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軽減税率のグレーゾーン コンビニの「イートインコーナー」が外食産業を窮地に追いやる?

横山信弘経営コラムニスト
お持ち帰りですか? イートインですか? とイチイチ聞くのか?(写真:アフロ)

軽減税率の問題は多岐に渡ります。低所得者の税負担を軽くすることが目的であったはずなのに、結局は高所得者のほうがメリットが大きかったり。スーパーやコンビニなどの事業者は、「卵の消費税は8%で、ティッシュの消費税は10%」といったように、それぞれ区分けして販売し、納税しなければならなくなります。私は経営コンサルタントですから、ことさら事業者側の負担について懸念を持ちます。

それはさておき、線引きが難しいのが「イートインコーナー」。スーパーやコンビニの中で食事をすることのできるちょっとしたスペースを「イートインコーナー」と呼ぶわけですが、店内で買ったものをそこで食べたら『外食』とみなされるのか? 外食であれば消費税は10%になります。

お惣菜を買うお客様に、レジ係が、

「イートインコーナーで食べるのでしたら消費税が10%になります。お持ち帰りですか? イートインですか?」

といちいち質問するのでしょうか? おそらくそのような現場オペレーションは非現実的であるし、そのオペレーションを監査するのはもっと非現実的。イートインコーナーで食べても一律8%の適用になるに決まっています。

コンビニ大手のファミリーマートは、王者セブンイレブンを追い上げるため「中食」を強化すると公表しています。過去に閉鎖した店舗をお弁当や総菜を作るミニ工場にし、「できたて弁当」をコンビニに配送するというプランです。最近チルド弁当の品質は高くなり、パスタもラーメンもこれで十分。コンビニで買って事務所の電子レンジで「チン」して食べるオフィスワーカーは急増しています。外食産業にとっては脅威そのものです。

ところが先述したファミリーマートは、チルド弁当のみならず、できたて直送便の弁当まで店に並べるという。できたてであればチルドより美味しいに決まっているし、それをイートインコーナーで同僚と一緒に食べれば、外食店での楽しい食事と大差なくなっていきます。

店外に喫煙コーナーのような立ち食い用の「イートアウトコーナー」が設置されれば、さらに利用者は増えることでしょう。店内はスペースが限られていますが、店外はそうでもありません。外回りをしている営業がコンビニに寄り、ラーメンや牛丼を買って店内の電子レンジで「チン」。店の外に持ち出し「イートアウトコーナー」でそのラーメンを立ったまま食べてゴミ箱に捨てれば、とてもリーズナブル。税負担も軽い。

「安さ」「手軽さ」を売り文句にしている外食業界にとっては、軽減税率によって新たな脅威との闘いを強いられます。特に、牛丼やハンバーガー、ラーメンなどのファストフード系チェーン店は頭の痛い問題です。業績低迷が続く日本マクドナルドは、月に30~40店ピッチで閉店させていくと発表したばかりで、さらなる苦境に立たされる可能性さえあります。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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