売れない最大の理由は、売っている人が「売れないと思っている」から
私は企業の目標を絶対達成させるコンサルタントです。セミナーや研修に講師として登壇することも多いですが、部下たちと一緒に現場に入り、クライアント企業の営業に直接指導することが本業です。これまで、かぞえきれないほどの営業や販売スタッフの行動を見てきましたが、すごく気になるのが、「言語データ」よりも「非言語データ」。本人たちは、お客様の属性や製品の知識、セールストーク、チラシやホームページのキャッチコピーなどの「言語データ」が気になるようですが、私たちコンサルタントは違います。言葉で表現できない「何か」が、とても気になるのです。
それは「表情」であったり「態度」であったり「姿勢」や「行動の量」、「行動のスピード感」等もあてはまります。「空気」で人を動かすに書いたとおり、「脳のミラーニューロン」によって、「人」は「人」によって影響を強く受けます。感化されるのです。営業や販売員の表情や態度がお客様に与える影響はとても大きいと考えるべきでしょう。
トヨタ自動車で「ヴィッツ」を販売しているセールスパーソンが、心の中で「ホンダのフィットのほうがいいに決まっている」と思っていたら、その思いはどうしてもお客様に伝わってしまいます。反対に、ホンダで「インサイト」を販売している人が「プリウスのほうが断然売れているし、自分がお客でもプリウスを買う」と考えていたら売れないものです。
車のようにわかりやすい商材ならともかく、お客様には優劣をつけづらい商材でも、営業が勝手に「売れない理由」を探してくるケースがあります。
「横山さんはうちの業界のことご存知ないでしょうが、こちらの商品は他社と比べ、取り立てて優れているポイントがないんです」
「今回の新商品はイマイチですね。お客様からの反応も良くなかったです」
このようなことを口にする営業は「売れない理由」を商品のせいにしています。いっさい売れていないのならともかく、結果を出している営業が他に存在するなら、ただの言い訳にしか聞こえません。答えは必ず「現場」にあります。私たちコンサルタントは、このような「売れない理由」ばかり言う営業に同行し、お客様の言い分を直に確認しに向かいます。さらに、私の部下に売る行為をしてもらうこともあります。簡易的な営業代行です。
製品知識などなくても――というより、製品知識がないからこそ、かえって自信を持ってお客様に紹介できるときがあります。
「お客様、少しだけ時間をいただけませんか。この商品は本当に自信をもってご紹介できる品です。ポイントは3つのみです。1つ目が……」
と、このように自信を持って製品紹介をすると、相手は「聞く耳」を持ってくれるときがあります。もちろん、そうでないケースも多々ありますが、可能性は確実に高まります。製品をそれほど深く知らない人のほうが売れるケースまであるのです。
会社が新しい事業を始めても、なかなか軌道に乗らない場合、それを売るスタッフの「非言語データ」に着目してみましょう。「本当にコレ、売れるんだろうか」「この事業、続けていても大丈夫なんだろうか」と疑いながら営業活動をしている人はいませんか。その思考がお客様に伝わってしまいます。事業をスタートさせた社長だけが信じていても、事業は形になりません。
「その気」がある人が、相手を「その気」にさせるのです。「売れない」と思っていたら、本当に売れなくなっていきます。
自信を持つには、反復のトレーニングが不可欠です。頭で理解するものではなく、体で覚えるものだからです。取り扱っている商品が他社品と比べて著しく劣っていたり、市場のニーズに応じられないような身勝手な商品ならともかく、そうでないなら、売る人の「気持ちの問題」と捉えてもいいでしょう。日ごろから「売れない理由」を商品の責任にしようとしていると、千両役者でない限り、お客様を前にしても態度に出てしまうものです。気を付けたいですね。
【参考図書】