またもVWの不正発覚――「リーマンショック」ならぬ「ワーゲンショック」が欧州を襲う
また新たな不正が発覚した――。今年9月に発覚したVWの排出ガス不正問題は、特定年代の「ゴルフ」「ジェッタ」「ビートル」「パサート」等のディーゼル車が対象でした。ところが20日、アメリカ環境保護庁(EPA)は、VW傘下の「ポルシェ」「アウディ」の8.5万台にも違法ソフトが搭載されていたと公表したのです。
問題は深刻です。不正を否定していたVWが一転して認めたため、さらに他の不正も隠ぺいしているのではないか。EPA当局も消費者も、そしてドイツ政府なども、疑心暗鬼の目を向けざるを得なくなったからです。もともとVWは「質実剛健」というブランドイメージを纏っていたがゆえに、このイメージダウンは強烈。
さらなる制裁金や、訴訟問題により、VWの業績悪化は深刻度を極め、その余波がドイツ経済を揺さぶることでしょう。ドイツは欧州の覇権を握り、EU経済をリードする存在。
2008年にアメリカの投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻し、連鎖的に世界金融危機が発生した現象を「リーマンショック」と呼びます。「リーマンショック」は、リーマン・ブラザーズの倒産だけが問題ではありません。サブプライムローンなど、多分野の資産価格の暴落により引き起こされています。ただ、約64兆円と言われる空前絶後の負債額を抱えて倒産したリーマン・ブラザーズが、当金融危機の象徴的存在だとしてこの名前がつけられた背景があります。
VW一社の問題のみで、欧州経済が危機的状態になるわけではないでしょう。しかし中国経済の急減速、シリアからの難民問題、パリ同時多発テロなど、欧州経済にとって負の出来事が続発的に起こっています。これらの事象が有機的に繋がり、欧州経済、さらに世界経済が再び危機的状態に直面しようものなら「リーマンショック」ならぬ「ワーゲンショック」と命名されるかもしれません。傷ついた信頼を取り戻そうとしていた矢先の問題発覚で、VWの失地回復のためにサポートしようとした人たちの顔に泥を塗った格好です。