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絶対達成するストレスフリーな仕事術「倍速管理」とは?

横山信弘経営コラムニスト
2倍速で仕事を片付ける「倍速管理」(写真:アフロ)

「倍速管理」をひと言で書くと、期限を2つ折りにして、2倍速で仕事を片づけるやり方です。 仕事には必ず「期限」と「ノルマ」があります。その期限を半分にします。そうすることで理論上、仕事は絶対達成する。――これが「倍速管理」の基本です。

たとえば今日が火曜日だとして、上司から「来週木曜日までに資料をつくってくれ」と言われたとします。そうすると、多くの人の頭にインプットされる期限のデータは「来週木曜日」であって、火曜日から来週木曜日までの実質的な期間ではありません。

「期限」のデータとして「来週木曜日」しか頭に入らないと、多くの場合は

「来週の木曜日までにやればいい」

という発想になることでしょう。

「来週の木曜日までにやればいい」と考えると、ついついその期限前日の水曜日にその作業をしても間に合うかもしれない。ひょっとしたら当日に始めてもいいかもしれないと思い込んでしまうもの。しかし、仕事は「絶対達成」すべきです。「うまくいったら達成するかもしれない」などという「たら・れば」の発想を捨てるのです。

仕事を先送りするリスクは2つあります。

1つ目のリスクは依頼内容を忘れること。「ヘルマン・エビングハウスの忘却曲線」によると、人間は、20分後には42%、1時間後には56%、1日後には74%、1週間後には77%のことを忘れる、と言われます。つまり時間の経過とともに、上司の指示、自分のやるべきことを忘れてしまうのです。

2つ目のリスクは、時間の経過とともに「面倒だ」という感覚が増幅すること。「本当に自分がやらなくてはならないことなのか?」「本当に必要な資料なのだろうか?」などという思考ノイズが次々に発生し、前述のとおり内容も忘れていく。内容をあまり覚えていないことを、面倒くささが増幅した心理状態で作業するので、時間は長くかかり、仕事のクオリティは著しく低下していきます。

過去、自分がしてきたことは一貫して正当化したくなるものです。これを「一貫性の法則」と呼びます。つまり、依頼された仕事に手をつけず、そのまま放置しておくと、放置しておいた期間を正当化したくなるのです。放置期間が長ければ長いほど、その仕事に対する疑念が湧いてきます。その変化は以下のとおりでしょう。

●火曜日(依頼された日)「すぐ着手して片づけてしまおう」

●金曜日「なんだか面倒くさい。本当に必要な資料なのか?」

●来週月曜日「やる気が起こらない。つくらなくてもいいような気がしてきた」

●来週水曜日(期限前日)「いまさら間に合わない。それに、これはつくらないほうがいい気がする」

このように依頼されてから期限までの8日間(火曜日を含み土日を除く)で徐々に思考ノイズは脳の中で膨張していきます。仕事を放置したため問題が深刻化し、思考が歪められてしまうのです。そして最終的には勝手に「やらない」という最低・最悪の決断をします。

自分から、この状況を報告する人はまずいません。上司が「何をやってたんだ」と尋ねると、「バタバタしていたので時間をとれませんでした」などと言い訳をすることでしょう。さらに、自分ができなかったことを正当化するために、「そもそもこれをやることに意味はあるんですか?」「実は最初から疑問を感じていたんです」などと言うケースもあります。

上司からしてみれば、腹立たしい気持ちになるはずです。「なんで私が聞いた時点でそんなことを言うんだ」と問いただしたくなりますが、部下は「一貫性の法則」が働いているため「そうですね。私が間違ってました」などとは言えないもの。「課長が忙しそうにしていたので、相談できなかったんですよ」などと、ふてくされて言うから、よけいに問題を悪化させることになります。

当然のことながら、依頼者に対し何の相談もなく、勝手に「やらない」という決断をすることなどありえません。これでは、周囲とのラポール(信頼関係)など、絶対構築できないでしょう。

人間は、誰しも完璧ではありません。言い訳の一つくらい、たまにはしたいときもあります。それは、このコラムを読んでいるあなたもそうだろうし、私もそうです。しかし、言い訳が通じるのは、相手とのラポールが構築されているときだけ。そうでないと、本当に言い訳したいときもできなくなり、とても残念な気持ちを抱きながら日々をすごさなくてはならなくなるのです。

過去の正当化が言い訳を生み出し、その言い訳が組み合わさり、化学反応を起こし、架空の物語までつくりあげてしまう。言い訳がモンスター化して「妄想」に変異していくので、言い訳の源泉である「思考ノイズ」をいかになくすか、これがポイントです。

問題が大きくなる前に、先手を打つ。そこで「倍速管理」を使いましょう。

期限を2つ折りにしなければ「期限は来週木曜日だな」と曜日が頭に残るだけです。しかし期限を2つ折りにしようとすると、「期限の半分はいつなのだろう?」と計算しなければなりません。

このプロセスが大事です。「期限まで何日間あるのか」と考えるプロセスです。

今日が火曜日で、来週木曜日が期限なら、期限までには土日を除いて火曜日を含め「8日間」ある。そしてこの「8日間」を半分にするのですから「4日間」です。「倍速管理」の考え方で新たに設定される期限は火曜を含めて4日後。つまり今週金曜日なのです。このように、期限を2つ折りにするだけで、想像以上に脳が働くものです。

期限を2つ折りにしたら、次に「スケールテクニック」を使います。

「スケールテクニック」とは、「その仕事にはどのくらいの時間がかかるのか」を客観的に見積もり、数値化することです。感覚でとらえていた作業時間を見積もる。この習慣を身につけましょう。

たとえば、「会社の戦略マップをつくってほしい」と依頼されたとき、「そんなものはつくったことがない」とあきらめるのではなく、間違ってもいいから「1時間30分でできるかも」「3時間はかかるなァ」という仮説を立てるのです。結果的に7時間かかったとしてもかまいません。

「7時間かかった」と認識できれば、次に何か頼まれたときにその情報を活かして仮説を立てることができるからです。「スケールテクニック」を「あたりまえ化」できれば、行動に対する心理ハードルが低くなります。つまり従来の「感覚」が修正されていくのです。

つまりこのケース――上司からの「来週木曜日までに資料をつくってくれ」依頼については、期限を2つ折りにして期限を今週金曜日までにし、スケールテクニックで「3時間ぐらいかかるかな」と思えば、火曜日の今日から金曜日までの「4日間」のどこかで「3時間」を確保すればいい、ということになります。これだけで、かなり頭が整理されることでしょう。ムダに思考ノイズを膨らませる猶予期間がない分、ストレスを感じる時間も大幅に減ります。

万が一、想定外のことが起きて今週の金曜日に完遂してなくても大丈夫です。期限は2つ折りにしてありますから、まだ来週の木曜日まで「倍」の期間が残っています。この場合、重要なことはもう一度、来週木曜日までの期限を2つ折りにすることです。新たに設定される期限は「来週の火曜日」。この新しい期限までに絶対にやり切ろうと決意を新たにします。それでもできなければ、さらに残った期間を2つ折りにします。この「期限の2つ折り」を繰り返し続けることで、理論上、この仕事は正規の期限「来週の木曜日」までには必ず終わります。絶対達成なのです。(あくまでも理論上の話)

いろいろな作業を並行して行っている時、すべての作業を「倍速管理」で自己マネジメントしていけば、ストレスフリーで仕事をサクサクこなしていくことができるでしょう。ぜひご参考にしてください。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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