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ドロかっこいい「達成主義者」になれ!……スマートさを求める時代にドロップキック

横山信弘経営コラムニスト

昨今「スマート」という言葉を冠した名称が急増しています。「スマートフォン」をはじめ、「スマートグラス」「スマートテレビ」「スマートウォッチ」「スマート家電」「スマートハウス」「スマートマンション」……ネットワーク技術を利用したコンピューティング環境のスマート化――いわゆる「スマート革命」の申し子たちにつけられた名称です。

その影響なのか、何らかの目標達成、願望実現のプロセスにまでも「スマートさ」を求める風潮が出てきています。要するに「努力しなくてもうまくいく」「自分のやりたいことだけやれば成功する」「あなたは、ありのままでいい」……といった「スマート自己啓発」系のメッセージです。

企業の現場に入り、目標の絶対達成を支援をしてきた私が言えることは、無理もせず、努力もせず、好きなことだけやって、自分の夢が実現したり、目標が達成した人は、単なる【偶然】だということです。「必然」ではないし、何しろ「再現性」がありません。にもかかわらず、「ラクに成功できる」「努力するほうが遠回り」などといった「スマート自己啓発」の人が後を絶たないのは、何でもかんでも「スマートさ」を求める時代のニーズと合致しているからでしょう。しかしそのような風潮が去ったとき、「スマート自己啓発」に影響を受けた人たちには悲劇が待っています。

「状態」と「プロセス」とは異なります。すでに成功を手にしている「状態」の人は、無理をしなくていいし、これ以上頑張らなくてもいいかもしれません。「ありのまま」でいいのです。しかし現時点でうまくいっていない人は、自分が期待する「状態」に引き上げるまでの「プロセス」において、相応の努力と遠回り、葛藤や衝突によってもたらされる強いストレスにぶち当たるものです。この歴史が本人のストレス耐性をアップするわけで、後々スマートな成功者となるために、不可欠なプロセスです。

夢や目標、願望を実現したい、という強い思いがあるのに、できる限り労力をかけたくない。お金もかけたくない。最短距離で実現させたいと考える人は「努力しないほうが成功できる!」「毎日たった10分で年収1億円!」といった射幸心を煽るキャッチフレーズに騙されていきます。

「どうやってこんな大きな成功を手に入れたんですか?」

と誰かにインタビューされたとき、

「死ぬほど努力したからです」

と答えるのではなく、

「いつの間にか、私のところへ成功が転がり込んできたのです」

と言ったほうがスマートだと感じるからでしょう。そのように答えたいのであれば答えればいいですが、本当に努力もせず、無理もせず、やりたいように人生を送って、成功が転がり込んでくるのを待っているだけであれば、そのカッコ悪さといったら、筆舌に尽くしがたいほどです。「プロセス」は確かにスマートですが、「状態」はいつまで経ってもスマートにはなりません。

高い目標を決めて、何度も挫折を味わいながら達成してきた人。いろいろな事業に挑戦し、それなりの成功を掴んだ人たちは「土台」が違います。その人が持っている「自分資産」は目に見えないものですが、この「資産」がない限り、スマートに結果を出すことなどできません。「自分資産」にはいろいろな種類のものがあります。人脈や知識、コミュニケーション能力、環境分析力……など。ビジネスであろうが、資格試験だろうが、就活だろうが、私が最も重要だと考えているのは「概算力」です。

ビジネスのみならず、資格試験対策でも、どれぐらいの行動、試行錯誤を繰り返せばどれぐらいの結果が出るかを推し量るのに、他人の「物差し」など役に立ちません。他人よりも不器用だろうが、要領が悪かろうが、話下手であろうが関係ないのです。重要なことは、自分が何をどれぐらいすれば、どのくらいのリターンが戻ってくるか。そのコンバージョン率が「概算」できるか、ということなのです。そのコンバージョン率さえわかれば、そこから逆算して行動するのみです。

自分が「急行電車」なのか「新幹線」なのか「飛行機」なのかを、ざっくりと知ることです。これが「概算力」です。ある場所に、ある時刻までに到着したいと考えたとき、他人が「飛行機」で自分が「急行電車」だとわかっていたら、その分、はやく出発するだけです。「自分も飛行機だろう」と勘違いしてはいけませんし、「自分はなぜ飛行機じゃないんだ」と嘆いてもしょうがありません。はやく出発するだけで、同じような成果は手に入るのです。

自分が「飛行機」なのか、「新幹線」なのか、それとも「急行電車」なのか、というコンバージョン率を知るためには、それ相応の努力と試行錯誤が必要です。「PDCAサイクル」をまわしながら、コンバージョン率の平均値を掴んでいきます。そして概して言えることは、繰り返すことによって自然とそのコンバージョン率はアップしていく、ということです。最初が「急行電車」でも、いずれ「新幹線」や「飛行機」になり得るのです。

はじめからスマートさを求めるのではなく、多少遠回りしたほうが「概算力」という大切な「自分資産」が増え、成功状態が持続するはずだ、と考えましょう。そのほうが本当の意味でカッコいいし、スマートであると私は思います。

以前、歌手の倖田來未さんは、ファッションの露出度が高いため「エロかっこいい」と形容されていました。今回はその表現を借りてみます。時代のトレンドに逆行して泥臭く生きよう、目標を絶対達成しよう、とする人たちを、私は『ドロかっこいい』と形容したい。

ひたむきに行動し続ける。無理だ、困難だ、と思うことにも果敢にチャレンジし、自分の殻を破るためにワガママになったりする。汗をかいて、恥をかいて、人に迷惑をかけながらも、それでも執念で目標を達成させる――そんな達成主義者たちは、達成するたびに高い目標を立てます。そして無理を聞いてくれた人たちに感謝しつつ、「成長した自分を見せること」で恩返しをします。

「汗」や「涙」や「葛藤」や「試練」は、時代にアンマッチした泥臭いキーワード。洗練されたイメージはないですが、だからこそ人間味があります。「ドロかっこいい」人は、マイノリティであり、今後もメジャーな存在にはなりにくいでしょう。しかし「スマートさ」を捨て、あえて「泥臭さ」を選ぶ人たちは、こんな時代だからこそカッコよく映るのでは、と私は思います。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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