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新型「ノリが悪い人」のススメ

横山信弘経営コラムニスト
早く帰宅しても誰からも文句を言われない存在になる(写真:アフロ)

年末年始が近付くと「忘年会」「送別会」「壮行会」「新年会」「決起大会」……など、会社員たちはいろいろな行事に駆り出されるものです。会社の行事なら断ることは難しいでしょうが、「半分仕事・半分プライベート」だと判断に迷うケースもあることでしょう。いわゆる「お付き合い」と呼ばれるもの。

たとえば、「7階フロアのメンバーだけで忘年会しない?」という類のイベントには気が進まないという人がいるかもしれません。単に働いているフロアが同じという共通項で集められたらかなわん、この前、会社の忘年会があったばかりじゃないか、もういいだろう、という発想です。まさに「ノリが悪い人」はこういう思考になりやすい。「80年入社の同期だけで飲み会をしよう。Kさんが海外転勤になったから」というケースも「ノリが悪い人」には厳しい。Kさんとそれほど親密でないなら、その飲み会に参加しても苦痛なだけです。

「二次会」「三次会」という類も、「ノリが悪い人」には大変な苦痛です。「忘年会」などの会社の行事とはいえ、「二次会」参加まで義務化しているケースはないはずです。しかし「一次会」で帰りたいと意思表示しても、

「おいおい二次会に参加しろよォ! ノリが悪いぞー!」

と絡まれるのがオチです。事前に断ってあるならともかく、「一次会」終了時点で、すでに酔いが回っている同僚や上司に、反対の意思表示をすること自体、火に油を注ぐようなもの。

「なんでいつも二次会に行かないんだよ、お前はァ! 俺が勧める酒が飲めないとでも言うのか! ああっ?」

「ノリが悪い人」にとって、このような言われ方をすると、よけいにゲンナリしてきます。「なんで俺が責められないといけないわけ?」「なんか私が悪いことでもした?」と心の中でつぶやくことになります。

しかし、いっぽうで、このような昔ながらの「ノリの良さ」は時代の流れと逆行する姿勢でもあります。いわゆる「ワークライフバランス」です。長時間労働を是正し、仕事と生活とを正しく調和できるような、健全な働き方が求められるのが現代流。

この流れに超逆行するのが、長時間残業の末に飲み会に引きずり込まれるパターン。夜10時ぐらいまで残業したあと、「疲れたな。メシでも食いにいく?」「こんな時間ですか。せっかくなので一杯いきますか」「そうだな、こんな時間だし」と、正しい論拠もへったくれもないような、ただの「ノリ」で飲みに行き、帰宅するのは夜の12時とか1時過ぎ。もちろん終電もなくなっている時間帯ですから、帰宅手段はもっぱらタクシー。

奥さんに責められても、「しょうがないだろう。会社の付き合いなんだから。お前にはわからないんだよ、サラリーマンの仕事がどういうものなのかを」と、どこかのテレビドラマに出てくるような典型的ダメサラリーマン風なセリフを何度も吐いていると、愛想つかされるのは時間の問題。「ごめんなさい。あなたが会社でどれだけ苦労しているのかわかりもしないで、文句なんか言って」などとすんなり引き下がるような奥方は、古き良き時代の映画の中にか存在しません。

私個人も、公の行事ならともかく、そうでないお誘いにはとてもノリが悪く、今ではそのような類のイベントに誘われることは皆無です。部下から「昨日、あれから二次会でカラオケに行ったのですが、ものすごく盛り上がりましたよ」「今度の週末に、他の部署の人たちと登山にいく予定なんです」と普通に報告をされるだけ。私が参加する予定がなくても気を遣われることはありません。「あの後、二次会にも来たらよかったじゃないですか」「横山さんも一緒に登山へ行きませんか?」などとは絶対に提案されません。

「この人は絶対に行かない。そういう人だから」

というレッテルを自ら貼っているからです。たまに「参加してみたいな」「今日は行ってもいいかも」と思っても実行しません。一度例外を作ると「レッテル」を貼られることがなくなるからです。こうすることで、なぜ行かないのか、どうして参加しないのかも、イチイチ説明する必要がなくなっていきます。「行かない」「俺はいい」だけで話が通るようになるのです。

しかし、ただ単に「ノリが悪いだけ」だと、組織の中で孤立していく可能性もあります。ですから、

ノリが悪くても許される存在

――になることが大切です。これが私が提案する「新型ノリが悪い人」。ワークライフバランス一辺倒の今の時代には、このようなニュータイプが必要なのだと思います。たとえばサッカー日本代表のエース本田圭佑選手を想像してみます。他の選手たちが「今日は飲み会でぱーっと行こう!」とはしゃいでいても、本田選手から「俺は帰る」と言われたらどうでしょう。一気に場の空気は盛り下がるでしょうか。おそらくそんなことはないだろうな、と私は想像します。「あ、やっぱり?」と言われるだけで、「じゃあ、行けるヤツだけで行こうぜ!」となるはずです。「おいおい、本田ァ! お前が行かないことには、はじまんないだろうォ?」などと絡まれることはないでしょう。ノリが悪くても許される存在だからです。

「ノリが悪い」という表現だと、ネガティブな感じに受け止められがちですが「孤高」という表現に変換すると、幾分カッコよくなります。「俺はつるまない性格なんだ。ごめん」と言って、絵になるような人物になればよいわけです。当然、ノリが悪くても許される存在になるには、本業で圧倒的な結果を出さなければなりません。誰もが一目を置く、誰もがリスペクトする、多少のワガママを言われても誰も反論できない、と思わせるような実績を上げることです。

結果も出さず、ノリも悪い。――これでは、単なる「厄介者」扱いされてしまうので、どうしても会社の「付き合い」は苦手なんだ。もっと家庭を大事にしたい、邪魔されずに趣味の時間を確保したいんだ、という人は、新型ノリが悪い人を目指しましょう。

「アイツを誘っても、絶対に来ないよ。アイツは、そういう奴だから」

と、同僚や先輩に遠い目で見られるような、それほどまでの結果を出すのです。政府の政策で、日本企業の長時間労働を是正してほしい、経営者が意識改革しないと日本の会社は変わらない、などと「他人任せ」にしないで、ノリが悪くても許される存在になり、自分らしいワークライフバランスを実現させましょう。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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