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ボキャブラリーを増やすことが「会話力」を身につける第一歩

横山信弘経営コラムニスト

「語彙」「ボキャブラリー」の不足が原因で、話が噛み合わなくなることは、とても多いと言えます。「話にならない」という現象は、ボキャブラリーの足りなさで引き起こされることが多いと言えるでしょう。たとえば部長から、

「パソコンの文字が小さくて読めない。『拡大鏡』ってどう出すのかな? K主任が詳しいから、聞いておいてくれないか?」

と部下が言われたとします。しかしこの部下が『拡大鏡』という言葉を知らなかったら、非常に困ります。K主任に、

「拡大鏡を持ってこいと部長に言われたんですが……。虫メガネのことでしょうか」

と相談しても、K主任も混乱します。

「部長が、虫メガネを欲しがってる? どういう意味だ?」

ここで部長が使った『拡大鏡』というのは、パソコンの機能のひとつです。Windowsパソコンで、Windowsキーを押しながら「;」と「-」を同時に押下すると、マウスカーソルの位置で画面が拡大します。この機能を『拡大鏡』と呼びます。部長は、それぐらい相手も知ってるだろうと思って話しているため、話が噛み合わないのです。

外国人と話をしていても同じです。ほとんどの語彙は理解できても、1つだけ意味のわからない単語が含まれていると不安になるものです。

たとえば、外国で、

「The factory is located on the other side of that chimney.」

と言われて「chimney」という単語がわからなければ、自分が探している工場が何の向こう側にあるのかがわかりません。それでも、

「Do I find the factory if it exceeds the chimney ? (そのchimneyを越えれば、私は工場を見つけることができるんですね?)」

と、「chimney」を知っているかのごとく話せば、

「That's right , you can find it.」

と相手は答えることでしょう。傍から見ていると、話は噛み合っているように見えますが、実は噛み合っていません。結局「chimney(煙突)」の意味がわからないため、ちっとも工場が見つからないのですから。

わからない単語、ボキャブラリーがあれば、その都度、質問と確認をすることが基本です。しかし、相手が外国人でなくとも、何となくやり過ごしてしまうことは意外と多いものです。

普段、職場やその団体で使っている専門用語、専門知識は、話を噛み合わせるためにも、できる限り覚えるようにしましょう。わからない単語、ボキャブラリーが出てきたら調べる癖はつけたいですね。また、相手が本当にわかっているかどうか気を遣って話すことも重要です。

次に、ボキャブラリーそのものを知らない場合は、本人も自覚しているという点で、それほど大きな問題にはなりづらいと言えます。その場で質問できなくても、やはり単語の意味がわからないので、

「これって、どういう意味なのでしょうか? 申し訳ありません。あのとき聞けなかったので教えてください」

と素直に謝ればいいからです。このケースよりも問題が大きく、頻繁に起こるのは、言葉の意味を「誤解」しているケースです。

「ロジカルシンキングの言葉で『MECE』ってあるじゃないですか。今度のイベントをどのように集客するか、アイデアをまとめたいので『MECE』で考えませんか」

と言われて、

「わかった。では、集客方法をロジックツリーを使いながら書き出しおくよ」

と相手が答えたら、『MECE』の意味をわかって話しているだろうと普通は受けとります。会話が成立しているからです。(※MECEとは、漏れなくダブりなくという意味)

ところが実際に相手から受け取った内容を見ると、アイデアが漏れていたり、重複していたりして、まったくMECEの状態になっていなければ、話が噛み合っていない、ということになります。これが、言葉の意味を「誤解」するケースです。

さらに問題が大きいのは、その職場独特の定義をしている言葉が存在すると、ややこしいことになっていきます。実際にあった話ですが、私がある企業へコンサルティングに入ったとき、人事部長が、

「4月から新入社員が3人来る。インストール作業を速やかにやってくれ」

と言いました。普通「インストール」という言葉は、コンピューターに導入したソフトウェアを使える状態にすることを指します。ところがその会社では、

「新しく配属された新入社員を使える状態にする」

という意味で使っていたのです。その場にいた多くの人は、人事部長がこの使った「インストール」という意味合いを理解したのですが、私以外にも数人、この言葉の意味を、

「新入社員に配布されたパソコンに、必要なソフトウェアを速やかにインストールすること」

と受け止めた人がいました。しかし、その事実に気付いたのはずいぶんと先のことでした。

日常生活においても、よくあることです。私は『なるはや』という言葉の意味を「なるべく早く」という意味ではなく、「時間があるときにやればいい」と、なぜか誤解していて、

「『なるはや』でお願いね」

と言われても、いっこうにやらずに叱られたことがあります。相手が言葉の意味を取り違えていることは、会話しただけではわかりません。実際に、行動に移してみてからでないと判明しないのです。そういう意味で、より厄介な問題と言えます。ボキャブラリーを増やすことは重要です。ただ、それは話すときではなく、相手の話を聞いて理解するときに重要である、ことを忘れてはなりません。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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