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ビジネスで成功するために必要なスキル「概算力」

横山信弘経営コラムニスト

世の中には、成功するための、いろいろな方法論があります。多種多様な心構えがあります。どのような方法論を参考にしてもらってもいいですが、「逆説の成功法則」~ これまでの成功法則では成功できなかった人たちへに書いたとおり、正統派、スピリチュアル系、心構え系、キラキラ系の4分類のうち、どれが「再現性」が高いかを評価すべきだと考えています。

そして、誰でも、いつの時代でも、どのような業界、どのような商材でも、再現性のある結果を手に入れるためには、何事も大ざっぱにでもいいので、分解して数値化できるスキルが不可欠であり、避けて通れないと思います。「大ざっぱに数字でとらえる」という感覚がとても重要なのです。

たとえば年間の売上目標10億円に対し、あと1億円のめどがたたないとします。来年の3月の期末までに何とかしなければならない。そのとき、どのような打開策を考えるでしょうか?

● 秋の展示会に参加し、出展する

● セミナーを開催して見込み客を発掘する

● ホームページを開設して商品の認知度を上げる

● 見込み客のリストに電話をかけて売り込む

● チラシのデザインを変更し、わかりやすくする

● iPadを導入して商品の説明しやすくする

● テレビCMで宣伝する

どのような打開策でもかまいませんが、仮説の有効性を測る「物差し」がないと、感覚に頼って意思決定をしてしまいます。

「いまどき展示会に出品しても、反応いまいちだしな~」

「ブログよりも今はフェイスブックじゃない? ツイッターとか?」

「チラシの作り方は変えたほうがいいと、前から思っていた」

特に「誰に質問するか?」で成功する/成功しないが決まる時代で紹介した「利用可能性ヒューリスティック」という認知バイアスには気を付けなければなりません。次のようなバイアスにかかると、うまくいくものもうまいかなくなります。

「そういえばこの前、ある企業がiPadを使って成功したと言っていたな。やっぱりiPadを活用したほうがウケはいいのかも」

「セミナーで集客して成功している人がこの前テレビに出ていた。セミナーをやれば一番手っ取り早く結果を残せそうだ」

このように、適当な価値基準で決断をしてしまいます。

私は現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。繰り返しますが、最もこだわるのは「再現性」です。能動的なアプローチの量と期待リターンの量との組み合わせによってできた仮説を常に検証していくことが重要です。そうすることで、仮説の有効性を測る「物差し」ができていきます。ブログでどれぐらいのアクセス数を稼げば、どれぐらいの問合せがあるのか? どれぐらいの問合せがあれば、どの程度の商談につながるのか。そして仕事に結びつくのか? という数字の読みが必要です。大ざっぱにつかむ「概算力」をつけましょう。

展示会であれば、展示場の集客数、当社ブースの来場者数、アンケートの記入数、名刺交換数、当日の商談発生数……等、こういった、だいたいの「概算」ができるか、ということです。そうすれば、来年の3月までに1億円を作るのに、どれが有効なのかをより正しく評価できます。ホームページを開設して商品の認知度を上げようとしても、それなりの時間がかかります。将来の見込み客がホームページを見つけてくれるようになるまでの期間を概算で予測できないと、ホームページを開設したからといって、いつから売上が見込めるのか「読む」ことができません。

さらに、大ざっぱな「概算力」を身に着けるうえで、ぜひ覚えてほしい尺度があります。それはお客様との「距離」です。ビジネスは必ずお客様で成り立っているわけですから、何らかの形でお客様とコミュニケーションをとらないといけません。それが「人」を通してなのか、「媒体」を通してなのか、「仕組み」を通してなのかによって「距離感」が変わってきます。

■ お客様との距離に比例して、仮説の不確実性が高まる

■ 距離を縮めるには「人」を間に入れる

たとえば上記の打開策のうち、最も不確実性が高いのはテレビCMです。効果があるかどうかではなく、不確実性の話です。つまり「読めない」ということです。お客様となり得る人とのコミュニケーション距離がとても遠いのです。テレビで宣伝し、お店で商品が並べられることにより、売れるかもしれませんが、売れないかもしれないのです。ギャンブル性の高い手段と言えます。

