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「プレミアムフライデー」に賛成するが、長時間労働が必要な若者は対象外としてほしい

横山信弘経営コラムニスト
一人前になるには、その物事に費やす最低限の時間が必要である(写真:アフロ)

おおいに結構! プレミアムフライデー

先日、月末の金曜日を「プレミアムフライデー」と命名し、退社時間を午後3時にする構想が浮上しているという報道がありました。月末の金曜日にはやく退社できれば、多くの人が買い物や旅行に行きやすくなり、個人消費を喚起できるだろうという発想からきています。

現場で不公平感が出るかもしれませんが、経済全体を考えればプラスに働く気がするため私は賛成です。「プレミアムフライデー」が企業に浸透すれば、早く帰ることができる人は早く退社できます。早く退社できない人は、そのままオフィスに居続ければよい。ただそれだけの話ですから、積極的に反対する理由が見つかりません。

しかし、若者は「プレミアムフライデー」の対象外にしたほうがよいと私は考えます。たとえ「プレミアムフライデー」の日であっても、せめて夕方の5時半とか、夕方6時まではオフィスに留まるべきだと。

そもそも、夕方を楽しく活かす働き方「ゆう活」や、「プレミアムフライデー」をうまく活用し、職場を早く退社できる人は、

「定時まで職場にいなければいけないから、定時までいる人」

です。

こういう方々は、無理して職場に残ってもらわなくてもいいのです。ぜひ早く退社していただき、そのまま家に帰ることなく、繁華街や観光地へ繰り出してもらいたい。そして個人の蓄財を消費にまわすべきです。

いっぽう、朝9時から夕方6時まで働かないと終わらないような仕事をしている人は、「3時になったから帰りたまえ」と言われても退社できません。しかも月末の金曜日です。「帰っていいんだったら帰りますけど、本当にいいんですか?」と嫌味のひとつも言いたくなるはずでしょう。「プレミアムフライデー」だからといって関係がない。仕事がある人は、仕事が終わるまで帰ることができないのは常識です。

付加価値の高い仕事をするには、若いときに長時間労働をしているもの

また、作業ベースではなく、成果ベースで働いている人も、早めに退社できるかもしれません。たとえば雑誌の編集作業をする人が、今月のノルマをすでに達成させているというのであれば、「今日は3時に帰りますね」と堂々と言っても誰も文句はないでしょう。ただし条件があります。その仕事に熟達していること。これが条件です。たとえ今月のノルマを達成していても、まだ未熟な若者であれば、時間が来たから終わりではなく、先輩の仕事を手伝うなどして、早く退社しないほうがいいでしょう。

まだ未熟な時代に長時間働いておけば、熟練の仕事ができるようになり、いずれ短時間で成果を出せるようになっていきます。付加価値の高い仕事をし、成果が出はじめたら「ゆう活」だろうが「プレミアムフライデー」だろうが、うまく活用して早期に仕事を切り上げてしまえばいいのです。

ちまたでは「長時間労働=悪」の構図が定着していますが、それは”規定された労働時間を超える長時間労働”が悪であるだけの話です。仕事を覚えたり、付加価値の高い仕事をこなせるようになったり、いわゆるその仕事で一人前になるには、それなりの長い時間がどうしても必要です。どんなに高度情報化時代となっても、技能を習得するのにショートカットはできません。

その仕事を熟達するのに必要な時間が「1,000時間」とするなら、この「1,000時間」をどのように日々分配していくかを私たちは考えなければなりません。残業や休日出勤を常態化させないためにも、日々の定時時間内に効率よく分配していく考えが現代には求められています。仕事の熟達に関係ないようなメールの処理や、会議やミーティングの出席もできる限り減らし、付加価値の高い仕事にのみ、労働時間という限られたリソースを投入すべきでしょう。

まだ経験の浅い若者たちに、ちまたでいわれる「長時間労働」を強いるのはいけません。しかし、必要とされる仕事の「長時間従事」「長時間訓練」は不可欠なのです。もしも長時間従事しなくても、すぐにこなせるような仕事を若者がしているとしたら、遠くない将来、AI(人工知能)やロボットにその仕事は奪われることでしょう。

したがって「プレミアムフライデー」が定着したとしても、若者たちはその恩恵を受けることなく夕方ぐらいまでは働けばいいと私は考えます。月末の金曜日に、若者たちがどれほどの個人消費をするかを考えれば、経済全般に及ぼす影響など、たかが知れているのですから。

(※当然のことながら、長時間関与すれば何事も熟達するのではなく、熟達するには長時間従事することが必要であるというのが論点です)

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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