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断られても諦めるのは早い! 「反撃トーク」6つのポイント

横山信弘経営コラムニスト

断られる2つのパターン

相手に何らかの提案をしても、断られることがあります。好きな人をデートに誘うケース。営業がお客様に商品を提案するケース。部下が上司に職場の改善案を申し出るケース……いろいろなシチュエーションがあります。断られるパターンは2種類です。

● 非論理的に断られるパターン

● 論理的に断られるパターン

「非論理的」に断られるというのは、以下のようなパターンです。

「時間がないので、ちょっと無理かな」

「給料少ないので買えません」

時間がない? 永遠に? 給料が少ない? 私よりは給料多いでしょっ! と突っ込みたくなるような断り文句を言われると理不尽に感じます。非論理的=理不尽ですので、理不尽、不誠実に感じたら、非論理的、と受け止めていいかもしれません。

「論理的」に断られるというのは、以下のようなパターンです。

「価格、スペックともに、他社製品のほうが優れていますのでお断りします」

「その改善案は、過去に2度試しているから別の方法を考えたほうがいい」

ロジカルな視点で断られると、「つけ入る隙がない」という印象を受けます。しかし、ここで諦めてはいけません。うまくいくかどうかは別にして、「ああ、そうですか」「それなら仕方がありませんね」と、そのまま引き下がってばかりいてはダメです。「負け癖」がついてしまうからです。相手の断り文句が論理的だ、と思っても、切り返し方によっては心理バイアスをかけることも不可能ではないのです。

非論理的に断られるパターンでどう「反撃」するか?

まず、非論理的に断られるパターンについて、どう切り返すか、「反撃トーク」を考えてみます。

一見、噛み合っているように見えても、論理的に噛み合っていない話を正しく識別する観察眼をつけましょう。代表例として「省略」について解説します。何らかの先入観・思い込みによって、論理コミュニケーションにおける重要なパーツを「省略」して話すことによって、論理性が崩れるのです。いくつか事例を紹介しましょう。

●「論拠」を省略する

「私の将来は明るくない」

「当社が開発した新商品は売れない」

「こんな目標は達成できない」

「将来は暗い」「新商品は売れない」「目標達成は無理」……これらの結論に対する論拠が省略されています。次の■■■に当たる部分です。

「(■■■だから)私の将来は明るくない」

「(■■■だから)当社が開発した新商品は売れない」

「(■■■だから)こんな目標は達成できない」

ですからこの結論は非論理的といえるのですが、この結論を「前提」として話が進むと、会話が論理的にゆがんでいきます。

「私の将来は明るくないよ、だからそんなことやっても無理」

「当社が開発した新商品は売れない。にもかかわらず設備投資を増やすのはおかしい」

「こんな目標は達成できない。目標を設定した社長はどうかしてるよ」

●「比較対象」を省略する

「給料が少ない」

「営業力が弱い」

「任される仕事が多い」

「少ない」「弱い」「多い」……これらは比較形容詞ですから、比較対象を省略せずに話さないと、論理的なコミュニケーションとはなりません。次の■■■に当たる部分です。

「(■■■と比べて)給料が少ない」

「(■■■と比べて)営業力が弱い」

「(■■■と比べて)任される仕事が多い」

前述した例と同じように、この結論を前提にして話を展開すると会話がゆがんでいきます。

「給料が少ないから、その商品は買えない」

「営業力が弱いんだから、そんな改善案を出してもダメだ」

「任される仕事が多いのに、これ以上の仕事をやれって言うの?」

●「結論」を省略する

「君からの連絡がないものだから……」

「仕事がすごくたまってるので……」

「やる気が出なくて……」

いわゆる「言わなくてもわかるよね」的な話し方です。次の■■■に当たる部分が省略されています。

「君からの連絡がないものだから(■■■だ)」

「仕事がすごくたまってるので(■■■だ)」

「やる気が出なくて(■■■だ)」

背景や前提条件をお互いが共有していると、「話し手」が結論を省略して話をしても、「受け手」は何となくわかってしまうものです。「だから、どうした?」という突っ込みを入れずに会話が展開されると、当然、会話がゆがんでいきます。