この距離を縮めるには「人」を利用します。お店の販売員に、その商品をお客様にストレートに紹介してもらうよう仕向ければ、「距離」はグッと縮まります。機械的に商品案内するのではなく、「人」として心を込め、その販売員が商品を紹介することで、お客様との距離がかなり縮まります。

チラシを刷新するのもいいですが、そのチラシをお客様のポストに放り込むのか、チラシを手に取って直接相手とコミュニケーションするのかでは「距離」が全然違います。セミナーを開催しても、その後、何のフォローもしなければ「距離」は縮まりません。

お客様とのコミュニケーションを「仕組み」に頼ろうとする人がいます。テレビCMやポスター、ロードサイドの宣伝広告、インターネット上の広告しかり。売り手の「顔」が見えないため、コンバージョン率がどうしても不確実になります。どれぐらいのアプローチをすれば、どのぐらいの量のリターンが期待できるか「読めない」のです。

どうしても「仕組み」に頼りたいのであれば、「仕組み」を擬人化させるしかありません。「仕組み」に人間性を持たせるのです。売り手の「顔」を投影する仕組みにするのです。ブログでもツイッターでもフェイスブックでも、売り手の人間性を出すことで、お客様との「距離」が縮まります。期待リターンのコンバージョン率が読めるようになります。

結果から逆算するための「概算力」を日ごろから鍛えることはとても重要です。お店に入って、だいたいの客単価を計算し、お客様の回転率を考えると、そのお店のだいたいの日商がわかります。やってみればわかりますが、概算でいいからといっても、めちゃくちゃな数字は出てこないものです。駅前に客単価が1000円ぐらいの定食屋があり、そのお店の日商はいくらかと考えたとき、どんなに概算力がない人でも「日商100億円」という数字は出てきません。ならば「日商10円」か、というと、そんな数字も出てこないものです。まず極端な数字を考えてから近づけていくと、概算力は高まっていきます。

この概算力が高まれば、来年の3月までに1億円の売上を上積みしたいと考えたとき、チラシを修正しただけで結果が出るのか。ホームページを今から開設して間に合うのか、という仮説の有用性を吟味できるようになります。さらに、どのような商売をして、どのような活動をすれば、年商がどれぐらいになるのか、その経営者の年収はどの程度なのかという概算もできるようになります。

概算力がない人は、よくメディアに露出している人、知名度の高い企業が、すごく儲けているかのように錯覚します。これも「認知バイアス」の一つです。このような錯覚をしている人は、妙な商売に引っかかりやすくなります。特に怪しい「情報商材」には気を付けましょう。

「1日1分で年収1億円! この仕組みですべての自由を手に入れろ!」

「アマゾンに1円出品するだけでがっぽり儲けられる送料ビジネス」

「資金0円で、月収3000万円! 究極のアフィリエイトビジネス」

当たり前ですが、儲かるのはこのような「情報」を売っている人であり、この情報を手に入れて、その情報の通りにビジネスをした人ではないのです。「私の身近に情報商材で儲けている人がいる」と主張する人は、残念ながら利用可能性ヒューリスティックにかかっています。それも認知バイアスです。

何をどれぐらいアプローチすれば、どのぐらいのコンバージョン率でリターンが返ってくるか。その再現性の程度がわからないと、最小限の労力で最大級の価値が手に入る! という煽り文句に惑わされます。前述したとおり、ちょっとした「仕組み」だけで売上を安定させることなどできません。不確実性を減らすためには、自分自身でお客様との「距離」を詰める努力が必要だからです。しかしこのような「情報商材」に騙される人は、そのような面倒なことをしたくない人が大半です。つまり概算力のない人、ストレス耐性の低い人が、このようなビジネスに引っかかるというわけです。

成功するためにも、騙されないためにも、大ざっぱに数字を読むスキル「概算力」を手に入れましょう。そうすれば、世の中で、安定的に長期に渡ってそこそこ儲けることができて、そこそこの自由な時間を手に入れられるのは、身近にいる「会社員」「サラリーマン」「OL」であることがわかるはずです。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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