいリアクションをお勧めします。相手の期待を裏切ることで、「ここだけの話」を一方的にしなくなるはずです。
本来なら自分の胸にしまっておくべきことを他人に敢えて開示しようとする人は「心のセキュリティ機能」が脆弱なのかもしれません。口が軽い、不謹慎、無分別……そのように思われてしまい、周囲から「安全性」に欠ける、とレッテルを張られる危険もあります。人間は「安心・安全の欲求」を求める生き物です。周りとの信頼関係を維持するうえでも、やたらと「ここだけの話」を連発しないほうがいいでしょうね。