省略された言葉は会話中に「見えないもの」です。したがって「見えないもの」に意識を向けることはけっこう難しく、スピーディに会話が展開している最中に、その「見えないもの」に意識をフォーカスするためには訓練が必要です。

雑談や世間話といった表面的なコミュニケーションならともかく、何らかの提案をし、相手から断られた場合は、そのセンテンスに注意を払い、「論拠」「比較対象」「結論」……など、重要な手がかりが抜けていないかをチェックしましょう。何らかの「省略」を察知したら、以下の要領で質問していきます。これが「反撃トーク」になります。

●「論拠」の省略 ……「なぜ+具体的に、たとえば」

「当社が開発した新商品は売れない」

「なぜ、そのように考えるのですか? 具体的に、どのあたりが売れない要素となるのでしょうか」

●「比較対象」の省略 ……「何と比較して」

「給料が少ない」

「何と比較して給料が少ないと思っているのでしょうか。同僚と比較して? それとも、自分のライフプランで立てた目標と比べて?」

●「結論」の省略 ……「だから、何?」

「やる気が出ないんですよ……」

「やる気が出ないんだね。それで、何なの?」

「見えないもの」を見えるようにする質問は、正しくペーシングしながら実行しないと「尋問」のようになってしまいます。相手が気分を害し、よけいに話がこじれることもありますから気を付けたいですね。

ビジネスの現場では、やはり正しい「資料」といった仕組みを使ってコミュニケーションをとることが、もっとも手軽で、誰にでもできる解決手段と言えます。(正しい資料を作ることが前提です)

したがって、非論理的に断られるだろうと想定できるときは、正しい統計データ、論理的に解説したチャート、グラフが手元にあると、うまく「反撃」できます。論拠・結論などが「数値的」に表現された正しい資料を準備しておくことが不可欠です。

論理的に断られるパターンでどう「反撃」するか?

次に、論理的に断られるパターンについて、どう切り返すか、「反撃トーク」を考えてみます。相手の断り文句に論理的な側面があるなら、こちらはかなり動揺します。「ごもっとも」「そりゃ無理ですね」と頷きたくなるものです。しかし、それでも諦めずに反撃するトークです。

相手が論理的に断っているわけですから、こちらの言い分は論理的ではいけません。相手に心理バイアスをかけるような切り返しを考えてみましょう。代表的な例は3種類です。

「社会的証明の原理」「権威の原理」「選民の原理」など、心理学を応用したテクニックを使います。

●「社会的証明の原理」とは?

ある行動をとる人が多ければ多いほどその行動は正しいと見なされる心理傾向。

●「権威の原理」とは?

権威のある人・機関に従ってしまいやすい心理傾向

●「選民の原理」とは?

「あなたは選ばれた人」と意識することで心変わりをしやすい心理傾向

それでは、これら3つの心理傾向を利用して、断られても切り返すトークを考えてみます。

●「社会的証明の原理」……「多くの人がやっている/評価している」

「この業界では実に78%の企業が採用している手法です」

「これだけ多くのお客様の声をいただいております」

●「権威の原理」……「権威ある人・機関のお墨付きがある」

「これは厚生労働省の認定機関によって開発されました」

「専務もすでに承諾していることです」

●「選民の原理」とは?

「このイベントに参加されたあなただけに与えられたチャンスです」

「こんな甘い言葉を言うのは、本当に君しかいないんだ」

「反撃」する気持ちがないなら、断られるのは当たり前?

断られてからもこのような言い分で切り返すと、「悪あがき」「無駄な抵抗」のように思えるかもしれませんが、一度断られただけですぐ引き下がる人というのは、それだけ気持ちが入っていなかった、という証拠でもあります。

100メートルを全力で走っている人なら、100メートルを過ぎたあとにすぐ急ブレーキをかけられません。

「……こういった理由で、ぜひお願いします」

「うーん、そうは言っても、こういう理由で今は難しいんだよね」

「ああ、そうなんですか。ならしょうがないですね」

すぐに諦める人は、それだけ思いがこもっていない証拠でもあります。断れてからどう切り返すを考えるのではなく、はじめから「そう簡単には諦めない」「何を言われても、反撃する」という準備ぐらいは持ちたいですね。断られてから切り返すかどうかは別にして、そこに賭ける思い・気持ちは提案しているときから相手に伝わるものです。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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