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ストレスを溜めない「サバサバする技術」

横山信弘経営コラムニスト

「あの人は、けっこうサバサバした性格だ」「意外にサバサバした表情しているよね」という感じで使う「サバサバ」という表現が今回のテーマです。この「サバサバ」という言葉から受けるイメージは、それほどネガティブなものではありません。多くの人が「羨望」の感を抱くこともあるフレーズだと私は思います。

「ああいう、サバサバした人になりたい」

と、口に出す人もいると思います。

「サバサバ」している、というのは、「無関心」「冷淡」「素っ気ない」ということとは違います。一定期間、執着していたにもかかわらず、期待通りにならないとわかると、その執着心を捨て、すぐに気持ちを切り替えられる、ということです。

誰かに恋をし、夢中に愛を求めたのだけれど、その思いが届かないとわかると、「それならしょうがない」と心のスイッチを切り替えられる人です。ビジネスにおいても、3年も力を入れてきた事業がうまくいかなかった場合、

「最初から撤退基準は決めていた。3年で黒字化しないとわかった以上、この事業からは手を引く」

と決断できる。これが「サバサバ」しているという感じでしょうか。

「諦めが早い」という表現が適当なのか、それとも「潔い」と言ったらよいのか、いずれにしても、思いを断ち切れずに「ネチネチ」している人、いつまでも恨み節を言っている粘着質な人とは対照的です。私は以前、どちらかと言うと引きずるタイプでした。しかし、ここ10年ほどは、昔とは比べ物にならないほど「サバサバ」しています。

「1年間、頑張ってきたけれど、これ以上は無理。他にもっと優先順位の高いことがある。いったん、やめよう」

このように意思決定ができるようになってきています。たまに思い返し、

「もう少しやり方があったんじゃないか」

「どうしてあんな無謀なことに挑戦したんだろう」

「今からでも遅くない。再チャレンジしたら、うまくいくかも」

と「グチグチ」言ってしまうことはほとんどありません。

性格そのものを変え、サバサバした性格になるのは難しいかもしれませんが、時と場合によってはサバサバしたい、という方に、どういう方法があるか考えてみます。まずシチュエーションとしては2つのパターンがあると思います。

● まだ頑張れば何とかなるかも、と思えるパターン

● どう頑張っても何ともならない、というパターン

たとえば「恋愛」とか「経営」とかは、前者のパターンが多いと思います。誰かに恋い焦がれ、相手に気に入られようと努力してみたけれども、フラれてしまった、とか。

このパターンの場合、「一回フラれただけでは諦めきれない。もう一度出直して、再びアタックしてみよう」と思うのは悪くない気がします。それで成功することもあるでしょうから。ただ、あまりに執拗だと相手に迷惑です。自分の心にも大きな痛手を負うことになるでしょう。

経営でも同じです。事業に対する思い入れが強すぎて、いつまでも撤退せず、不採算事業を続けていると、業績が悪化して従業員の皆さんにもお客様にも迷惑です。しかし、「あと1年あれば、黒字にさせる自信があるんだけど……」と事業責任者が言い続けていると、泥沼にはまっていきます。

「どう頑張っても何ともならない」パターンというのは、たとえば「高校・大学受験」「資格試験」などでありますよね。試験に不合格であったなら、「もっと勉強すればよかった」「遊んでばかりいた自分がバカだった」とネチネチ後悔しても遅いのです。

スポーツの試合で負けたときもそうです。他のお店で8900円で売っている物を、9900円で買ってしまったパターンもそうです。気持ちの切り替えが難しいときはあるでしょうが、もう取り返しがつきません。思いが強ければ強いほど、そう簡単に気持ちを切り替えることなどできないものです。

夏の大会のために冬の間も一所懸命、頑張って甲子園出場を目指してきた高校球児が地方大会で負けたとします。相当悔しいはずです。にもかかわらず、

「負けは負け。気持ちを切り替えていこう。それじゃあ、就職活動がんばろうぜ」

とは、なかなか言えないものです。100メートルを全力で走っている人なら、100メートルを過ぎたあとにすぐ急ブレーキをかけられません。もし簡単に急ブレーキをかけられるのなら、全力で走ってきてないだろう、と突っ込みを入れたくなります。とはいえ、いつまでもダラダラ走り続けるわけにはいきません。どんなに全力で走っていたとしても、どこかでストップしないといけないのです。

ですから、「サバサバ」と気持ちを切り替えるためには、明確な「境界線」を決めることが大切です。そう簡単に思いを断ち切ることはできなくとも、ここを越えたら、潔く退く、思いを断ち切る、これ以上は諦める――という境界線を決めるのです。

「一度フラれても、あと2回はアタックする。それでダメなら潔く諦めよう」

「3年間で収益が出なければ、この事業は撤退しよう」

「決勝戦で負けてツラいけど、1ヶ月経ったら就職活動に向けて気持ちを切り替えていこう」

このように「境界線」には、数値表現を含めるべきです。

「しばらくしたら忘れよう」

「やれるところまでやって、無理なら諦めよう」

という曖昧な表現は避けるべきです。

「数字で考えるだなんて……。そういうものじゃないと思う」

このように割り切ることのできない人は、まさにサバサバできない人の典型です。サバサバしたいと思っても、それさえ踏ん切りがつかないのであれば、結局は「グチグチ」「ネチネチ」考えてしまうことになるでしょうから、気を付けたいですね。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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