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「女性活躍推進法」が成立! 女性管理職は今後どれぐらい増えるのか?

横山信弘経営コラムニスト
女性本人が管理職になりたいという意識はあるのか?(写真:アフロ)

「女性活躍推進法」が28日、参院本会議で可決され、成立しました。これにより企業側は、女性管理職の数値目標設定等が義務付けられることになります。(300人以下の中小企業は努力義務)

「管理者研修」と呼ばれる研修を長年やっている私としては、感慨深い出来事です。どの業界、どの規模の企業を相手に研修をしても、「管理者研修」と名前がつく研修では90%以上の受講生が男性です。「新入社員研修」となると、30~40%が女性であるにもかかわらず、です。

企業を限定しないオープン研修でも、特定企業に入って実施するクローズド研修でも、どちらも同じ。年間5000名以上の方と接しますが、自動車業界、建設業界、小売業界、化粧品業界、アパレル業界……どの業界でも、驚くほど女性管理者の参加者は少ないのです。この事実をお話しすると、多くの人は「信じられない」と口にします。しかし研修講師や経営コンサルタント仲間では常識的な事実です。

米国(43.7%)、フランス(39.4%)、ドイツ(28.6%)――12年の調査)と比較して、日本の女性管理職の割合は11.3%――(14年の調査)。主要先進国と比べても低い水準ですが、現場感覚からすると「11.3%もいるだろうか?」と思えるほど、女性管理職は少ない印象を覚えます。

当法案の可決は、現状を打開するための第一歩になることでしょう。当然、時間はかかります。すぐに解決する特効薬など存在しません。こういった空気を流れに変えていく地道な努力が必要なのです。

さて、女性管理職についてもう少し現場レベルで考えてみます。女性管理職を増やすためには、それぞれ当事者の意識改革が必要と私は考えます。それは以下の3つです。(制度やルールの改革ではなく、あくまでも意識改革)

● 採用者の基準アップ

● 教育機会のアップ

● 本人のキャリアに対する意欲アップ

まずは採用時から改善が必要です。採用人事に携わる人が「将来の管理者候補」として積極的に女性を採用することです。現場に入っていると、意図的に男性を選択して採用しているケースを多々見受けます。これは制度上の問題ではなく「意識」の問題です。ですから意識改革が不可欠なのです。

教育機会に関しては、深刻な問題です。金融系、シンクタンク系、大手研修機関系、商工会議所系……。近年、いろいろな場所で「女性管理者」向けの研修が企画し開催されていますが、その多くが集客に苦しんでいます。企画サイドの問題ではなく、企業サイドの「意識」の問題です。たとえ女性管理者が存在したとしても、なんだかんだ言って教育の機会が与えられないのです。直接企業に掛けあっても「なかなかねェ~」と言葉を濁すだけで、外に出してもらえません。

そして最後に、何と言っても「本人の意識」です。どんなに政府が法律を定めても、企業サイドが数値目標を掲げても、当の女性社員が「管理職になりたい」という気持ちがなければ、話は前に進みません。経済的な制約、結婚し子どもを産んだ後の制約、キャリア形成に関わる企業サイドのルール上の制約すべてがなくなっても、本人にその気がなければ「女性管理職」は増えないのです。

世間や職場の意識も重要ですが、女性本人の意識はもっと重要です。入社当時はその気があっても、いろいろな経験を積んだり、価値観が変わったりして「管理職になって仕事一筋になるのはイヤだ」と思ってしまえば、それまでです。

男性は、実績と経験を積むことで企業サイドから「ゆくゆくは管理職になってもらうからな」と言われると、たとえイヤだなという感情を持っても、多くの場合は受けざるを得ません。

「やりたいか、やりたくないかと問われれば、どちらかというと管理職なんてやりたくない。でもしょうがない。組織にいる以上、そういうものだから」

出世欲がある人ならともかく、そういう意欲がある人は今や少数派です。とはいえ拒否して職場に留まることは難しいし、管理職になるのが気が進まないからといって転職という選択もとりづらい。男性には「定年までは働き続ける」という感覚がまだまだありますから、

「そう嫌がるな。来年には課長になってもらう。いいな。期待してるぞ」

……などと、企業から強気で圧力をかけられれば、抗うことは難しいでしょう。

ところが相手が女性だったら、上層部はここまで強く言えるでしょうか。おそらく本人の自主性、自発性を重んじてしまう傾向にあることでしょう。あまりにプレッシャーをかけてしまうと管理職どころか辞めてしまうかもしれない。夫が働いていて、経済的にそれほど大きな支障がないと判断したら、

「いったん会社を辞めて、子育てに専念し、少し人生を見つめ直したいと思います」

と言われるかも、という恐怖感を覚えるのです。ですから「会社のために管理職になってくれ」と、あまりに強く言えない企業サイドの苦悩も実際にあります。

忘れてはならないことがあります。それは「管理職」が決してラクな地位ではない、ということです。責任と権限はありますが、多くの人は「責任」を課せられることに対する重圧を強く気にすることでしょう。そういう意味からしても、同じように管理職になるには、男性よりも女性のほうが、本人の「意欲」を問われるのです。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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