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現代は「スマホ」よりも「紙の手帳」でタスク管理したほうが効率アップする意外な理由

横山信弘経営コラムニスト
画面が狭すぎるという意外な盲点(写真:アフロ)

「思考が眠っている人」とは?

「やるべきこと」が目の前にあるのに、それをじっと眺めるだけで、いっこうにやらない人がいます。自分がやるべきだ、やるべきなのは今だ、とわかってはいるものの、なかなか体が動かない。私はこういう人を「思考が眠っている人」と呼びます。「グズ」とか「ノロマ」という表現が嫌いだからです。そういうときは、誰にでもありますし。

やるべきことを、自分が運ぶべき「荷物」と捉えるとわかりやすくなります。

高度情報化時代となって大きく変わったのは、ひとりが任される「荷物」が一昔前に比べ、明らかに増えていることです。自分の意思とは関係なく、なぜか、周囲に「荷物」が無秩序に散らばっているのです。散らばっているだけならともかく、知らぬ間にどんどんと増え続けることもあります。こういったことが、気分を重くする主因と言っていいでしょう。どの「荷物」をどこへ運んだらいいのか、考えているうちから「荷物」が増えていってしまうのです。かなり頭の回転を速くしないと、追いつきません。

放っておいても、「荷物」が増えていってしまう現代。それらの荷物を目的地に運ばず、そのまま先送りしたらどうなるでしょうか? 気分が乗らないから「今はやらない」「後回しにしよう」と言って、先送りすると、一瞬、ストレスから解放されます。しかし、それはその瞬間だけ。

「思考が眠っている人」は、目の前に散らかっている「荷物」が見えません。しかし、ひとたび目を開けると、膨大に積み上げられた「荷物」の存在に圧倒され、呆然とするしかないでしょう。ですから、素早く、目の前にあるすべての「荷物」を正しく見えるようにすることは、とても大切です。

片付けの王道

小物やメモ、名刺、文房具などがゴチャゴチャと散らばっている引き出しの中を整理する場合、まずはすべての物を外に出し、物の形、種類だけでなく、「要るものなのか、要らないものなのか?」「良く使うものなのか、あまり使わないものなのか?」などといった視点でいったんグルーピングします。そして、捨てるなら捨てる、まとめるならまとめる等と決め、整理し、引き出しに戻すと効率よく片付けることができます。

作業効率をアップするケースでも同じです。ひとつひとつの作業を吟味していると、いくら時間があっても足りません。前述したとおり、現代は、ひとりに任された「荷物」の絶対量が多いし、ぼやぼやしていると増え続けるからです。

片付けのやり方と同じ。いったん自分自身が「やるべきこと」を全部、目の前に広げることが重要です。「自分がやることなのか、他の誰かがやるべきことなのか?」「今やるべきことなのか、今やらなくてもよいのか?」「ひとりでやることなのか、誰かと相談しながらやるのか?」「オフィスでできることなのか、移動中でもできることなのか?」……などと、いろいろな視点でグルーピングします。

作業の「世界地図」を作り、その世界の支配者になる

タスク管理をスマホでやったほうがいいのか、紙の手帳でやったほうがいいのか、が今回のテーマです。

この観点からすると、私は紙のメモ帳をお勧めします。理由は、スマホの画面が狭いから、ただその一点のみです。スマホに記されたメモは、ディスプレイのサイズ以上に表示されません。それ以上のメモを目にするためにはスクロールしなければならないのです。ディスプレイから消えてしまった文字は見えなくなるため、脳のワーキングメモリー(短期記憶)に蓄えておかないと、新たにディスプレイに表示されたデータとの突合せができません。

その点、紙のメモ帳を使って、ひとつひとつの「荷物」を書き出し、机の上にすべてを並べれば、地図を上から見ているような状態になります。全ての「荷物」をストレスなく自分の視野におさめることができるのです。まずは、荷物の「世界地図」を作って、すべてを支配したかのような気持ちで眺めると、「思考が眠っている人」から卒業し、正しく目を覚ますことができるでしょう。

メモを並べて、タスクの世界地図を作る
メモを並べて、タスクの世界地図を作る

私は「ロディアNo.11」という手のひらサイズのメモ帳を使っています。ロディアにメモをした内容は後で切り取り、メモの種類によってカテゴライズし、保管します。そして定期的にまとまったメモを視界におさまる範囲で並べ、それを見ながらメモ同士をグルーピングし、頭の中を整理します。

情報をデジタル化することで、便利になることは多いでしょう。しかしデジタル機器の出力画面には限界があることを忘れてはいけません。特に私のように忘れっぽい人、ワーキングメモリーが少ないのではと感じる人は、視界から消えた瞬間に思い出せず、データとデータとの突合せができなくなります。目の前にあるはずの「荷物――やるべきこと」が消えてなくなるのです。

また、スマホのプッシュ機能(通知機能)を使って、タスク管理をしていると、タスク処理を常に受け身でやることになります。脳の前頭葉という箇所が鍛えられず、ストレス耐性が落ちていきます。スマホに通知されたことはやるが、それ以外のことはやらない、という習慣がつくと、その作業をやる目的は何か? 目的を果たすうえで何か抜け漏れはないのか? などと「主体的」に物事を考えることができなくなっていきます。過干渉の親や上司を持つと、主体性のない子ども、自主性を発揮できない部下になっていくのと同じです。そういう観点からも、紙のメモ帳でタスク処理をすることを私はお勧めします。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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