相手の営業が「トップセールス」なら、お客様はコレを言って断ってはいけない。
「間に合ってます」が見込み客のサインです。
お客様から「間に合ってます」と言われたら、普通なら尻込みしてしまうものですが、トップセールスは「この人は見込み客だ」と見抜きます。そして断られても「また来ますね」と言い、引き続き接触をとろうとすることでしょう。したがって、営業からの売込み行為を断りたいと思ったら、「間に合ってます」と言うべきではありません。
私は営業コンサルタントです。トップセールスたちの特性は嫌と言うほど知っています。なぜトップセールスたちがそのように認識するのか、ここで簡単に解説していきましょう。
「選択的認知」という言葉があります。人間の脳は、すべての事柄を認知するとパニックになるため、自分の関心があることにのみ焦点を合わせるようにできています。つまり認知プロセスにおいて、無意識のうちに知覚するものを選択しているというわけです。
営業が新規開拓するうえで最も気をつけなければならないのは「ラポール(信頼関係)」。まだ営業に対してラポールを覚えないお客様は、営業が話している内容を認知していません。つまり注意深く「聞いていない」ということです。「できない営業」は、そのことを知らず、どんな商材なら相手は関心を持つかとばかり考えています。
つまり、馴染みのない営業が来たら、お客様はついつい「間に合ってます」と言ってしまうというだけの話。条件反射で言っているだけで熟慮していません。すでに他社と取引をしているので、そこに割って入ってきて欲しくない、ということなので、「間に合っています」という言葉がお客様の口から出た、ということは、他の取引先と「ラポール」が構築されている証拠なのです。
反対に「間に合っています」と言わず、「ちょうどいいところに来た」というお客様もいます。営業が100社、200社、訪問したら、1社ぐらいは遭遇するでしょう。トップセールスたちは、お客様に断られることを前提にして営業活動をしています。そのため、このようなお客様に対しては逆に警戒心を持つのです。お客様が「ラポール」などといった感覚的なものにとらわれず、商材のスペックや価格のみを判断材料に営業と付き合っていく性格の場合は、見ず知らずの営業がやってきても「話を聞いてもいい」という態度に出ます。
確かに、スペックや価格をお客様の言うとおりに調整できれば、取引がすぐにスタートするかもしれません。しかし裏返せば、良い条件を提示する他社が現れれば、ほどなく浮気されるということでもあるのです。こういうお客様をトップセールスたちは嫌います。
トップセールスたちがなぜ「間に合ってます」と言うお客様をあえて狙うのか?最初は時間がかかっても、ひとたびお客様とのラポールが強固になれば、あとはラクに継続的にお付き合いができるからです。お客様は商品の条件に関心があるのではなく、営業個人との”関係”に関心があります。こういう良いお客様と付き合うことで、収益を上げることができます。スペックや価格の条件提示にその都度振り回されることも減るというメリットがあります。
したがって、相手がトップセールスなら、条件反射的に「間に合ってます」と言っても”暖簾に腕押し”だと捉えてください。相手はまったく動揺しません。燃えはじめた火に対して効果的に新鮮な空気を送り込んでいるようなものなのですから。